日本経団連タイムス No.3006 (2010年7月22日)

新たなエネルギー基本計画について石田・資源エネルギー庁長官と懇談

−資源・エネルギー対策委員会


資源・エネルギーの多くを海外に依存するわが国にとって、その安定確保や、エネルギー利用に伴う地球温暖化問題への対応は戦略的に極めて重要な課題である。こうしたなか、資源エネルギー庁では、エネルギー政策基本法に基づき、エネルギー基本計画の見直しを行い、同計画は6月18日に閣議決定された。
そこで、資源・エネルギー対策委員会(岡素之共同委員長、井手明彦共同委員長)は7日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、新たなエネルギー基本計画について、資源エネルギー庁の石田徹長官と意見交換を行った。石田長官の説明概要は次のとおり。

■ 基本的な視点

エネルギー政策の基本が、エネルギー安全保障の確保、温暖化対策の強化、効率的な供給であることに変わりはない。改定されたエネルギー基本計画では、新たな視点として、環境エネルギー分野での経済成長実現とエネルギー産業構造の改革を追加した。また、エネルギー需給構造を抜本的に改革しようとすれば、ある程度の時間が必要となるため、2030年に向けた具体的な施策を提示するとともに、さまざまな数値目標を設定した。

■ 2030年の数値目標

基本計画では、従来のエネルギー自給率(国産+原子力)に加えて自主開発資源も勘案した「自主エネルギー比率」を、2030年までに70%程度に向上させることを目標としている。また、CO2を排出しない電源の比率を約70%に引き上げることを掲げている。
他方、暮らし(家庭部門)のCO2を半減させつつ、産業部門で世界最高のエネルギー利用効率を維持・強化することとしている。

■ 目標実現のための取り組み

エネルギー供給面では、希少金属などの資源確保・安定供給強化に向けて、官民が連携した総合的な取り組みを展開していく。あわせて、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電の推進、化石燃料の高度利用など、自立的かつ環境調和的なエネルギー供給構造の実現に向け取り組んでいく。
一方、エネルギーの需要面については、低炭素型成長を可能とするエネルギー需要構造の実現を目指す。例えば、産業部門で設備更新時に最先端の技術導入を促進するとともに、家庭部門ではエネルギー収支がゼロとなる住宅を2030年の新築の標準とするなどの施策を進める。
さらに、革新的エネルギー技術の開発を前倒しし、新たなエネルギー革新技術ロードマップを策定するとともに、官民一体となった海外展開を支援する体制を整備する。

■ 計画実施の場合のCO2排出量

同計画を強力に実施することで、国内だけで2030年30%程度の削減が見込まれる。これは、先進国が約束する「2050年に90年比マイナス80%」に向けた現状からの削減幅の約半分に相当する、極めて野心的な目標である。石油ショック時を上回る効率改善が求められるが、経済成長しながら、CO2排出量を大幅に削減する姿を提示した次第である。

【環境本部】
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