経団連タイムス No.3072 (2012年2月2日)

経団連労使フォーラム

米倉会長基調講演(要旨)


わが国ならびに世界経済の状況

東日本大震災から10カ月が経過したが、被災地では、今なお多くの住民が仮設住宅での生活を余儀なくされ、企業の事業環境や雇用情勢の改善の見通しは立たない。本格的な復興はまだこれからである。

国際経済情勢も不透明感が増している。歴史的な円高がわが国企業の輸出事業の収益を圧迫しているが、原因となる欧州の政府債務問題は終息していない。米国の景気回復は進まず、世界経済の成長を牽引してきた新興国経済も減速の兆しが見えている。

加えて、わが国は、巨額の政府債務、ほころびを見せ始めた社会保障制度、厳しい雇用情勢など多くの困難に直面しており、戦後最大の危機を迎えているといっても過言ではない。

民主導の経済成長の実現に向けた取り組み

わが国が難局を打開し、山積する重要課題を克服するためには、経済の牽引役である民間企業や経済界が知恵を絞り、行動を起こし、競争力を強化することによって、力強い持続的な経済成長を実現することが重要である。

経団連は、一昨年12月、民間が主導する競争力強化のためのアクションプランとして「サンライズ・レポート」を策定した。その中心となる「未来都市モデルプロジェクト」は、特定の都市や地域において、企業が大学、自治体とともにさまざまな分野の最先端技術を持ち寄って実証実験を行い、革新的なシステムやインフラを開発するという取り組みである。現在、「豊田次世代エネルギー・モビリティ都市」「西条農業革新都市」などのプロジェクトが進行している。

また、経団連は、昨年9月に震災後の状況を踏まえた「成長戦略2011」を取りまとめ、民間企業の競争力強化に向けた取り組みとして「産業クラスターの形成」を打ち出した。強力な産業クラスターを形成するためには、特区制度の適用や規制改革を通じた企業活動を阻害する要因の除去、投資や技術開発を促す魅力的なインセンティブなどが求められる。さらに、わが国が力強く持続的な成長を実現していくため、成長するアジアとの一体化や、観光・農業の振興を通じた地域の活性化に取り組んでいく。

グローバル化と人材育成

これからのわが国の産業界には、国際的なビジネスにおける問題を的確に把握し積極的に対応していく力や、異なる文化や背景を持つ人たちと問題解決を図れるような高いコミュニケーション能力を持つ「グローバル人材」が必要である。

継続的な外国語研修、異文化理解研修などはもちろん、海外経験が豊かな人材の採用などに加え、組織や業務の進め方などもグローバル経営に対応したかたちへの再構築を急ぐ必要がある。

グローバル経営と労使関係

グローバル化が進むと、オープンに議論ができる環境づくりや会社のビジョン・経営理念をグローバルに周知・共有するといった取り組みが大切になる。日本の企業の良き文化や慣行を広めながら、その国の特性や社会的な背景に十分に配慮することも、労使関係の安定・強化には欠かせない。また、企業の社会的責任を果たすことも重要である。

政治への期待

経済連携協定の推進、財政再建と税・社会保障の一体改革などの基本政策は、経団連の考え方と方向性を同じくするものであり、経団連としても可能な限りの協力を行っていく。

【日本経団連事業サービス】
Copyright © Keidanren