日本経団連タイムス No.3020 (2010年11月11日)

前原外相との懇談会開催

−地域経済統合やインフラ整備、温暖化対策などで意見を交換


日本経団連(米倉弘昌会長)は8日、都内で前原誠司外務大臣はじめ外務省の政務3役との懇談会を開催した。経団連側から、米倉会長はじめ渡文明評議員会議長、副会長、副議長が出席し、地域経済統合、インフラ整備、地球温暖化問題等をめぐり意見交換した。
当日の大臣の発言要旨と懇談の模様は次のとおり。

■ 前原外務大臣の冒頭発言要旨

9月17日の大臣就任の記者会見で、経済外交の推進を掲げた。人口減少、少子高齢化、財政赤字に直面するなかで、わが国は持続可能な経済成長を達成することが不可欠である。そのためにも経済外交を重点化していきたい。

経済外交の3本柱は、(1)自由貿易体制の構築(2)インフラ輸出(3)資源・エネルギー・食糧の確保――である。

自由貿易体制は、二国間と多国間の双方で構築していくことが大切である。環太平洋経済連携協定(TPP)に関しては関係国との協議を始めることとし、そのためにも農業改革の全面的なバックアップを進める。日本が強みを持つ製品の関税の引き下げはわが国の競争力を高めることにつながるので、TPPの関係国間協議とともに、停滞している既存の経済連携協定交渉を加速化し、締結したい。

インフラ整備では、わが国は素晴らしい技術を有しながら、国内市場が縮小しているため、海外市場に目を向ける必要がある。アジアには向こう10年間に8兆ドルのインフラ需要があるので、ODAの充実、官民連携のスキーム(PPP)、JICAの海外投融資再開などあらゆる手段を講じてインフラ需要を取り込んでいきたい。

なお、在外公館を通じて日本の強みを活かせるインフラ・ニーズを吸い上げる部署を省内に設置した。経団連にも対応窓口を設置してもらい、頻繁かつ緊密に連携し、官民連携でインフラ需要を獲得していきたい。

資源・エネルギー・食糧確保では、調達先の多様化を図りたい。最近、インド、ベトナムとはレアアースの共同開発で合意した。その他の国とも共同開発を進め、経団連とも連携して多様化を進めたい。

発言する米倉会長(右)と前原外相

■ 意見交換

経団連側

TPP交渉参加に向けて前原大臣のリーダーシップに期待したい。インフラ整備で新興国の成長に貢献し、日本もともに成長したいと考えている。また、COP16(気候変動枠組条約第16回締約国会議)での京都議定書の単純延長には賛成できない。CO2削減に貢献する企業にペナルティーを課す政策も企業を海外に追いやることになると懸念する。

前原大臣

TPPの関係国との協議とともに、二国間のFTA・EPAの交渉を推進したい。インフラ整備では経団連と緊密に情報交換し、戦略を練りたい。京都議定書の単純延長では、経団連と同様の考えである。また、鳩山イニシアティブは、他国の共同歩調が前提であり、経済界に過度の負担をかけないよう海外に発信していく。

経団連側

日中韓FTAの推進も重要だ。また、原子力発電のみならず、石炭火力発電、送電線網整備でODAの活用を図ってほしい。

前原大臣

日中韓FTA実現に前向きに努力する。原子力発電へのODA供与は難しいので、その周辺インフラに充てていきたい。

【国際協力本部】
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