日本経団連タイムス No.3007 (2010年7月29日)

「財務報告に関わるわが国開示制度の見直しについて」を公表

−開示制度全般の包括的見直し提言


日本経団連は20日、国際会計基準(IFRS)導入に向けた環境整備の観点から、提言「財務報告に関わるわが国開示制度の見直しについて」を取りまとめた。提言の主な考え方は次のとおり。

企業活動のグローバル化を背景に、会計基準の国際化の動きが加速化している。昨年6月には、金融庁が中間報告を公表し、2010年3月期からIFRSの任意適用が認められ、2015年ないし2016年からの強制適用についても2012年を目途に判断されることとなった。
IFRSの活用は、財務諸表の比較可能性を通じて、投資家の利便性を向上させるほか、企業経営ツールの共通化を通じ、グローバル経営の効率化にも資するものである。わが国の国際競争力強化の観点からも、国際的に整合性のある市場インフラを整備していくことが肝要である。
一方、わが国の開示制度においては、内部統制報告制度や四半期報告制度といったディスクロージャーの拡充とともに、企業のコスト負担も増加傾向にある。各国制度と比較しても、過剰であると考えられ、日本経団連としても、かねてより政府に開示制度の簡素化を働きかけてきた。
その結果、政府が6月に公表した「新成長戦略」には、開示制度に関連した事項が複数盛り込まれた。同提言は、政府のこうした取り組みを後押しするとともに、より包括的な開示制度全般の見直しを要請するものである。

1.取引所における適時開示制度

金融商品取引法上の法定開示と取引所における適時開示については、ともに投資家向け情報提供が目的であるにもかかわらず、類似した異なる制度となっており、役割分担を整理する必要がある。海外の制度との公平性も勘案し、適時開示制度全般の簡素化について、早急に検討することが望まれる。
また、業績予想については、ディスクロージャーの拡充に伴い、タイムリーな開示がなされており、有用性が失われつつあるため、廃止あるいは完全な自主開示化などの検討が必須である。

2.金融商品取引法上の法定開示

国際的なディスクロージャーの基本は、連結財務諸表であり、経済界のこれまでの主張どおり、連結財務諸表にIFRSを強制適用する際の金融商品取引法上の個別財務諸表の開示は、廃止も含めた抜本的な簡素化を検討すべきである。
四半期報告制度についても、国際的な整合性を踏まえた大幅な簡素化が望まれる。四半期決算短信の内容と極力統一し、作成負荷を大幅に削減するような抜本的な方策の検討も必要である。

3.内部統制報告制度

内部統制報告制度については、実効性を担保しつつも過度の負荷がかからない効率的かつ有効な制度の実現が求められる。財務諸表監査との一体監査の枠組みにおいて、内部統制監査はそもそも不要とすることも考えられるが、まずは、簡素化に向けて内部統制監査のあり方を整理することを提言している。

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今後、日本経団連では、経済界の考え方についての理解を得るよう、関係各方面への働きかけを実施し、IFRS導入に向けた環境整備に取り組んでいきたい。

【経済基盤本部】
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