日本経団連タイムス No.2994 (2010年4月22日)

「国家戦略としての宇宙開発利用の推進に向けた提言」公表

−政府の「新成長戦略」を視野に産業界の考えを取りまとめる


日本経団連は12日、「国家戦略としての宇宙開発利用の推進に向けた提言」を発表した。同提言は、6月に政府が策定する「新成長戦略」などに向けて、産業界の考えを取りまとめたものである。概要は次のとおり。

■ 国民の身近になった宇宙開発利用と宇宙外交の推進

宇宙開発利用は国民にとって身近なものになった。例えば、衛星による気象観測や通信・放送は国民生活に浸透している。また、宇宙科学によるフロンティアへの挑戦は科学・技術を牽引する。自律的な宇宙システムの構築は安全保障に貢献する。
一方、宇宙外交を推進する必要がある。衛星データや宇宙システムを利用した社会インフラを海外に提供できるほか、国際宇宙ステーションの運用・利用を通じて国際協力を進めることができる。

■ 新たな宇宙市場を開拓する成長戦略

成長戦略として、(1)宇宙機器の国産化の促進(2)長期的かつ安定的な政府調達の確立(3)実用衛星の国際公開調達を規定した1990年の日米衛星調達の廃止(4)PPP(Public Private Partnership)の積極的な活用――が求められる。
また、内外の宇宙利用の拡大や市場の開拓のため、(1)戦略的な技術開発や軌道実証の推進(2)ODAを活用し官民連携による、アジア諸国などへの宇宙システム・サービスの提供――が重要である。

■ 今後の展開

10年後には、わが国の衛星やロケット等が国際市場において受注を拡大し、海外でも日本の宇宙システムによるサービスが活用される姿を描いている。これを目指し、宇宙基本計画に盛り込まれたプログラムのなかで、特に実施を求めるものを当面4年程度の取り組みとして挙げた(図表参照)。

今後の展開
分野10年程度の将来の姿当面4年程度の取り組み
観測被災状況の詳細な把握
スペースデブリ監視システムの実現
陸域観測衛星の開発
小型光学・レーダー実証衛星の開発
通信・放送スーパーハイビジョン放送や
高速ダウンロードサービスの低価格化
地上・衛星共用携帯電話システムの
研究開発、技術試験衛星の利用実証
測位自律した衛星測位システムの実現準天頂衛星初号機の利用実証、
2号機と3号機の開発
安全保障高頻度の監視体制の確立
情報収集・監視能力の向上
情報収集衛星の4機体制の構築
早期警戒センサーの研究開発
宇宙科学
月惑星探査
X線観測や探査における世界最先端の
成果の継続的創出
X線天文衛星、水星探査機の開発
小型科学衛星のシリーズ化
有人宇宙活動宇宙環境利用による医学の発展
軌道間輸送機の実現
「きぼう」の利用促進、宇宙ステーション補給機の
安定的打ち上げ、回収システムの研究開発
(提言より一部抜粋)

■ 推進体制の強化

宇宙基本法により設置された宇宙開発戦略本部がリーダーシップを発揮し、各省庁の総合調整、予算の調整・管理を行うことが求められる。また、同本部事務局の内閣官房から内閣府への移管や、宇宙庁構想も含めた検討も必要である。
さらに、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の見直しとして、本部事務局の移管に伴う内閣府の積極的な関与、利用省庁による共管が求められる。

【産業技術本部】
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