日本経団連タイムス No.3021 (2010年11月18日)

提言「地球温暖化防止に向け真に実効ある国際枠組を求める」公表

−国連気候変動交渉への産業界の期待を示す


日本経団連(米倉弘昌会長)は16日、京都議定書の「延長」に反対する旨の提言「地球温暖化防止に向け真に実効ある国際枠組を求める」を取りまとめ、公表した。

2013年以降のポスト京都議定書の国際枠組について、経団連は、昨年12月のCOP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)で合意された「コペンハーゲン合意」を土台に、単一の国際枠組が構築されることに強い期待を表明してきた。しかし、COP15以降の国際交渉では、先進国と途上国との対立構造が解消されていない。また、米国でも、中期目標を掲げた気候変動法案の成立の見通しが立っていない。さらに、EU(欧州連合)は、京都議定書の延長を意味する「第二約束期間の設定」に言及している。

そこで、経団連は、単一の国際枠組構築に向けた機運が高まっていない現状に危機感を持ち、提言を取りまとめた。これは、今年11月末からメキシコで開催されるCOP16に向けた提言で、日本をはじめすべての締約国政府への期待を示している。概要は次のとおり。

■ すべての主要排出国の単一の枠組みへの参加

京都議定書は、人類が温暖化防止に向けて初めて合意した重要な国際枠組である。しかし、米国の離脱や中国をはじめ新興国の急速な経済成長に伴い、削減義務を負う国のCO2排出量が世界の3割を切っている。また、世界全体の排出量は増加している。米中をはじめ、京都議定書で削減義務を負わない国々も包含する、単一の国際枠組を早急に構築しなければならない。

新たな枠組みの構築に関する国際交渉が難航するなか、京都議定書の第二約束期間の設定等を主張、容認する議論も散見される。しかし、いかなる形であれ、議定書がひとたび延長されれば、米国や中国など新興国が参加するモメンタムは著しく損なわれる。現在の国際枠組の固定化は、地球温暖化防止にも逆行する。日本政府には、すべての主要排出国が参加する単一の国際枠組にのみ合意する、という立場を堅持することを改めて強く求める。

■ 国際的公平性の確保

温暖化防止に向けた排出削減は急務であるが、厳しい目標水準が経済や雇用に与える影響は深刻なものとなる。国際交渉では、公平性確保の観点から、過去の削減努力や今後の削減余力が正当に評価される必要がある。特に先進国間では、削減に要する限界削減費用が同等となるよう交渉すべきである。

日本の削減目標については、国際的公平性、実現可能性、国民負担の妥当性、という3つの観点から、透明で国民に開かれた議論を行い、国民が納得できる中期目標を設定することが求められる。

■ 技術の重視

地球温暖化防止と経済成長の両立のカギを握るのは技術である。利用可能な最先端の低炭素技術を地球規模で普及させることで、温室効果ガスの大幅な排出削減を行うことが可能となる。他方、世界経済がさらに成長するなか、温室効果ガス排出量を2050年までに半減させるには、既存技術の普及に加え、革新的技術の開発が不可欠である。

途上国の削減努力支援という観点からは、ビジネスベースでの技術移転を促進する環境の整備が求められる。日本を含む先進国と途上国の対話や、公的資金による支援などを通じて、技術移転を阻害する障害を除去することが望まれる。とりわけ、途上国が技術を円滑に吸収できるよう、技術協力とあわせて、人材育成などに注力すべきである。

他方、国連CDM(クリーン開発メカニズム)を補完する制度として、日本の技術による海外での排出削減分をわが国の貢献分として評価する取り組みや、二国間オフセットメカニズムを構築しようとする取り組みを歓迎する。その早期具体化に向け、途上国との政府間協議の加速化や日本の取り組みに対する国際的な理解の醸成などが求められる。

日本産業界としても、今回のCOP16をはじめさまざまな機会をとらえ、世界の温室効果ガス削減に向けた同制度の重要性につき、国際的な認知の拡大と具体的なルールづくりに積極的に協力していく。

【環境本部】
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