日本経団連タイムス No.3021 (2010年11月18日)

提言「豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める」公表

−「番号制度の必要性」などを提示


日本経団連は16日、提言「豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める」を取りまとめた。同提言は、政府で「社会保障・税に関わる番号制度」「国民ID制度」など、番号制度の具体的検討が加速していることから、わが国における安心で豊かな国民生活の実現を目的に、制度の早期導入を確実なものとするよう公表したものである。

提言では、「はじめに」で背景を述べた後、「番号制度の必要性」として4点を挙げている。第1に国民本位の電子行政の推進、第2に年金問題を繰り返すことのないよう、国民が安心できる社会保障制度の確立、第3に社会保障と税を融合させるなど、社会構造の変化に即した政策のイノベーションを実現するための基盤、第4に官民で情報共有することによる国民利便性・効率性の向上と新しい産業やサービスの創出を挙げている。このうち、番号制度導入に伴う電子行政推進の効果は、過去の試算や諸外国の例などから、合計で年間3兆円以上を目指すことができると推計している。

また、番号制度を円滑に導入するためには、利用者である国民や企業が納得できるメリットを周知していく必要があるとしている。例えば、税と社会保障を融合させ、個々人の所得や家族構成に応じたきめ細やかな政策展開を可能とする「給付付き税額控除制度」の創設や、企業での従業員の年末調整の作業を、現状の紙と電子の処理を繰り返す非効率な処理でなく、シームレスでミスの無い効率的な処理に変えられることを図を交えて示している。また、本人の了解のもとで、過去に行った健康診断情報、診療情報、投薬の履歴などを厳格な管理のもとにデータベースに保管することで、次回の診療や緊急時に役立てるとともに、匿名化した統計データで医療のイノベーションも期待できるという例を示している。

さらに、番号制度の仕組みにかかる基本的な考え方として、第1に、税・社会保障分野に閉じることなく、広く電子行政に使用可能で、民間でも活用が可能な制度として構築すること、第2に、投資コストを最小化する観点から、既存の住民票コードや住基ネットを有効に活用すること、第3に、プライバシー保護に関して法制面、システム面の双方から万全の配慮を行い、アクセス状況などを監視する第三者機関の設置も検討すること、第四に、ICカードの活用で、より利便性の高いサービスを目指すこと、を挙げている。

最後に、個人の番号制度とともに、企業や事業所のコードを整備し、国・自治体・企業・事業所の情報連携による、業務改革を進めるべきと締めくくっている。

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日本経団連としては、提言で提案した番号制度の早期導入に向けて、政府への働きかけを強化するとともに、世論喚起を図るため、12月15日に東京・大手町の経団連会館で番号制度に関するシンポジウムを開催する予定である。

【産業技術本部】
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