日本経団連タイムス No.3016 (2010年10月14日)
連載記事

解説ISO26000〜社会的責任に関する国際規格<7>

−第5章、第7章の概要


解説ISO26000
〜社会的責任に関する国際規格〜
  1. ISO26000入門
  2. 序文、第1章〜第3章の概要
  3. 第4章の概要
  4. 第6章の概要(上)
  5. 第6章の概要(中)
  6. 第6章の概要(下)
  7. 第5章、第7章の概要
  8. 規格の普及促進および今後の課題

今回は、第5章「社会的責任の認識およびステークホルダーエンゲージメント」および第7章「組織全体への社会的責任の統合」について解説する。

第4回から第6回にかけて、3回にわたって解説した第6章「社会的責任に関する中核主題」は、組織にとっての課題が“What”というかたちで書かれているが、第5章と第7章は、いかにして(“How”)それらの課題を組織に統合し、行動を起こすかが述べられている。具体的には、(1)組織、ステークホルダー、社会の関係(2)ステークホルダーエンゲージメント(3)社会的責任に関する課題の特定(4)組織全体への社会的責任の統合(5)社会的責任と組織の影響力の範囲(6)民間のイニシアチブ・ツール――の6つの課題を取り扱っており、これらが分散して書かれている。

このうち、(1)と(2)のステークホルダー関連については第2回、(3)社会的責任の課題の特定については第4回でそれぞれ概要を説明している。今回は、(4)組織全体への社会的責任の統合および(5)社会的責任と組織の影響力の範囲について解説する。

■ 組織全体への社会的責任の統合

組織は、まず社会的責任に関する方向性を決定し、それを組織の統治、システムおよび手順に取り込む。次に、社会的責任に関連する活動のパフォーマンスを継続的にモニタリング(観察)する。

そして、組織は、モニタリングだけでなく、定期的にレビュー(全般的な見直し)を行い、パフォーマンスの改善方法を検討するとともに、社会的責任に関する組織の信頼性の向上を図る。その際、ステークホルダーとの対話や、民間のイニシアチブ・ツールの活用が有効とされている。

本規格は、マネジメントシステム規格ではないが、企業経営にとってはPDCAを適切に回すことが基本であることを考慮すると、既存のマネジメントシステムに、本規格の社会的責任に関する要素を取り込むことで対応できる。すなわち、CSRが経営の一環という考え方に相通ずるものがある。

■ 社会的責任と組織の影響力の範囲

組織は、その決定や行動を通じ、他の組織に影響力を行使し得るが、単に影響力があることをもって、責任を負うことにはならない。組織が他の組織の行動に対して責任を負うのは、組織が他の組織をコントロール(支配)している場合である。コントロールの形態には、資本関係、取引関係、融資関係などが含まれる。組織は、コントロール下にある他の組織の行動について、社会にネガティブな影響を及ぼさないよう、普段からデューディリジェンス(適切な注意)を払うことが重要となる。

次に、組織の影響力の範囲と、サプライチェーン/バリューチェーンの規格での位置付けについて説明する。企業を例にとると、下図のように、サプライチェーンは川上の取引(調達先)、バリューチェーンは川上、川下(販売先)の取引全体を指している。影響力の範囲には、取引関係のみならず、資本関係、雇用関係、貸借関係なども含まれるが、サプライチェーン/バリューチェーンのすべてを含むわけではない。

影響力の範囲とバリューチェーン
【政治社会本部】
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