日本経団連タイムス No.3006 (2010年7月22日)

日本経団連「社会貢献基礎講座」

−仕組みから活動、評価までテーマに合宿講座


日本経団連事業サービスは、企業がCSRの一環として推進する社会貢献活動について包括的に学ぶ「社会貢献基礎講座」を実施している。3回の講座を実施したあと、今月9日から10日にかけて山梨県富士吉田市の人材開発センター富士研修所で合宿講座を開催した。全体の進行は、日本経団連の社会貢献担当者懇談会の嶋田実名子座長(花王社会貢献部長)、武田薬品工業の金田晃一CSRシニアマネジャーが務めた。

最初のセッションでは、「グローバルな社会貢献活動の推進」をテーマに、東芝の相馬季子CSR推進室参事から、国内外のグループ各社・事業所に担当者を配置して活動し、その活動事例約1300件を収集・分類して報告書などで共有する仕組みについて話題提供があった。これを受けて討議を行い、各国の担当者がグループ理念からぶれないようにしつつ、地域ニーズにあわせて自主性を発揮しながら活動できる余地を確保することが重要であると確認した。また、グループの求心力や従業員の忠誠心の向上、マーケティングやリスクマネジメントなどの目的を活動の戦略に織り込んでいくことが大事だとの意見も出た。

第2セッションでは、「従業員の寄付文化の醸成」をテーマに、UBS証券会社の堀久美子コミュニティ・アフェアーズ・ディレクターが、従業員のワーキング・グループが中心になって年間約50の社会貢献イベントを実施していることや、金融業界が一体となって進めている「FITチャリティ・ラン」について紹介。昨年度のFITには、97団体から5千人を超える従業員が参加し、5900万円近くを集めて6つの非営利団体に寄付を行ったとの報告があった。また、従業員をステークホルダーと位置付け、その満足度を高めるために、部署や個人の特性にあわせた関わり方を提供していくことが重要であるとの指摘があった。

第3セッションでは、「社会貢献活動の評価力向上」をテーマに、損害保険ジャパンの関正雄理事から、社会的価値の創造と企業価値の向上という2つの視点から、基本方針を明確にしてプログラム選別のための評価基準を策定し、支出水準のガイドラインを定めて活動を評価していることが紹介された。関氏は、評価は改善のためにも不可欠であり、定量的評価だけでなく、だれにどんな影響を与えたのか、どんな変化をもたらしたのかなどのエピソードを丹念に集めて、データ化して活用することも有効であると強調した。

2日目には、参加者が自社の課題について、推進体制の整備、実際の活動、社内外への影響という3つの軸で、どのようなことに取り組みたいかを整理して、それぞれ会社に持ち帰った。また、河口湖フィールドセンターの視察を行い、富士山麓の生物多様性保全の活動について説明を受けた。

参加者からは、「社会貢献やCSRについてぼんやりとした認識でいたが、方針や評価方法も含め、中身についてもっと議論すべきだと思うようになった」「自社の特性にあわせて適用できる汎用性の高い事例を学ぶことができた」等の声が上がった。

今後、社会貢献基礎講座は、地域貢献、国際貢献、次世代育成、社会福祉、人権等のテーマを取り上げ、今年11月まで開催する。詳細に関する問い合わせは日本経団連事業サービス(電話03‐6741‐0042)まで。

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