日本経団連タイムス No.3008 (2010年8月5日)

2010年度総会を開催

−「欧米の宇宙政策」を聞く/宇宙開発利用推進委員会


日本経団連は7月26日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)の2010年度総会を開催した。当日は、総会議件等を審議した後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の樋口清司副理事長から「欧米の宇宙政策」をテーマに講演を聞いた。<総会議件等>

09年度事業報告については、宇宙基本計画の策定に向けた対応などが報告された。また、10年度事業計画としては、新成長戦略に対する提言取りまとめや2011年度防衛関係予算への対応などが説明された。

<樋口副理事長講演概要>

講演する樋口副理事長

米国や欧州の宇宙開発を知るには、NASAやESA(欧州宇宙機関)の活動を調べるだけでは不十分である。米国における宇宙機器の売上先としてはNASAが4割程度、国防省が4割、産業が2割である。欧州ではESAと各国政府は4割に満たず、残りは軍事や産業などが占める。
宇宙にはフロンティアへの挑戦や技術開発のイメージが強いが、安全で豊かな社会の構築を目指すためにかなり利用されている。

■ 米国の宇宙政策

米国では、国家安全保障会議(NSC)が宇宙政策を取りまとめる。今年6月28日に発表された「米国国家宇宙政策」では、責任ある宇宙活動は各国共通の利益であり、宇宙の持続的発展が必須としている。
産業育成政策については、これまでは国防省が中心となり宇宙産業を支えていたが、今後は効果的な輸出政策を実施する。
米国宇宙政策の特徴として、宇宙は挑戦すべきフロンティアであるという考え方は変わらない。宇宙予算は他国に比べれば圧倒的に多いが、財政状況が厳しいことから、予算は不足している。そこで、米国のリーダーシップは維持しつつ、国際協力を活用し、国際的な規格や標準づくりを重要視する方向にある。

■ 欧州の宇宙政策

欧州では、研究開発機関であるESAと欧州全体のガバナンスを担うEUが、宇宙計画における欧州地域の自立を目指したプログラムを進めている。
かつてはESAが中心であったが、1990年代からEUが連携するようになった。両者の政策を調整する機関として欧州宇宙会議がある。2000年以降、ESAとEUは、欧州の宇宙政策を共同で策定している。

■ 意見交換

意見交換では、出席者から今後の宇宙開発利用の進め方に関して質問があった。これに対して樋口氏は、米国の国防省、欧州のEUのような利用省庁や機関が宇宙の活用を進めることが大事であると答えた。

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総会終了後、記念パーティーが開催され、宇宙開発利用推進委員会のメンバー、国会議員、政府関係者、有識者など約200名が参加した。

【産業技術本部】
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