日本経団連タイムス No.3020 (2010年11月11日)

番号制度について説明聞き意見交換

−電子行政推進委員会


日本経団連は、10月28日、東京・大手町の経団連会館で電子行政推進委員会(内田恒二委員長、秋草直之共同委員長)を開催し、国際公共政策研究センターの田中直毅理事長から番号制度の必要性などに関する説明を聞き、意見交換した。田中理事長の説明概要は次のとおり。

■ 共通番号無くしてきめ細かな構造改革は不可能

国際公共政策研究センターでは、7月1日に「共通番号制度の早期実現に向けて」と題する提言を取りまとめ、各地でシンポジウムを開催している。

財政支出や金融緩和に景気対策効果が無くなってきている今、政府が取り得る政策は構造改革しかない。構造改革にはきめ細かい対策が必要であり、共通番号制度を導入しない限りその実現は不可能である。

高齢社会では、これまでのような申請主義を前提とした仕組みは無理である。例えば、現在は医療保険と介護保険が別の制度になっており、両方を受給する際の受給上限額が把握できない。共通番号があれば両方合わせた受給額が明確になり、社会的にみて受容可能な上限設定が可能となる。このようなシステムを導入しない限り、誰一人として安心できない。プライバシーの問題に対しては、自分の情報を自分で管理できる仕組みをつくることが技術的に可能である。

2010年度は、一般歳出予算に占める社会保障関係費が5割を超えるという象徴的な年だった。社会保障関係費に無駄があることは明らかだが、共通番号制度を導入し、例えば、医療保険の負担の分布、終末医療にかかる費用などのデータを明示して議論しない限り、国民的合意を得ることは難しい。

■ 番号制度を視野に入れて日本のサービス産業の効率化を

共通番号は、条件を付したうえで民間でも使うことを視野に入れて議論すべきである。日本のサービス産業が高コスト構造なのは、番号制度がないためである。マネーロンダリング防止や本人確認のために、日本の金融機関は多大なコストを負担している。

インドでは、国民一人ひとりに生体識別番号を付与し、食料補助切符の不正受給防止や、雑貨屋の店頭に読み取り機を設置してテレホンバンキングを実現しようとしている。一時的には、金融機関から共通番号の導入で余分な費用がかかってかなわないという反応が出てくるかもしれないが、日本の金融機関が海外と競合していくためには、番号制度を導入し、効率的なシステムを構築するしかない。

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続く意見交換では、「番号制度を実現するには、どのような働きかけが必要か」という委員の質問に対して、田中理事長から「経済界のなかで共通認識を得たうえで、反対派とも議論すべきである。個人情報保護問題などを盾にした声なき抵抗勢力もいるが、つながらない年金問題などにより、最近は反対派も腰が引けている。民間のこうした活動により、政府が導入しやすい環境が醸成されるだろう」とのコメントがあった。

また、当日は、提言案「豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める」を審議し、委員会として承認した。

【産業技術本部】
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