日本経団連タイムス No.3013 (2010年9月16日)

地球規模の低炭素社会実現へ提言

−環境・経済両立へ具体策提示


日本経団連は14日、提言「地球規模の低炭素社会の実現に向けて」を取りまとめ、公表した。
政府は現在、国内排出量取引制度などの施策の導入を検討しているが、産業界が今後とも、優れた省エネ製品や技術開発も含め、温暖化対策に積極的かつ主体的に取り組んでいくためには、政府の政策が、経済・産業の活力を奪うものではなく、環境と経済の両立に資するものであることが不可欠である。同提言は、こうした観点から、地球温暖化政策に対する具体的な提案として取りまとめたもの。概要は次のとおり。

■ 温暖化対策における技術の重要性

地球温暖化対策と成長戦略の両立のカギを握るのは技術である。この点、昨年12月に公表した基本方針に沿って現在策定中の「日本経団連 低炭素社会実行計画」は技術を軸とした取り組みであり、これを政府の温暖化対策に明確に位置付けることによって、低炭素社会の実現に大きな役割を果たすことができる。

■ 国際的なイコールフッティングの確保

日本企業が得意な世界最先端の技術で製品・サービスを生産し、国内外に提供することは、世界の低炭素化とわが国の成長に貢献する。しかし、誤った温暖化対策により、日本がさらに高コスト構造化すれば、日本の強みを活かした国際貢献ができないばかりか、経済や雇用にも悪影響を及ぼす。
ものづくり国家としての立地競争力を高め、海外からの投資をも呼び込み、日本を世界の低炭素型産業の集積地とするような戦略が求められる。

■ ライフサイクル/国際貢献/革新的技術開発

政府内で検討中の国内排出量取引制度が導入された場合、政府の計画や国民のニーズに応えて低炭素製品、それに不可欠な素材・部品等を大量に供給しても、割り当てられた排出枠を超えてしまう企業は、排出枠の購入または罰金を余儀なく科される。温暖化対策に際しては、ライフサイクルの視点を重視し、温室効果ガスの削減に貢献する産業を戦略的に育成・強化していく必要がある。
また、国際貢献を評価する新たな仕組みを構築する観点から、今後、二国間オフセットメカニズムの早期実現に向けて、途上国との二国間約束に向けた政府間協議の加速化などが求められる。
さらに革新的技術の開発促進に向け、研究開発促進税制の恒久化・拡充を図りつつ、総合特区制度等も活用し、低炭素技術の大規模な実証実験を着実に進める必要がある。

■ 新たな政策手法の導入について

政府が検討中の、(1)国内排出量取引制度(2)地球温暖化対策税(3)再生可能エネルギーの全量買取制度――という3つの施策は、国民生活や雇用に多大な影響を与える一方、革新的技術の開発や普及のための原資を奪うなどの問題があるため、安易に導入されるべきではない。3つの施策全体としての効果と負担をまずわかりやすく明示し、透明で開かれた国民的な議論に付すべきである。

■ おわりに

わが国が低炭素社会の実現を目指すうえでは、「低炭素社会実行計画」を軸に、官民一体となった取り組みの推進が効果的である。経団連としては、温暖化対策全般に関する政府等との対話強化など、一層密接な連携を図っていく。

【環境本部】
Copyright © Nippon Keidanren