日本経団連タイムス No.3018 (2010年10月28日)

海外インフラ整備の推進を提言

−アジア諸国などの持続的成長へ官民一体で貢献を


日本経団連では、海外でインフラ整備を推進することで、アジア諸国をはじめとする新興国の持続的成長に貢献していくという観点から、具体的なアクションを検討してきた。その一環として、19日、日本政府に対する提言「国際貢献の観点から、官民一体で海外インフラ整備の推進を求める」ならびに現在開催中の東アジア首脳会議に向けたメッセージ「アジアにおけるインフラ・プロジェクト推進に向けて」を取りまとめた。概要は次のとおり。

■ 国際貢献の観点から、官民一体で海外インフラ整備の推進を求める

インフラ整備にあたり、わが国は世界最先端の技術やノウハウを提供し、持続可能な経済成長に貢献するとともに、現地産業の活性化等を通じて、自らもともに成長することが重要である。他方、インフラ整備は莫大な資金を要するため、官民連携のパッケージを形成することが不可欠である。また、これに対応できるよう、ODAやその他の公的資金等の制度を抜本的に見直すことが求められる。さらに、円滑なインフラ整備を進めるためには、相手国の法制度整備、インフラ事業に携わる現地人材の育成等のソフト・インフラ整備を並行して進めることが不可欠である。
具体的には、次の5点を要望する。

1.官民連携によるトップセールスの展開

政府首脳と経済界のハイレベルミッションを派遣するほか、「パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」の下で、一元的に海外インフラ・プロジェクトを推進するよう求める。

2.相手国との政策対話の推進

経済連携協定の下に設置されている、ビジネス環境整備に関する小委員会等を活用し、わが国の技術やノウハウの優位性を訴えるとともに、関連国内法の整備、人材育成の推進を働きかけるよう求める。

3.新たなリスクテイク機能の整備

ホスト国における政策変更など、民間では負担できない大型リスクに対処するため、貿易保険やJBIC(国際協力銀行)の保証機能の拡充、柔軟化ならびにこれらの全面的な活用を求める。

4.アジア域内の標準化

インフラ輸出を促進し、わが国の優れた技術を移転するために、環境規制等に関する基準のアジア域内での標準化が不可欠である。

5.ODAの抜本改革

ODA予算の減額に歯止めをかけること、パッケージ型インフラを推進するために、JICAの海外投融資を早期に再開させること等を求める。

■ アジアにおけるインフラ・プロジェクト推進に向けて

世界経済の発展のためには、牽引役として期待されるアジア諸国の経済成長を実現することが重要であり、インフラを整備することが当面の課題である。インフラ整備にあたり、わが国経済界は官民連携(PPP)を含むあらゆる国際協力スキームを活用して、省エネ、低炭素技術をはじめとする世界最先端の技術やノウハウを積極的に提供し、アジア諸国における環境と両立する持続可能な経済成長の達成に貢献していく。そこで、アジア各国には、わが国経済界がその持てる力を最大限発揮して、海外インフラ整備に貢献していけるよう、協力と配慮を期待する。具体的には、(1)一貫した政策運営ならびにインフラ関連の法制度整備(2)省エネ法やエコポイント制度などの環境政策の積極的な導入(3)日本の低炭素技術による海外での温室効果ガス削減分をわが国の貢献分として評価する二国間オフセットメカニズムの導入(4)アジア域内での基準認証の標準化(5)公正な入札制度の構築――である。

【国際協力本部】
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