日本経団連タイムス No.3022 (2010年11月25日)

ポスト京都の国際枠組のあり方と25%削減の影響について議論展開

−21世紀政策研究所が第73回シンポジウム開催


21世紀政策研究所のシンポジウム

日本経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は17日、東京・大手町の経団連会館で第73回シンポジウム「COP16の行方と25%削減の影響」を開催した。同研究所では、かねてより気候変動問題に関して検討を重ねており、今回のシンポジウムでは、ポスト京都の国際枠組のあり方に関する提言および日本が掲げる25%削減という中期目標が産業、家計、地域に与える影響をモデル分析した結果を、澤昭裕研究主幹が報告。また、坂根正弘・日本経団連副会長・環境安全委員長/コマツ会長、兼子昌一郎・日本基幹産業労働組合連合会中央副執行委員長、小西雅子・WWFジャパン自然保護室気候変動プロジェクトリーダーが登壇し、先の内容に関するパネルディスカッションを行った。シンポジウムには、経団連の会員代表者や研究者をはじめ400名を超える参加者が集まった。

まず、森田理事長が開会あいさつで、COP16における2013年以降の枠組み交渉で、米国や中国に排出義務のない京都議定書がそのまま延長される懸念があるという状況に触れ、「地球温暖化は一部の国の努力で解決できるものでは決してなく、すべての主要排出国を含めた、公平で実効ある枠組みを構築することが不可欠である」と述べた。また、「環境と経済の両立という視点を持って、諸施策の効果や国民負担について総合的に検討が行われ、有効な地球温暖化対策が進むことを期待する」と、国内対策に関して目指すべき方向性を述べた。

開会あいさつに続く澤研究主幹の基調講演では、シンポジウムに先立って取りまとめられた報告書「難航する地球温暖化国際交渉の打開に向けて」ならびに「温室効果ガス1990年比25%削減の経済影響−地域経済・所得分配への影響分析−」のポイントが報告された。国際交渉に関しては、「『Kyoto Killer』と呼ばれても、『Climate Killer』にはならない」ことが重要だとし、問題点の多い京都議定書の延長に妥協することは、温暖化問題の根本的解決から遠ざかることだと警鐘を鳴らすとともに、二国間・地域間での温室効果ガス削減の取り組みとして、途上国における幅広い削減行動をパッケージ化し、途上国の発展度合いに応じて二国間クレジット・メカニズムや直接的支援を組み合わせ、柔軟に途上国支援と温室効果ガスの実質的削減を実施する提案を行った。また、25%削減の経済影響については、都市部よりも、暖房需要と自家用車利用が多い寒冷地等の地方部に負担が大きいことや、エネルギーが生活必需品であるために、低所得者層ほど負担が大きくなるというモデル分析結果が報告された。

パネルディスカッションでは、米国や途上国を巻き込むための枠組みや国際交渉の進め方等について意見が交わされた。また、中期目標の国内影響については、「既に効率の良い日本が25%削減を目指すと、生産拠点は海外移転することになる」「GDPを大幅に伸ばしつつ、一方で温室効果ガスを25%削減するというのは非現実的」等の意見に対し、「高い排出削減目標により日本の環境技術が育つ」といった意見も出されるなど、活発な議論が展開された。

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