日本経団連タイムス No.3001 (2010年6月17日)

提言「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して」公表

−持続的成長を実現するための地域経済統合への道筋示す


日本経団連(米倉弘昌会長)は15日、「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して−2010年APEC議長国 日本の責任」を公表した。
提言の概要は次のとおり。

■ アジア太平洋地域の現状

世界のGDP、貿易額の約5割、人口の約4割を占める一大経済圏であるAPEC(アジア太平洋経済協力)参加国・地域の持続的成長は、わが国経済と世界経済が金融・経済危機から脱却し、持続的成長を遂げるうえで不可欠である。また同地域は、経済水準・経済規模の点で多様性に富み、貿易面の相互補完性が高い。同地域の重要性が高まり、協力促進への期待が増すなか、昨年発足20年を迎えたAPECには、次の20年を見据えた活動の将来ビジョンが求められている。

■ わが国企業にとってのアジア太平洋地域

わが国企業のグローバル・サプライチェーンが、アジアにとどまることなく欧米まで伸びていることに鑑み、とりわけ、世界一の経済大国の米国を含めたコネクティビティー確保が極めて重要である。にもかかわらず、わが国のFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)のネットワークは基本的にはアジアにとどまっており、米国を含めた枠組みづくりは進んでいない。その一方で米国は、環太平洋経済連携協定(TPP)をアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現のための重要な布石と位置付け、今年から交渉に参加している。

■ 持続的成長を実現するための戦略−2010年FTAAP構築の道筋

多様性、相互補完性といった地域の強みなどを活かした経済統合の推進を、この地域の持続的成長を実現するための戦略の中核に位置付けるべきである。
第一に、ASEAN自由貿易地域(AFTA)の完成時期である2015年をめどに地域経済統合の核を完成することによって、FTAAPのような広域経済統合につなげていく必要がある。
具体的には、日中韓FTAを遅くとも2015年までに妥結するとともに、日韓EPA交渉をできる限り早期に妥結することによって、ASEAN+3の完成を視野に入れる必要がある。また、日印、日豪EPAの妥結により、ASEAN+6への道筋をつけ、2015年までに完成すべきである。さらに、米国との橋渡しとなる経済連携の枠組みとして、日米EPA締結のほか、わが国としてTPP(環太平洋経済連携協定)に参加し、FTAAPの実現に向け、ASEAN+3、ASEAN+6と並ぶ経済統合の一つの大きな核を形成すべきである。
第二に、経済活動の広範な分野において高水準の自由化を目指す枠組みづくりに貢献すべく、わが国としても、国境措置、国内措置を問わず、聖域を設けることなく、制度・ルールを大胆に見直す必要がある。

■ 地域経済統合の実現に向けた協力

地域経済統合の実現に向け、ヒト(査証取得・更新手続き等出入国の簡素化・迅速化など)、モノ(関税・非関税措置の撤廃など)、資本(投資保護・自由化・円滑化など)、サービス(規制の現状維持・緩和、透明性確保、恣意性の排除など)、知識・情報(ネットワークを通じたICTサービスのルール整備など)等の分野における協力を進めるべきである。

■ 協力の場としてのAPEC

地域経済統合を中核とする成長戦略を推進する場としては、20年の実績を有するAPECが最も適当である。その際、地域経済統合の推進という観点から活動全体をとらえ直し、より一体的・戦略的に取り組む必要がある。また、制度・ルールの調和を軸とする経済統合の推進に加え、その非拘束性を活かして、多国間での合意が困難な課題の解決に貢献することも期待される。さらに、組織の拡充・参加国の拡大なども必要である。

【国際経済本部】
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