日本経団連タイムス No.3019 (2010年11月4日)

海洋政策の現状と課題で説明聞く

−海洋開発推進委員会


日本経団連は10月15日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会(元山登雄委員長)を開催した。当日は、内閣官房総合海洋政策本部の小野芳清事務局長から海洋政策の現状と課題について説明を聞くとともに、意見交換を行った。会合の概要は次のとおり。

<小野事務局長説明>

■ はじめに

わが国の領海・排他的経済水域の面積は世界第6位の447万平方キロメートルであり、国土面積の約12倍である。

2007年7月に海洋基本法が施行され、総合海洋政策本部が設置された。本部員は全閣僚であり、閣議と同じと言ってよい。現在の海洋政策担当大臣は馬淵澄夫国土交通大臣である。08年3月に決定された海洋基本計画には、基本理念や基本的施策が盛り込まれている。

■ 現在までの成果

2008年11月に、日本は大陸棚の延長申請を国連の大陸棚限界委員会に提出した。申請した7海域の総面積は国土面積の2倍の約74万平方キロメートルであり、認められれば、わが国が優先的に資源開発できる大陸棚が広がる。現在、小委員会で科学的な議論がされている。

領海や排他的経済水域の基点となる低潮線(潮が一番引いたときの海岸線)が重要である。2010年5月に低潮線保全法が成立し、7月に策定された基本計画では、保全区域を指定して、支障を及ぼすおそれがある行為を規制した。また、資源・エネルギーや水産資源の開発拠点とするため、沖ノ鳥島と南鳥島を特定離島に指定した。沖ノ鳥島は11年度中、南鳥島は10年度中に港湾の整備に着工する。

■ 今後の課題

政府が6月に策定した「新成長戦略」では、海洋資源の確保、海洋再生エネルギーの開発・普及の推進が盛り込まれた。現在、資源エネルギー庁が中心となり、石油・天然ガスやメタンハイドレートなどの開発を進めている。再生可能エネルギーについては、洋上風力発電の実証事業などが実施される予定である。

<意見交換>

続いて行われた意見交換では、「大陸棚限界委員会の委員に日本の地質学者はいるのか」との委員の質問に対し、小野事務局長は、「限界委員会の委員21名のうち日本人は1名である。利益相反になるため、実際に日本の提案を審査している小委員会の委員7名には日本人はいない」と回答した。

山脇康部会長が「広報面で、われわれも世論を喚起したい」と述べたところ、小野事務局長は「小・中学校の教育からやらねばならない。2011年度の小学校の新学習指導要領では、これまでよりウエートを置いた。『海猿』のような映画もよい」と応じた。

【産業技術本部】
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