日本経団連タイムス No.2990 (2010年3月25日)

アジア・ビジネス・サミット開催

−共同声明を鳩山首相に手渡す/アジア内需の拡大や官民連携での省エネ推進など


鳩山首相に共同声明を手渡す御手洗会長
アジア・ビジネス・サミットであいさつする御手洗会長

日本経団連(御手洗冨士夫会長)は15日、東京・大手町の経団連会館で、アジア・ビジネス・サミットを開催した。サミットには、アジア11の国・地域(注)から13の経済団体のトップが一堂に会し、地域の共通課題をめぐり円卓方式による意見交換を行った。当日は、アジア重視を掲げている現政権から、岡田克也外務大臣、直嶋正行経済産業大臣が出席したほか、レセプションには鳩山由紀夫総理大臣が出席し、御手洗会長が、共同声明を直接手交した。
アジア・ビジネス・サミットの開催経緯と当日の模様は次のとおりである。

日本経団連では御手洗会長のもと、これまで一貫してアジアを重視した民間外交を展開してきた。2009年秋には域内経済統合と広域インフラ整備の推進を柱とするアジア成長戦略を取りまとめ、二度にわたってASEANミッションを派遣するなど、積極的に関係各国との政策対話を行ってきた。アジア・ビジネス・サミットは、これら活動の総決算であり、日本経団連の成長戦略実現のためアジア経済界が果たすべき役割や協力策を話し合うため、開催を呼びかけたものである。

同サミットでは、世界経済が持続的に成長するためには、潜在的成長力を有するアジアが先頭に立ち、世界を牽引することが不可欠であるとの認識に基づき、(1)厳しい世界経済状況への対応(2)地域経済統合による貿易投資の推進(3)ビジネス環境整備(4)広域インフラ開発の推進(5)地域通貨金融協力(6)環境エネルギー問題への対応――をめぐり意見交換を行った。

その結果、次の点で共通認識を形成し、共同声明を採択した。

  1. 1.アジアが成長エンジンとして世界経済を牽引するためには、台頭する中間所得層の消費を喚起し、アジア内需を拡大することが何より重要である。そのためには、貿易投資の推進や、各種規制の撤廃・緩和に向けて取り組みを強化するとともに、保護主義的な措置に断固反対する。

  2. 2.アジア経済の成長のボトルネックを解消するためには、ソフト・ハード両面におけるインフラを整備し、企業がシームレスにビジネスを展開できる環境づくりをすることが不可欠である。ソフト面については、法制度、知的財産権保護の枠組み等の整備のほか、イノベーション・研究開発に携わる人材の育成等に、経済界として積極的に貢献していく。また、ハード面では、都市インフラや広域インフラを整備する必要があり、その際は公的資金のみならず多額の民間資金が必要となるため、資金調達メカニズムの構築に向けて、アジア経済界が協力して研究を進める。

  3. 3.アジアが連携して、エネルギー安全保障や地球温暖化等のグローバルな課題に取り組む。とりわけ、省エネの推進は、低炭素社会の実現のみならず、エネルギー安全保障体制の強化につながるため、官民連携で取り組むことが急務である。

◇◇◇

サミット終了後、鳩山総理大臣に御手洗会長から共同声明を手交し、政府として取り組みを推進するよう要望した。鳩山総理大臣は、「アジア・ビジネス・サミットの開催目的や結論は、現政権が標榜する『東アジア共同体構想』と方向性が一致している」としたうえで、「共同声明の内容を日本が議長を務める今年のAPECやG8先進国首脳会議における議論に反映させたい」と述べ、アジア・ビジネス・サミットが成功裏に終わったことに対し、祝意を示した。

なお、日本経団連では、共同声明にうたわれた事項の実現に向け、アジア経済界との連携をさらに強化していくこととしている。

<注> 中国、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、ベトナム、日本
【国際協力本部】
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