日本経団連タイムス No.3019 (2010年11月4日)

「日本国内投資促進プログラム」早期実行求め提言

−立地の魅力高める施策など提起


日本経団連は18日、「『日本国内投資促進プログラム』の早期実行を求める」を公表した。わが国経済は本格的な自律的回復には至っておらず、このまま国内の生産活動が停滞し海外生産比率が上昇した場合、今後5年間で約60兆円の国内需要(売上)と300万人規模の雇用機会が喪失する可能性がある。こうした状況を打開するには、デフレから脱却し、国内市場を活性化させるとともに、外需を内需に取り込むことで需要と投資の好循環を生むことが必要である。
政府は、企業の国内立地促進の観点から、11月に「日本国内投資促進プログラム」を取りまとめる予定。提言は、同プログラムに盛り込むべき事項を整理したものである。
概要は次のとおり。

<今後半年から1年の間に実施すべき施策>

■ 立地の魅力を高める施策

(1)法人税改革

法人税の引き下げは、設備投資や対内直接投資の増加だけでなく、雇用者増や株価上昇を通じて個人消費を押し上げ、内需拡大にもつながる。来年度の税制改正において、税負担の実質的な軽減が伴うかたちで、少なくとも5%の引き下げを実現し、早期に法人実効税率を30%まで引き下げるべきである。

(2)為替の安定

急激な為替の変動に対しては為替市場への介入をためらわず、政府・日銀が一体となって政策を総動員すべきである。

(3)労働市場の整備

労働移動の促進やミスマッチ解消のため労働力需給調整機能の活用による労働市場の活性化が必要。また、「高度外国人材に対するポイント制」を来年度中に実施し、外国人材の活用に向けた環境を整備すべきである。

(4)都市インフラの整備

環境性能、耐震性、バリアフリー性に優れたオフィス・住宅の整備、低炭素型のまちづくりを推進するため、建築確認手続の迅速化・簡素化、容積率の緩和、老朽化建築物の建替え促進が喫緊の課題。また、PFIをはじめ各種PPPの手法を強化すべきである。

(5)物流の競争力強化

来年度中の保税搬入原則の撤廃に加え、オープンスカイの推進を含む国内拠点空港の機能強化、広域ポートオーソリティーの創設による国際戦略港湾の整備を早急に行うべきである。

(6)貿易投資の自由化

主要国とのEPAの締結を急ぐべき。また、環太平洋経済連携協定(TPP)への早期参加やEUとの経済統合協定(EIA)交渉の来春の開始を求める。同時にWTOドーハ・ラウンドの早期妥結が必要である。

■ わが国の強みをさらに高める施策

(1)研究開発の促進

先端的研究開発を推進していくため、研究開発促進税制を恒久化すべき。また、政府の研究開発投資額をGDP比1%超に高め、イノベーション創出基盤を強化すべきである。

(2)資源・環境制約への対応

戦略的な資源外交の展開や、低炭素型雇用創出産業立地推進事業費補助金など国内投資を促す予算措置、最先端の環境技術の普及促進に向けた施策等の展開が求められる。

<中長期的な視野から戦略的取り組みを開始すべき施策>

(1)税・財政・社会保障の一体改革

成長と国民の安心・安全の両立による経済の好循環を生み出すことが必要。税制抜本改革を断行し、社会保障費用の増加分は、消費税率の引き上げによって対応するとの原則を確立すべきである。

(2)人材の育成・確保

大学改革を通じた教育基盤の整備に加え、国際的な視野を持つグローバル人材の育成と活用を進めるべき。また、外国人材の確保を国家戦略として進めていく観点から、政府横断的な政策立案・遂行を担うための推進体制の整備とともに、受け入れのあり方の検討を早急に開始すべきである。

(3)社会保障分野の産業育成

遠隔医療を含むICTを活用した効率的な医療提供体制構築のための基盤整備、医療と介護の連携体制の構築に取り組むべきである。

【産業政策本部】
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