日本経団連タイムス No.3005 (2010年7月15日)

ロシア、ウクライナの経済情勢など聞く

−日本ロシア経済委員会・日本NIS経済委員会総会


日本経団連は5日、都内で日本ロシア経済委員会・日本NIS経済委員会(岡素之委員長)の2010年度総会を開催し、来賓のクリニチ駐日ウクライナ大使とオヴェチコ駐日ロシア連邦公使からそれぞれ、両国の最新の経済情勢と対日経済関係への期待などについて説明を聞いた。クリニチ大使およびオヴェチコ公使の説明概要は次のとおり。

■ 新政権の下で外国投資誘致を目指すウクライナ

ヤヌコーヴィチ大統領は、経済指標の改善、社会福祉の充実による国民生活の向上、ビジネス環境整備による外国投資誘致、インフラと経済の近代化を優先課題とし、投資特区の設置、官民パートナーシップ制度の活用などに取り組んでいる。

今年第1四半期のGDP成長率は4.8%、外国投資受入額は同期末で累計400億ドルとなり、経済情勢は改善、安定してきた。財政赤字削減などを条件に、IMFと融資再開で合意し、2年半で総額149億ドルが供与される見込みである。

また、対ロ関係の改善により、ロシア産天然ガスの供給条件は緩和された。無論、EUや米国との対話を継続し、西側諸国との関係構築にも前向きに取り組んでいる。こうしたバランス外交は、例えば国債格付けの引き上げなどをもたらした。アジア太平洋諸国は重要なパートナーであり、特に日本の資金力や技術力を活用した省エネ、穀物輸出、輸送インフラ分野での協力に期待しており、早期に日本と投資保護協定を締結したい。

■ 経済近代化に積極的なロシア

今年の上半期のGDP成長率は5.2%となった。政府債務残高は対GDP比10%とG20諸国中で最低である。外貨準備高も4600億ドルに回復し、インフレ率も6%と安定している。緊縮財政政策と相まって、ロシアは世界的な金融経済危機から順調に回復している。

今後ロシアは、「イノベーションの推進と近代化」による、経済発展を目指す。その実現のため大規模投資が不可欠である。政府は配当金への免税措置導入など投資環境整備にも鋭意取り組んでおり、今年第1四半期の外国投資受入額は131億ドルに達した。経済近代化は上意下達では実現できず、民間活力で推進される。政府は国際競争力のある健全な投資環境整備と投資保護政策を推進するために、WTOとOECDへの加盟に向けた努力を継続していく。

ロシアの経済近代化プロジェクトへの日本企業の参加は重要である。従来の資源エネルギー開発に加え、APEC関連の極東シベリア開発、輸送インフラ、穀物輸出などの各種施設の新設・更新、化学、自動車・機械(部品を含む)の現地生産などで、日本の高い技術力を活用した協力が有望である。

【国際経済本部】
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