日本経団連タイムス No.3003 (2010年7月1日)

G20ビジネス・サミットに参加

−持続的成長へ財政の健全化、金融部門の改革、貿易・投資などで意見交換
/カナダ経営者評議会主催


トロントで開かれたG20ビジネス・サミット

G20トロント・サミットを直後に控えた6月25、26の両日、カナダ経営者評議会はG20ビジネス・サミットをトロントで開催した。G20各国経済界から2名の代表が参加、わが国からは、米倉弘昌日本経団連会長、奥正之全国銀行協会会長が出席した。なお、終了後、G20サミットに臨む直前の菅直人総理とビジネス・サミットでの議論などをめぐり懇談した。ビジネス・サミットの概要は次のとおり。

■ 第1セッション「景気後退と回復」

まず、来賓のグリアOECD事務総長は、世界経済の回復が進んでいるが、国・地域によってその速度は異なるとしたうえで、若年層の高失業率、各国の財政状況の悪化などの懸念材料を指摘した。特に財政の健全化については、成長への配慮が必要であるとして、成長を促し、歳出を効率化するための予算の組み換えを行うべきとした。また、歳出の削減でも足りず、追加的な歳入が必要な場合であっても景気へのマイナスの影響が少ない消費税等の増税が望ましいとの処方箋を示した。また、低成長下で失業率が高く、財政出動もかなわない状況下で多くの国において選挙が予定されているなか、保護主義への警戒が引き続き必要とした。さらに、WTOドーハラウンドの妥結の必要性を説いた。

欧州を中心に各国経済界の代表からも財政健全化の必要性に言及が相次いだ。その際、成長に配慮することに加えて、国民の理解を得るために経済界も説明に努めることが重要との指摘もあった。民間の役割としては、アフリカ等に存在するビジネス機会を逃さずに投資を行うことが、世界経済のバランスの取れた成長に不可欠との指摘が聞かれる一方、経営判断を下すにあたって金融規制の動向などに関する不確実性が払拭されることが不可欠との指摘もあった。

■ 第2セッション「金融市場のリスクと規制」

過剰なリスクテイキングが危機を招いたとの反省から、より実効的かつ賢明な規制・監督が必要との指摘が多くの参加者からあった。規制のあり方については各国の状況の違いを勘案する必要がある点、また、銀行課税については市場の機能を歪めるなど問題が多いという点でほぼ意見の一致を見た。他方、バーゼル規制改正については、まずはバーゼル2導入の徹底を求める意見がある一方、バーゼル3の実施については時間をかけて慎重に行うべき、あるいはその設計に際しては、金融取引の裏にあるビジネスフローに配慮すべきなどとの意見があった。さらに、金融規制枠組みの構築にあたって、中小企業による資金調達への影響にも配慮すべきとの指摘があった。

■ 第3セッション「持続的成長の推進力」

冒頭、来賓のラミーWTO事務局長は、開かれた貿易・投資が持続的成長の推進力の一つとして不可欠としたうえで、途上国に対する低利の貿易金融を確保する必要性を指摘するとともに、WTOを中心とする多角的なルールが保護主義の防圧に有効に機能してきた点を強調する一方、引き続き警戒が必要であるとした。ドーハラウンドについては、必要な作業のうち8割は終えたが、残る2割に関する行き詰まりを打開するには、経済界からの強力な後押しが不可欠であると強調するとともに、11月のG20ソウル・サミットまでには「ラスト1周の鐘を鳴らしたい」とした。新興国の代表からは、今次ラウンドが「開発」のためのものであることを忘れてはならないとの発言があった。また、一括受諾方式の下では認められていない、貿易円滑化など交渉テーマごとの合意の必要性に言及する発言もあった。そのほか持続的成長の推進力として、イノベーション、教育、起業家精神、知的財産権保護の必要性も強調された。

これらのセッションの後に行われたG20財務大臣との意見交換では、議長を務めたマンレー・カナダ経営者評議会理事長からセッションの模様について報告するとともに、経済界代表が個々の意見を表明した。さらに、G20で議長を務めるカナダのハーパー首相とも対話を行った。

【国際経済本部】
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