日本経団連タイムス No.3012 (2010年9月9日)

第26回「企業広報賞」表彰式開催

−米倉会長、社会の信頼と共感得る企業広報の役割を強調/経済広報センター


経済広報センター(米倉弘昌会長)は1日、東京・大手町の経団連会館で第26回「企業広報賞」の表彰式を開催した。表彰式では、米倉会長から企業広報大賞を受賞した東武鉄道の根津嘉澄社長ら各賞の受賞企業・受賞者に表彰状・トロフィーが授与された

冒頭、主催者を代表してあいさつした米倉会長は、「企業が社会の一員として持続的に発展していくためには、さまざまなステークホルダーに対して、自社の経営理念や事業活動について積極的に情報を発信し、広く理解を得ていくとともに、社会の声に真摯に耳を傾け、経営にその声を反映させていくことが不可欠である。こうしたステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを構築し、円滑に推進していくことにより、社会からの信頼と共感を得ていくことが企業広報の大きな役割」と指摘。そのうえで「今回受賞された方々は、変化の激しい、大変難しい事業環境にあっても、良好なコミュニケーションを通じて社会の信頼と共感を得るという企業広報の役割を的確かつ戦略的に果たしてきた。“社会からの信頼と共感を得られる経営”を目指す経営者や広報担当者の参考となり、励みとなるよう願っている」と述べた。

表彰状・トロフィーの贈呈に続いて、選考委員長を務める一橋大学大学院商学研究科教授の伊藤邦雄氏が講評を行い、各賞の選考のポイントなどを説明。その後、受賞企業代表・受賞者があいさつした。あいさつの要旨は次のとおり(文責記者)。

受賞企業の代表と受賞者があいさつ

<東武鉄道社長・根津嘉澄氏>

これまで鉄道事業を中心に、地域の発展、沿線の活性化を念頭に事業活動を行ってきた。東京スカイツリーの建設を中心とする街づくりプロジェクトでは、地元の熱心な誘致活動があったことを踏まえ、当初から地元やマスコミの理解、協力を得るため、頻繁に見学会、説明会を開催してきた。今後、スカイツリーのある街が東京の東エリアのシンボルとなって地域活性化に寄与できるよう、さらに「観光立国日本」の名所となるよう、世界に向けてさまざまな情報を発信していきたい。

<大和証券グループ本社執行役社長・鈴木茂晴氏>

社員が働きがいをもって働ける職場をつくることが、健全な金融資本市場の発展により社会の持続的な成長を支援していくという使命への近道と考えている。当社では、ワーク・ライフ・バランスの推進を経営戦略ととらえ、仕事と育児の両立支援制度などのさまざまな施策を継続的に社内外に発信してきた。当社の取り組みを社内外に発信しつづけることにより、社会全体で積極的に取り組んでいく機運が高まればと願っている。

<武田薬品工業社長・長谷川閑史氏>(代読)

高い倫理観をもって、公正、正直に取り組む基本姿勢と、より良き姿を追求しつづける不屈の精神である「タケダイズム」の不断の実践を通じて企業価値の向上に取り組んでいる。中期計画において、将来の持続的成長を実現するための戦略を発信することで、新たな変革を目指す当社の決意を示した。より多くの人々に当社の事業への理解を深めてもらうため、コミュニケーションに努めるとともに、製薬産業の発展、国家の成長戦略推進のため積極的な対話を透明性高く行っていきたい。

<JXホールディングス社長・高萩光紀氏>

今回の受賞は新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合に際し、一丸となって取り組んだグループ全社員にいただいたものと考えている。統合にあたって広報面で留意したのは、グループの将来像やその道筋を明確にし、あらゆる機会を通じ情報を発信することにより、社内外のステークホルダーの理解と共感を得ることである。現状への危機感と将来像は両社に共通しており、それぞれの立場から十分に情報発信できたことが今回の結果につながった。

<パナソニック常務役員・鍛治舍巧氏>

広報担当としてまず取り組んだのは、トップ広報とインナーコミュニケーションである。トップの考えを、メディアを通じて社員をはじめステークホルダーに伝えたいと考えた。また、製品事故への対応では、CMをすべてお詫びと告知に切り替え、迅速に対応に取り組んだ。08年1月には社名変更・ブランド統一を発表している。広報での7年の経験を通じ、「広報はトップとともに歩む、広報戦略なくしてブランド戦略、経営戦略なし」と考えている。

<花王コーポレ‐トコミュニケーション部門広報部長・坂倉隆仁氏>

昨年、新たなCI、環境宣言を発表し、グローバルにエコロジー活動をしている当社の姿を多くの人々にアピールする機会を得た。一方、食用油の問題ではこれまで経験したことがない厳しい意見が多く寄せられたが、一人ひとりに誠意をもって対応していくことで、徐々に当社の姿勢が伝わってきたと実感している。広報は会社と社会の間の「窓」である。企業本位の考え方にならないよう常に気を配ることがまさに広報のミッションである。

<東京電力顧問・桝本晃章氏>

広報担当、役員として四半世紀にわたり広報を担当した。初めて広報を担当した1974年はオイルショックのただ中であり、石油価格急騰による電気料金の大幅な値上げが社会問題となった。その後も電力業界を取り巻く環境が激変するなか、企業、業界の窓口として務めてきたが、広報はマスコミの厳しい取材への対応と、その一方で信頼関係が相まって成り立っている。その意味で、カウンターパートであり競争相手であるメディアにも感謝している。

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