日本経団連タイムス No.3014 (2010年9月30日)

循環型社会構築に向けた課題と対策で説明受ける

−環境安全委員会廃棄物・リサイクル部会


日本経団連の環境安全委員会廃棄物・リサイクル部会(吉川廣和部会長)は3日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、循環型社会構築に向けた課題と対策について、細田衛士慶應義塾大学経済学部教授から説明を受けるとともに懇談を行った。細田教授の説明概要は次のとおり。

資源循環ビジネスには、動脈経済と静脈経済が存在する。動脈経済とは「モノ」を生産・消費する経済取引にかかわる経済であり、静脈経済とは使用済みになった製品等を収集運搬・中間処理・再資源化・再使用する取引にかかわる経済である。動脈経済と静脈経済が有機的につながることによって初めて円滑な資源循環が行われる。

現在の先進国においては、「モノ」の量で付加価値を競う経済取引の部分は小さくなりつつあり、どこで付加価値を上げるのかが問題となっている。このような問題に対し、動脈経済では、標準化・規模の経済の活用・情報活用といった「システム化」を行い、付加価値を上昇させてきた。

こうした動脈経済の動きは、静脈経済においても応用できる。しかしながら、わが国の静脈経済にはシステム化による付加価値の上昇という視点が欠けており、現在も未成熟な市場・取引慣行に支配されている。背景には、排出事業者の問題(ダンピング問題)があるが、静脈事業者にも問題(公共事業頼み・既得権益志向の発想)がある。このような状況では、これからの3R政策に対応できない。

一方、わが国と対照的に、EUの静脈産業は動脈経済の大企業に対抗し、連携を組めるほどの実力をつけ始めている。静脈事業者は、動脈経済の企業に対して、高付加価値のビジネスを提供している。より高度な付加価値をつくり出すための連携を常に模索しており、大企業と連携する場合もある。こうしたことが日本では行われていない。

今、わが国の静脈産業には、自らのビジネスについての冷静な事実認識と自己評価(メリットの探索)が求められている。つまり、プロダクトチェーンでの自らの産業の位置付けを確認し、連携関係を模索する必要がある。一方で、集荷体制をシステム化し、さらには、静脈資源の質も確保していかなければならない。その際には、透明性、説明責任、追跡可能性の担保も必要である。

ただし、動脈経済構造が変われば、使用済み製品・部品・素材の質も変化する。そうした質の変化に柔軟に対応するためにも、連携を活かした的確な情報、知識、知恵の収集が必要となる。例えば現在、使用済み小型家電からのレアメタル回収が注目されている。しかし、現在のシステムでは、小型家電から採算ベースに乗るようなかたちでレアメタルを回収することはできない。ビジネスに乗ることを前提に、的確なシステムを組み立てることが必要である。

【環境本部】
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