日本経団連タイムス No.3016 (2010年10月14日)

「課題解決型イノベーションの推進」

−小宮山・三菱総合研究所理事長が講演/産業技術委員会


日本経団連の産業技術委員会(榊原定征委員長)は7日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、小宮山宏・三菱総合研究所理事長から、「課題解決型イノベーションの推進」について説明を聞いた。

若者も高齢者も生き生き暮らせる社会の実現を

小宮山理事長はまず、「重要な視点は『人工物は飽和する』ということである」と指摘したうえで、「自動車にしても住宅にしても、1人当たりに販売できる数量には一定の限界がある。成長著しい中国であっても、実はここ5−10年で人工物が飽和状態となる。人工物がすでに飽和状態にあるわが国については、新しい内需を生み、雇用を創出する『創造型需要』が必要である。これらに当たるものがグリーン産業、シルバー産業であり、こうした産業分野において、ビジョンを共有し、『ものづくり力』と『文化力』を活用して課題解決を図るべきである」と説明した。

次に、小宮山理事長が掲げる「ビジョン2050」について説明。「わが国は2050年までに、エネルギー効率3倍、再生可能エネルギー2倍、物質循環システムの構築の達成を目指すべきであり、十分達成可能である。これらの目標の達成により、持続可能な社会が実現する」と述べた。特に、エネルギー消費の効率化については、「わが国のエネルギーの使用用途を『日々の暮らし(家庭、オフィス、輸送)』と『ものづくり(産業)』の大きく2つに分類すると、今後削減余地が大きいのは圧倒的に『日々の暮らし』である。わが国の戦略は明確で、『日々の暮らし』で大幅に削減しつつ、『ものづくり』は最先端の効率性で世界をリードすることである。すでに高効率な『ものづくり』に削減のキャップをかけるべきではない」と強調した。

また、『日々の暮らし』については、「窓の内側に2枚目の窓を設置するだけで、格段にエネルギー消費を削減することが可能となる」と紹介。さらに、「このような取り組みを通じ、エネルギー70%、資源70%、食料70%の自給率を実現し得る国へと転換することが可能となる」と主張した。

加えて、教育については、「知識の細分化や社会の複雑化が進んでおり、全体像を把握することが困難になってきている」「教員の均質化が進んでおり、また、専門性も不足している」との問題点を指摘したうえで、解決策として「学校におけるICTの徹底利用、知の構造化が必要である」「企業等における実務経験のある社会人を大量に採用すべきである(将来的には1校に3人、全国で10万人)」と述べた。

最後に、今後わが国が目指すべき姿について、「国家モデルの転換が必要である。地球温暖化や高齢社会の深刻化、あるいは教育問題といった課題を解決することにより、若者も高齢者も生き生きと暮らせるような『プラチナ社会』を実現すべきである。そのためには、民力と政府の強烈な共鳴により、わが国が世界で一番住みたい国になるよう努める必要がある」と述べた。

【産業技術本部】
Copyright © Nippon Keidanren