日本経団連タイムス No.3020 (2010年11月11日)

地球深部探査船「ちきゅう」による掘削について説明聞き意見交わす

−海洋開発推進委員会総合部会


日本経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、海洋研究開発機構の平朝彦理事、堀田平理事、東垣センター長、高井研ディレクターを招き、海底下7500メートルという世界最高の掘削能力を持つ地球深部探査船「ちきゅう」による掘削などについて説明を聞くとともに意見交換を行った。会合の概要は次のとおり。

■ 高井ディレクターの説明

今年9月から10月まで、「ちきゅう」が沖縄トラフの伊平屋(いへや)北フィールドを掘削するプロジェクトを実施した。

その結果、伊平北の水深1000〜2000メートルに、約2.5キロメートルの直径で、300度を超える世界最大の海底下熱水湖が発見された。また、世界で初めて、海底下から黒鉱(くろこう)という鉱物を採取することに成功し、熱水湖を形成する熱水活動で黒鉱が形成および保存されることが判明した。黒鉱には亜鉛、鉛、銅などの資源が豊富に含まれており、マスコミでは総額50兆円の価値があるとの報道もされた。

■ 東センター長の説明

「ちきゅう」には、海溝型地震である南海トラフ地震の発生帯を掘削する計画がある。地震や津波に対して防災・減災の処置を行うための技術を開発しており、水深2000メートルで海底下1000メートルまで掘削し、地震計や水圧計などのセンサーを設置してリアルタイムで地震発生帯の計測を行う。

また、下北沖の海底下で650メートルを掘削し、穴の中にCO2を隔離しようとしている。その海底下で、CO2をメタンに変え、エネルギーとして利用できる細菌の培養に成功した。

■ 平理事の説明

地球のマントルを掘ると、ダイヤモンドが大量に出てきて、大陸下と海底下のマントル全体が循環していることが証明できた。

尾鷲沖合の海底の熊野泥火山を調査している。この泥火山はリチウム鉱山であり、「ちきゅう」が掘削したところ、中心部にメタンハイドレート(メタンが氷状化したもの)が存在していた。

南鳥島や小笠原諸島の沖合には大量の海山が存在し、コバルトリッチクラストが覆っている。今後、その生成のメカニズムや、レアアースの存在について研究したい。

■ 意見交換

「政府の事業仕分けの影響はあるのか」との質問に対し、堀田理事は「影響はあるが、削減された予算のなかで『ちきゅう』を動かし、研究開発を維持している」と回答した。

「東シナ海と下北沖のいずれを先に開発すべきか」との質問に対し、平理事は「国際的な調整の時間を考えると、下北沖を先に開発して蓄積したノウハウを応用すべきである」と述べた。

【産業技術本部】
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