日本経団連タイムス No.3005 (2010年7月15日)

「ワーク・ライフ・バランス憲章・行動指針」などで政府担当官から説明聞く

−少子化対策委員会


日本経団連の少子化対策委員会(斎藤勝利共同委員長、前田新造共同委員長)は2日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、内閣府の担当官から、「ワーク・ライフ・バランス憲章・行動指針」の改定経緯と「子ども・子育て新システム」の検討状況について説明を聞き、意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 「ワーク・ライフ・バランス憲章・行動指針の改定経緯」
姉崎猛・内閣府官房審議官(共生社会政策担当)

6月29日、政労使の合意のもと、ワーク・ライフ・バランス憲章・行動指針の新合意がなされた。同憲章・行動指針は2007年に策定されたが、今般、(1)政労使トップの交代を機に、新体制での積極的姿勢を表明すること(2)施策の進捗を踏まえた新たな視点や取り組みを盛り込むこと――を意図し改定された。憲章は、策定趣旨を明確化したものの、目指すべき社会の姿など理念自体は変更していない。行動指針には、施策の進捗状況を確認するため、2017年段階での社会全体の「数値目標」が設定されていたが、政府の「新成長戦略」等との整合性を取るために、2020年の目標値に改めた。企業には、今後とも継続的な取り組みを期待している。

■ 「子ども・子育て新システムの検討状況」
川又竹男・内閣府参事官(少子化対策担当)

政府は、新たな子育て支援の仕組みとして、6月29日に「子ども・子育て新システム基本制度案要綱」(少子化社会対策会議決定)を取りまとめた。同システムは、子育て支援の制度・財源を一つにまとめ、施策の充実と効率化を図ること、社会全体(国・地方・事業主・個人)で費用を負担すること、地域主権を前提に基礎自治体を重視すること等を目指している。

制度のイメージは、「子ども・子育て勘定」(仮称)を設置し、国の一般会計と労使からの拠出を集め、各市町村へ児童人口等に応じて一括交付する仕組みである。給付は、(1)基礎給付(子ども手当等)(2)両立支援・保育・幼児教育給付(保育サービス等)――に分け、両立支援給付への事業主・個人の拠出を検討している。財源構成や負担規模など、定量的な論点については今後の議論である。幼保一体化や多様な事業主体の参入促進を進め、多様な保育サービスの拡充を図るためには、恒久財源の確保が必要となる。

なお、特別会計の創設は行政の肥大化を招くとの指摘があるが、税と拠出金をまとめるため、区分経理を行う必要があるという意味である。新システムは、2011年の通常国会に法案を提出し、2013年の本格施行を目指すが、今後は関係者との協議のもと、よりよい制度とするよう検討していきたい。

■ 意見交換

続いて行われた意見交換では、「予算規模や公費の追加投入の目途が不明のまま、制度設計が進むのは遺憾。現役世代の社会保険料負担は限界にあり、さらなる企業拠出には応じられない」「現行、雇用保険や健康保険等、各保険の趣旨に沿って拠出しているが、財源の一元化により拠出の考え方や使途が不透明となる」として、経済界の意見をきちんと受け止めるよう要請があった。

これに対し、川又参事官から「制度実現までには定量的な議論は避けて通れない。関連施策は平成22年度予算ベースで6兆900億円と試算されているが、今後のサービスの需給状況を踏まえ、財源確保策とあわせ検討していきたい」との認識が示された。

【経済政策本部】
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