日本経団連タイムス No.3014 (2010年9月30日)

国民目線から見た地球温暖化対策のあり方などで説明聞く

−読売新聞の安部編集委員に/環境安全委員会


日本経団連では現在、関係業界の協力のもと、昨年12月に公表した「低炭素社会実行計画」の基本方針に沿って、各業界の実行計画の取りまとめを行っている。今後は、政府など関係方面と協力して実行計画を推進し、グローバルな低炭素社会の実現に向け積極的に取り組んでいく。一方、政府の温暖化政策が、わが国経済・産業の活力を奪うものではなく、環境と経済の両立に資するものとなることが重要であり、この点について、国民一般の理解を得ていく必要がある。
そこで、環境安全委員会(坂根正弘委員長、天坊昭彦共同委員長)は6日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、国民目線から見た地球温暖化対策のあり方などについて、読売新聞の安部順一編集委員から説明を聞き、意見交換を行った。
安部編集委員の説明概要は次のとおり。

■ 国民は地球温暖化対策をどう見ているか

昨年9月、鳩山由紀夫総理大臣(当時)は国連気候変動首脳会合で、2020年の日本の温室効果ガスを90年比25%削減する目標を表明した。
国連演説前に実施された読売新聞世論調査では、この目標に対して74%が賛成し、国連演説直後に実施された調査でも、75%が賛成という結果が得られた。ここから導き出される結論は、「温暖化対策=良いこと」に議論が止まり、国民が自らの負担とはとらえていないことである。
しかし、「温暖化対策のために家計が許容できる負担」という質問になると、途端に反応が変わる。国民負担が示されない限り、温暖化対策の善しあしを判断する材料はない。
また、産業部門の温室効果ガス排出量が90年度比で減少していることは産業界には周知の事実であろうが、一般の消費者には理解されていない。

■ 地球温暖化対策基本法案を考える

先の通常国会に提出され、廃案となった地球温暖化対策基本法案では、(1)国内排出量取引制度(2)地球温暖化対策税(3)再生可能エネルギーの全量買取制度――の3つの施策が明記されていた。これら施策は国民に負担増を求めるものであるが、一般国民は、これら施策が自らの負担になるとは認識していない。
国内排出量取引制度については、公平性や国際競争力、企業の海外移転など、さまざまな観点から議論が行われているが、一般の人たちには、どのようなコストが発生するのか見えにくい。また、企業が海外移転しない場合に、どのようなかたちでコストに跳ね返るのか、理解されていない。

■ 産業界に何が求められているか

最大の問題は、多くの人が温暖化問題をよく知らないこと、また、「企業は利益のために動く」と考えていることである。
「限界削減費用」や「原単位」と言われても、一般の国民は理解できない。マスコミはわかりやすく「通訳」する立場にあるが、情報を発信する産業界側にも簡明な説明を心がけてほしい。
他方、「何兆円もの国民負担が生じる」といった類の説明が散見されるが、一般の人たちにとってはあまりに規模が大きく、十分理解されていない。産業界に対する不信感を高めないためにも、何が本当に譲れない一線なのか、わかりやすく情報を発信していく必要がある。

【環境本部】
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