日本経団連タイムス No.2995 (2010年4月29日)

海洋立国への成長基盤構築に向け提言

−政府の新成長戦略視野に、産業界の考えを取りまとめ


日本経団連は20日、「海洋立国への成長基盤の構築に向けた提言」を発表した。同提言は、6月に政府が策定する「新成長戦略」などに向けて、産業界の考えを取りまとめたもの。
提言の概要は次のとおり。

わが国の国土面積は世界第61位の約38万平方キロメートルであるが、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積は世界第6位の447万平方キロメートルと広大である。現在、国連で審査中の大陸棚の延長申請が認められれば、最大で国土面積の約2倍に及ぶ74万平方キロメートルの大陸棚が確保でき、経済社会の新たな成長基盤となる。

■ 海洋開発利用をめぐる環境変化

海洋開発利用をめぐる環境変化としては、次の3つが挙げられる。
第1は資源獲得競争の激化である。中国やインドなど新興国の発展や世界の人口増加により、陸上資源の不足・枯渇が危惧される。
第2は安全保障環境の変化である。日本近海における外国の不審船の出没に加え、アデン湾・ソマリア沖においては海賊によるハイジャック事件が多発している。
第3は地球規模の環境問題の深刻化である。異常気象や海面上昇などによる被害が収まっていない。

■ 重要課題の解決に向けた海洋開発利用

海洋開発利用は投資コストとリスクが大きく、政府は、産学官連携による自主技術の開発と実証や、適正予算の投入による海洋産業の振興に取り組むべきである。また、海洋産業の規模は16.5兆円、従業者は101.5万人であり、活動領域の拡大等は雇用の拡大につながる。
そこで、次の重要課題に対応すべきである。第1は海洋資源など国家権益の確保である。EEZや大陸棚の管理・保全に向けて、国会で審議中の特定離島(沖ノ鳥島、南鳥島)の整備に関する法案の早期成立が求められる。離島や海域の管理・保全のため、洋上プラットフォームの構築も有効である。これに加え、メタンハイドレートや石油・天然ガス等の調査、資源探査船の開発が求められる。
第2は安全・安心の確保である。海上輸送については、海賊対処法に基づく自衛隊の護衛活動の強化が重要である。また、防災・減災のため、地球深部探査船「ちきゅう」による観測・探査を行うべきである。
第3は低炭素社会への貢献である。再生可能エネルギーとして、洋上風力発電等の技術開発と実証実験を推進する必要がある。

■ 総合的な推進体制の確立

政府の総合海洋政策本部には、海洋基本計画を推進するとともに、海洋関係予算の一括管理や関係省庁の連携強化などに向け、リーダーシップの発揮が求められる。
また、人材育成の観点から、子どもへの海洋教育の充実が不可欠である。さらに、大学における専門教育を強化し、研究者や技術者を育成すべきである。

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今月7日には、産学官の有識者で構成される「海洋基本法フォローアップ研究会」において、元山登雄海洋開発推進委員長が提言の考え方を説明した。また、同23日には、元山委員長と山脇康同委員会総合部会長が前原誠司海洋政策担当大臣に提言を建議した。今後も日本経団連は、関係方面に提言の実現を働きかける予定である。

【産業技術本部】
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