日本経団連タイムス No.3007 (2010年7月29日)

赤堀林野庁森林吸収源情報管理官と懇談

−気候変動交渉における途上国の森林の取り扱い聞く/REDD+の議論の経緯なども


日本経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で、赤堀聡之・林野庁森林吸収源情報管理官との懇談会を開催し、REDD+( Reducing emissions from deforestation and forest degradation in developing countries 、森林減少および劣化に関連する排出の削減)に関する国際議論の動向について説明を受けるとともに、懇談した。赤堀管理官の説明概要は次のとおり。

■ 途上国における森林の減少・劣化

大規模な森林の減少・劣化は、森林が分布する国や地域の経済活動や環境に悪影響を及ぼすのみならず、地球温暖化の原因となるCO2濃度の上昇、野生生物種の減少等を引き起こし、地球環境の保全上大きな問題になっている。近年、森林面積の減少が進んでいるのは、途上国が圧倒的に多く、その原因として、人口増加、食料不足、過度の焼畑、商業伐採等の要素が複雑に絡み合っている。

■ 気候変動交渉における途上国の森林の取り扱い

このような森林減少等に由来する排出は、世界の温室効果ガス排出量の約2割を占めているが、この問題は京都議定書では対象とされていない。
こうしたなか、途上国による森林の減少・劣化を抑制するための取り組みを通じたCO2の排出削減に対して、何らかの経済的なインセンティブを与え、それによって森林の減少・劣化の防止および温暖化の緩和・防止を図ろうとする新たな考え方が生まれている。

■ REDD+に関する議論の経緯

REDDが最初に提唱されたのは、2005年の気候変動枠組条約第11回締約国会議(COP11)の場であり、当初はその対象を森林減少としていたが、07年のCOP13において、森林劣化や保全等も対象とすることとなり、いわゆるREDD+という呼称となった。
REDD+については、昨年末のCOP15で留意すると決定された「コペンハーゲン合意」において、その重要性や先進国からの資金調達を可能とする制度創設の必要性が言及されている。
そこで、今年5月末、気候変動と森林に関するオスロ会議が開催され、2012年までのREDD+の取り組み(途上国のキャパシティー・ビルディング等)を強化すべく、国際社会の協調・連携を図るためのパートナーシップを構築することが合意された。コペンハーゲン合意がいまだ採択されていないなかでも、暫定的なパートナーシップを立ち上げ、非公式なかたちで関係国によりREDD+を進展させていく方向である。

■ わが国の協力

REDD+の確実な実施のためには、森林からの排出量の把握手法等の開発や途上国の人材育成、技術移転等の課題に取り組むことが必要である。
わが国は、森林減少・劣化の把握に関する技術開発・移転の推進、世界銀行による森林炭素パートナーシップ基金への協力等、二国間および多国間の両面で支援を行っている。

■ 今後の予定

今年10月には、わが国主催で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)とあわせて、「森林保全と気候変動に関する閣僚級会合」を開催予定である。

【環境本部】
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