日本経団連タイムス No.3022 (2010年11月25日)

APEC CEOサミット2010開催

−世界経済のさらなる発展へさまざまな角度から議論


横浜で開催されたAPEC CEOサミット

日本を含む21の国・地域から構成されるAPEC(アジア太平洋経済協力)は、世界人口の約40%に当たる27億人が暮らし、その貿易額は1300兆円と世界全体の貿易額の約44%を占める一大経済圏である(2009年時点)。1989年の発足以来、貿易・投資の自由化、円滑化など主に域内経済の発展に関する課題について議論を重ねてきており、今年はわが国が95年以来となるAPEC議長国を務めている。そうしたなか、日本経団連(米倉弘昌会長)は、横浜におけるAPEC首脳会議を含むリーダーズウィークの主要な公式行事のひとつとして、12日、13日の2日間の日程で、APEC CEOサミット2010を主催した。同サミットは、多数のAPEC首脳の参加を得て開催国の経済界が主催する公開のフォーラムであり、APEC首脳のメッセージやAPEC首脳会議が打ち出す方向性を幅広く発信していくうえで、注目されている。また、民間のビジネス・リーダーのメッセージをAPEC首脳に直接伝える貴重な機会でもある。

■ 14のセッションで活発に議論

あいさつする米倉会長

今回のAPEC CEOサミットでは、「世界の成長の原動力としてのアジア太平洋‐経済危機後の繁栄を目指して」をテーマに、14のセッションにおいてAPECエコノミーの首脳、経団連の幹部をはじめアジア太平洋地域の経済界の代表者、国際機関の代表、学識経験者など関係者が参加し、海外からの来訪者を含む900人以上の出席者を得て、世界経済におけるアジア太平洋地域のあるべき姿について、さまざまな角度から議論を深めた。

初日のセッションでは、新興国の台頭等で世界経済の構造が変化するなか、アジア太平洋地域が世界経済の成長センターとして引き続き中心的な役割を果たしていくべきとの見解が示された。

また、域内の一層の貿易・投資の自由化に取り組む必要があり、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現に向けて、TPP(環太平洋経済連携協定)やASEAN+6など域内のEPAの取り組みを推進していくべきであるとの積極的な意見が多く出された。

2日目のセッションでは、エネルギー・環境問題、イノベーションとIT、CSR等の分野で、メンバー国の間の具体的連携やプロジェクト推進について、各種の提案がなされた。また、域内における新興国の役割が拡大するなか、国・地域ごとの制度やルールの調和や統一を図り、ビジネスにとって一体的な環境を整備していくうえで、APECの果たす役割に高い期待が示された。さらに、来年以降のAPECのメンバーの拡大を求める声に対して、前向きに対応すべきとの提案もあった。

■ 日米中首脳のメッセージ

菅直人総理大臣は、「日本屈指の国際港・横浜で開かれる首脳会議を契機に、日本が『平成の開国』をできるよう努力したい。わが国はEPAや広域経済連携について高い水準を追求し、TPP推進のため国内環境を整備するとともに、早急に関係国との協議を開始する」と明言した。

また、来年の議長国である米国のバラク・オバマ大統領は、「米国が太平洋国家としての役割を強く意識し、この地域との貿易投資の拡大に努めたい。また、米国はTPPに参加し、アジア太平洋地域での米国の存在を示すとともに、同盟を通じた平和の維持等、民主国家のリーダーとしての役割を果たしていきたい」と述べた。

一方、中国の胡錦濤国家主席は、「中国をはじめとする新興国は世界経済の発展に貢献し続けるが、国内の格差など課題を抱えており、その解決には長期の努力が必要である。また、国際社会の一員として、グローバルな課題等に発展段階を踏まえた責任を果たしていくべきである。いかなる保護主義にも反対し、自由貿易を支持し、ドーハ・ラウンドの締結を推進すべきである」ことを強調した。


菅総理大臣

オバマ米大統領

胡中国国家主席

地域経済統合へ新たなページ

■ 今後に向けて

世界経済の成長軌道への回帰に向け、APEC地域の果たす役割と責任はますます大きくなっており、今回のCEOサミットを通じて、FTAAPの速やかな実現を目指すべきであることが、すべての参加者の間で共有されたことは最大の成果であった。

参加メンバーの自主性とコンセンサスを重視するという基本原則に基づくAPECの枠組みのなかで、今回のCEOサミットは、地域経済統合という目標に向けてより具体的な新たなページを切り開くことに大いに貢献したとの内外の評価を得て、2日間の日程を終えた。

【国際経済本部、国際協力本部】
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