表紙イメージ 経済Trend ロゴ2011年10月号

資源政策戦略化の道筋/
ルセーフ政権下での新たな日伯経済関係展開への期待
今月の表紙: 城戸久務 作 「秋のみのり」 (ギャラリー史 提供)

巻頭言

二元論の陥穽
芦田昭充 (経団連評議員会副議長/商船三井会長)

特集
資源政策戦略化の道筋

ものづくりの国・日本にとって、資源の安定確保は極めて重要な課題である。日本の産業界は、近年の世界的な資源価格高騰のために厳しい状況に置かれながらも、高い技術力を背景に、課題克服の道を模索している。しかし、グローバルな資源獲得競争が激化するなか勝ち抜いていくためには、産官学一体の取り組みが求められる。資源を取りまく世界の動向を踏まえ、今後わが国が取るべき資源政策について議論する。
座談会
井手明彦 (経団連評議員会副議長、資源・エネルギー対策委員長/三菱マテリアル会長)
資源の長期的・安定的確保のためには、企業自らが自主開発、権益獲得の努力を重ねる必要があるが、グローバルな競争が激化するなかで、政府による協力は不可欠である。権益獲得のためには、巨額の初期投資に加え、さまざまなリスクが伴う。世界の資源メジャーに対抗するためには、官民一体の投資を行うことが望ましい。
田中久雄 (東芝副社長)
日本の企業にとって、現在の資源をめぐる状況は大変深刻である。資源価格高騰の要因として、新興国の経済成長による世界的な需給の逼迫、特定国や地域への偏在という構造的な問題に加えて、投機マネーの流入などが考えられる。企業による対策としては、サプライヤー(原料供給国、地域)を分散することでリスクヘッジを行ったり、省資源技術や代替材料の開発を推進している。
柴田明夫 (丸紅経済研究所代表)
今世紀に入ってからの資源価格高騰の背景には、中国・インドなど新興国の経済成長の加速がある。資源の供給制約が強まるなかで、資源外交、省資源技術や代替材料の開発が重要だ。濃縮されていない資源の資源化に向けて、リサイクルも推進する必要がある。そのためには、国民の意識改革を含め、政策・制度によるリサイクルシステム構築を目指さなければならない。
岡部 徹 (東京大学生産技術研究所教授)
日本はレアメタルを中心とする環境調和型の高度リサイクル技術において他国を圧倒しており、個人的には資源問題の解決に明るい見通しを持っている。問題は、そうした技術を継承し、発展させていくための人材育成である。あわせて、将来、資源国の資源政策に携わるようなエリート人材を日本に留学させ、人的ネットワークを強化することは、資源外交上の戦略として重要である。
榎戸教子 (司会:日経CNBCキャスター)
資源国による輸出規制の動きなどを踏まえれば、海外の資源権益の確保だけではなく、技術開発やリサイクルの促進も重要である。資源問題をきっかけに、日本の産業全体が転換期にあることを認識する必要があるのかもしれない。

●資源を取りまく世界の動向と日本への影響

●資源の安定調達に向けた対応策

●技術開発やリサイクルの促進による資源確保

●資源問題の解決をバネに新たな歴史を切り拓く

資源政策の展望と課題
西山 孝 (京都大学名誉教授/東京大学生産技術研究所シニア協力員)

特集
ルセーフ政権下での新たな日伯経済関係展開への期待

ブラジルは、2008年の世界金融危機からいち早く回復し、2010年には実質GDP成長率が7%を超えるなど力強く成長している。加えて、世界的な食糧・資源価格の高騰を背景に、一次産品の大供給国としての存在感を高めている。2014年にサッカーのワールドカップ、2016年にオリンピックといった世界的なイベントを控え、さらなるビジネスチャンスの拡大が期待される日伯経済関係の戦略的重要性について議論した。
特別寄稿
新たな日伯関係への期待感
マルコス・ベゼーハ・アボッチ・ガウヴォン (駐日ブラジル大使)
座談会
日本ブランドを活かして日伯の戦略的パートナーシップの確立を
飯島彰己 (経団連日本ブラジル経済委員長/三井物産社長)
ブラジルは、鉱物資源、エネルギー、食糧の安定調達の観点で非常に重要な供給国であると同時に、アジアに次ぐ新興国市場として注目している。日本企業は、欧米やアジアの企業の後塵を拝することなく、積極的にブラジル市場での事業展開に取り組むとともに、官民連携のもと戦略的パートナーとしての関係を構築すべきである。
宮永俊一 (三菱重工業副社長)
ブラジルは新しい技術を受け入れる受容力が大きい。インフラ整備についても、プラントや設備そのものよりも、交通システムや関連のサービス・ネットワークおよびスマートコミュニティーなど新しい展開に向けた社会インフラ、産業インフラ技術の供給を展開していきたい。日本企業としては、約束を守るなど日本人の美徳を忘れず、ブラジル国民の信用を得ることが重要である。
峯野敏行 (日本電気専務)
ブラジル連邦政府、州政府のインフラ計画に参画し、ICT技術による貢献をしていきたい。NECは、2014年のワールドカップに向け新たな競技場の建設が予定されているレシフェにおいて、次世代スマートシティー開発計画に参加しており、エネルギー、セキュリティー、ITプラットホームの三分野での貢献を検討している。
堀坂浩太郎 (上智大学名誉教授)
継続的な制度改革を通じ、政治、経済の安定を備えたブラジルは、国際社会での発言力や存在感が増している。今後の日伯経済関係の展開を考えるうえでは、二国間の利害関係よりも、日伯協力による環境や災害対策、貧困問題といったグローバル・イシューへの取り組みについて、両国の政府や企業経営者の間で対話を進めていくことが重要である。
讃井暢子 (司会:経団連常務理事)

●21世紀における日伯経済関係の戦略的重要性

●新しい協力の方向性

●新たな関係の構築に向けて

成長著しいブラジルとの戦略的経済関係の再構築に向けて
〜第14回日本ブラジル経済合同委員会を開催
大前孝雄 (経団連日本ブラジル経済委員会企画部会長/三井物産副社長)
歴史的観点からみたブラジルの経済展望
イラン・ゴールドファイン (イタウ・ウニバンコ銀行チーフエコノミスト)

復興に向けた日米パートナーシップ
マイケル・グリーン (米国戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日本部長)
震災からの早期復興に向けた人事労務部門の対応策
〜第106回労働法フォーラムを開催
(経団連労働法制本部)
〈解説〉
エネルギー政策に関する第一次提言
〜当面の課題と中長期的政策を提示
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/078/index.html
(経団連環境本部)
ルポ
農商工連携
− シリーズ第1回
新たなりんごの魅力を引き出し地域一体で青森の活性化を目指す
 あおもりシードルの製造・販売〜東日本旅客鉄道
(経団連産業政策本部)
ルポ
グローバル水準の研究・教育実現に向けた挑戦
− シリーズ第2回
グローバル・スタンダードの大学がグローバル人材を輩出する〜国際教養大学
(経団連社会広報本部)

● 経営者のひととき
ついに国宝・重要文化財の天守閣制覇
小池利和 (ブラザー工業社長)
● エッセイ「時の調べ」
デザインは公共のために
〜JR九州との列車づくり
水戸岡鋭治 (ドーンデザイン研究所代表取締役)
● 翔べ!世界へ―奨学生体験記
東南アジア地域研究という魅力
山本信人 (慶應義塾大学法学部教授/東南アジアメディア・コミュニケーション研究所所長)
● NEW FACE 新会員紹介
京三製作所
神明
田中食品

バックナンバー・定期購読のご案内


日本語のホームページへ