日本経団連タイムス No.3008 (2010年8月5日)

コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性をめぐり意見交換

−産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会


日本経団連の産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(依田巽部会長)は7月16日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、経済産業省の信谷和重文化情報関連産業課長から、「コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性」について説明を聞き、意見交換を行った。
信谷課長の説明要旨は次のとおり。

コンテンツ産業は、その潜在力と波及効果の大きさにより、政府が発表した「新成長戦略」(6月18日閣議決定)をはじめ、経済産業省が発表した「産業構造ビジョン」でも、主要な成長分野に位置付けられている。しかし、(1)海外での高い評価が、経済的利益に結び付いていない(2)海賊版流通により、莫大な遺失利益が発生している(3)制作の現場に対して、十分な対価が還元されていない(4)継続的な人材育成の場が不足している――などの課題がある。

政府としては、これら課題の打開に向けて、コンテンツ海外展開ファンドの創設やアジア・コンテンツ・ビジネスサミットの開催などを通じた、海外市場での収益拡大策を講じる。加えて、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の活用などによる、海賊版流通対策の強化や下請ガイドラインの策定による国内環境の整備、人材育成強化に向けた海外留学支援制度の創設などの施策を実行していく。それにより、2020年には、国内外売上高5兆円増、海外売上高3倍増、雇用者数5万人増の達成が可能である。

■ 意見交換

続いて行われた意見交換では、「クリエーターによる国内起業が減っている。現在の法人税率では、起業しても勝負にならないためだ」など、法人税率の早期引き下げを求める意見や、「中国では、海賊版の流通がひどく、ビジネスにならない」など、海賊版流通対策のさらなる強化を求める声が上がった。また、「わが社は、東京で最も地価が高い一角でビジネスを展開している。このことは、日本では、地価が最も高い場所で、音楽が売られていることを意味しており、日本人が、音楽やコンテンツに代表される文化を重要視していることの表れでもある」と、コンテンツ産業の重要性を訴える声も上がった。

これに対し、信谷氏は、法人税率の引き下げについて、「国際的水準まで下げる必要がある」と述べ、「省内でも議論をしている」と現状を説明。また、海賊版流通の問題については、「上海万博でのテーマソングのコピー問題を契機に、中国国内でも取り締まりを強化する機運が高まってきている。日中の既存の枠組みを使って、さらなる働きかけを行っていきたい」との認識を示した。

【産業政策本部】
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