日本経団連タイムス No.3009 (2010年8月12日)

「2009年度統計法施行状況報告」の概要と公的統計の
整備における喫緊の課題と対応に関する基本的考え方聞く

−経済政策委員会統計部会


日本経団連の経済政策委員会統計部会(竹原功部会長)は7月28日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、総務省の池川博士政策統括官(統計基準担当)、内閣府の乾友彦統計委員会担当室長から、「2009年度(平成21年度)統計法施行状況報告」の概要等および公的統計の整備における喫緊の課題とその対応に関する基本的考え方について説明を聞き、意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 09年度統計法施行状況報告の概要等について

政府は現在「公的統計の整備に関する基本的な計画」に基づいて公的統計の整備に向けた施策の検討・実施を進めているが、その初年度の取り組み状況について、今年6月に「09年度統計法施行状況報告」を取りまとめて公表し、統計委員会へ報告した。09年度末までの状況としては、5年間の計画期間に措置することが必要とされた196の施策項目のうち173事項について、既に改善に向けた取り組みに着手している。

また、最近の報道にあるように、公的統計のあり方をめぐっての議論があるなかで、総務省では、統計の統合に関する渡辺周総務副大臣の指示により、基本計画を踏まえつつ事務レベルで検討した結果として、335の公的統計(2010年4月1日時点)のうち、214統計は継続、98統計は26統計に統合、23統計は廃止するという案を取りまとめて各府省に提示し、統計委員会にも報告した。個別の内容については、各府省との調整を要するが、統計の統合を進めることにより、統計の統一性の向上など利用者サイドの有用性は高まるため、今後とも議論を進めていく予定である。

■ 公的統計の整備における喫緊の課題とその対応に関する基本的な考え方

総務省の「統計法施行状況報告」を受けて、統計委員会では、現在、基本計画部会とその下のワーキング・グループで審議を進めている。その審議に先立ち、公的統計に関する現時点での課題を改めて整理した。

公的統計の課題としては、大きく3つ挙げられる。第1は、客観的証拠に基づく政策の企画・立案に向けた、より質の高い公的統計の提供である。公的統計は、政策立案のみならず、国民、企業等の意思決定や学術研究に活用するための情報基盤であり、ニーズに合った正確な情報をタイムリーに提供することが統計の質を考えるうえでのポイントとなる。

第2は、公的統計の体系的な整備である。その際、各統計の統計体系全体の中での位置付けや相互の連携を意識することが、統計の有用性を確保するうえで欠かせない。

第3は、必要な統計リソースの確保である。質・量ともに高まる要求水準に対応していくためには、公的統計の効率的な整備に加えて、公的統計の作成・提供のための予算・人員の確保と有効活用がますます重要となる。

こうした課題に対応して優先的に進める政策の方向性として、(1)国民経済計算の精度向上(2)サービス産業関連統計の体系的整備(3)少子高齢化の進行や労働市場の多様化・複雑化、さらにはグリーン・イノベーションやライフ・イノベーション等、新たな政策課題に対応した統計整備――の3つの分野が挙げられる。

■ 意見交換

日本経団連側からは、公的統計の整備にあたって、「統計法施行状況報告書について、統計関係者以外の理解が深まるよう、わかりやすい表現を工夫してほしい」「公的統計の統廃合を行う際には、統計ユーザーの意見も聞いていただきたい」「統計調査における民間委託については、市場化テストの結果も考慮して進めてほしい」などの発言があった。これに対し、総務省・内閣府側からは、「統計ユーザーとの意見交換会は随時開催しており、直近では秋ごろにも開催する予定である」「報告書の表現のあり方や民間の創意工夫を活かせるような統計の整備については、今後とも改善努力を進めていきたい」とのコメントがあった。

【経済政策本部】
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