経団連の最近の動き

(1996年6月)

「経団連インフォメーション」の記事より


日米が目指すべき方向とは、何か
−第33回日米財界人会議−

日米両国の民間経済人が年に一度集まり、「日米財界人会議(日本側議長:小林 富士ゼロックス会長、米国側議長:ファイツ キャタピラー社会長)」が、7月8日から10日まで、東京で開催される。今回で33回目となる同会議では、戦後半世紀を経、日米のビジネスマンがグローバルな視点に立って新たな協力関係を模索すべく、「成長が期待されるアジア市場で日米はどのような役割を果たすべきか」、「日米の企業慣行の違いを踏まえ競争政策のハーモナイゼーションをどのようにはかっていくべきか」、「産業協力が進展する中、両国への市場アクセスをどのように改善すべきか」等をテーマに、意見交換を行うことにしている。
なお、9日午前中全体会議では、モンデール 駐日米国大使が来賓として講演するほか、豊田会長が「日本の政治・経済の現状と課題」と題するスピーチを行なう予定である。

経団連の広報戦略について検討

広報委員会(委員長:関本副会長)では、6月17日に広報委員会を開催し、規制緩和、税制改革や首都機能の移転など、経団連の重要政策課題に対する今後の広報戦略について意見交換を行った。
当日、経団連のさまざまな広報課題の優先順位と広報手段について、戦略的に検討を行う必要性が指摘されたのを受け、広報委員会では、企画部会(部会長:張トヨタ自動車専務取締役)を再編してより機動的な組織とし、経団連としての全体的な広報戦略を検討することとしている。

第15期中教審「審議のまとめ」に対し、経団連の意見を提出

経団連では、去る3月に創造的な人材の育成に向けて、教育制度のあり方や企業の果たすべき役割について提言を取りまとめている。今般、中央教育審議会より、1年余の検討結果としての「審議のまとめ」に対して、書面での意見提出の要請があり、経団連としての意見を今週中に提出する予定である。
意見では、「審議のまとめ」における、主体的に判断する能力など「生きる力」を学校・家庭・地域社会の連携の中で育成するという、今後の教育に対する基本的方向は、去る3月の提言の認識と同じであり、評価する一方、提言で指摘している創造的な人材育成のための施策を実施するよう申し入れることとしている。

総会屋等への対応について警察庁から呼びかけ

6月18日開催の理事会にて、林・警察庁暴力団対策部長から、株主総会を控え、総会屋等の反社会勢力からの要求に対しては断固として対処しこれを排除するよう呼びかけがあり、その後豊田会長より会員各位に対し、経団連「企業行動憲章」の精神に鑑み然るべく対応頂くよう要請があった。

規制緩和の一層の推進に向けてアンケート調査とシンポジウムを実施

規制緩和の着実な前進を図るには、政府の『規制緩和推進計画』を拡充するとともに、民間が規制緩和の成果を活用し、新産業・新事業を興していく必要がある。
そこで、経団連では、来年3月の『規制緩和推進計画』の改定に向け、10月に本年度の規制緩和要望を取りまとめることにしている。現在、全会員を対象にアンケート調査を実施中(〜7月19日)であり、ご協力をお願いしたい。
また、7月2日には、経済広報センターと共催で「規制緩和の経済効果に関するシンポジウム」を開催し、行政改革委員会規制緩和小委員会の宮内座長から規制緩和の重点課題等につき説明を聞くとともに、主要経済官庁から、予測されるビジネスチャンスや市場規模等の経済効果について説明を聞く。皆様のご参加をお待ちしている。

「企業人政治フォーラム」を設立

わが国において構造改革をなし遂げることは喫緊の課題であり、そのためには、政治の英断とリーダーシップが不可欠である。しかしながら、実際の政治は、多くの企業人からみて、決して満足できる状況にはない。そして、国民の政治に対する不信感は強く、最近の選挙における投票率の低さはその証左ともいえる。
政策本位の政治を実現するには、まず実際のビジネスに精通した企業人が政治家との対話を重ね、ブレークスルーを切り拓いていくことが重要である。
経団連は、5月28日の定時総会で「企業人政治フォーラム」(会長 川勝堅二評議員会副議長、政治・企業委員会委員長)の設立を決定し、企業人と政治家とのコミュニケーションを深めていくこととした。より多くの企業人が同フォーラムに参画し、企業人の声を政策に反映していくことが強く望まれる。

首都機能移転 −いよいよ移転先候補地の選定へ

「国会等の移転に関する法律」の改正案が6月18日、参院にて可決、成立した。本改正案成立により、首都機能の移転先候補地を選定する「国会等移転審議会」が近く設置され、今後2年程度の時間をかけて首都機能の移転先候補地を選定することとなる。
経団連では、こうした動きを受けて、首都機能移転推進委員会(委員長 河野俊二氏)を中心に、各種の懇談会やシンポジウムの開催・協力、マス・メディアとの意見交換等により、経済界内部、さらには広く国民のコンセンサスが形成されていくよう、広報活動を推進する。また、首都機能移転後の東京圏に関しては、東京圏再整備の「グランド・デザイン」を策定し、災害に強い都市づくりを進めるとともに、企業・住民にとってより良い立地・居住環境を整備するよう関係方面に求めていく。

情報公開法要綱案について行政改革委員会で意見陳述

行政改革委員会(飯田庸太郎委員長)の行政情報公開部会(角田禮次郎部会長)は、4月24日、情報公開法要綱案を公表した。当会では、本誌No91(4/26号)で、同要綱案について会員企業・団体の意見・要望を募ったが、寄せられた回答に基づき、意見書『情報公開法要綱案に関する意見』を取りまとめ、6月10日の会長・副会長会議の了承を得て、6月14日同部会で意見陳述を行なった。
今般の意見書では、要綱案が、昨年12月の当会意見の趣旨(企業秘密の原則不開示、開示決定に不満がある場合の不服審査手続の整備等)を概ね採り入れた内容となっていること等から、要綱案を基本的に支持している。
その上で、10月に予定される同部会の最終報告の取りまとめに向け、不開示とされた情報を開示できる「公益上の理由」の明確化や他法令で非公開としている企業情報の不開示化等を要望している。さらに、情報公開制度の導入を機に、行政調査手続法や行政立法手続法を早期に制定することを提言している。

来年の「環境の年」を控え、環境アピールの策定等を決定

来年は、国連環境特別総会の開催、気候変動枠組み条約第3回締約国会議(2000年以降の地球温暖化問題への国際的な取り組みを決める)の日本での開催等が予定され、「環境の年」となるといわれている。
そこで当会では6月3日に地球環境部会を開き、北欧における環境税の実態調査結果を踏まえ、経団連としての対応を検討した。
調査結果としては、(1)北欧の環境税は財源調達の色彩が強く、成果が確認されていない、(2)デンマーク、ドイツ等では、産業界がCO2削減の自主計画を策定し政府と協約を結ぶ、あるいは自主宣言するといった、環境税に代わる新しい手法が採用されている、等が報告された。
経団連の対応としては、(1)地球環境憲章策定5周年を迎えたこともあり、産業界の環境問題への取り組み姿勢を明確にするため、地球温暖化問題、廃棄物問題・リサイクル、環境管理・監査を柱とするアピールを7月中を目途に策定・公表する、(2)アピール策定の参考とするため、6月中に全会員企業を対象に環境問題への取り組み状況についてアンケート調査を実施する、(3)年内を目途に地球温暖化問題について業界ごとに自主行動計画を策定する、等の方針を決定した。

第14回日本・インドネシア合同経済委員会を開催

日本・インドネシア経済委員会(委員長熊谷直彦氏)では、カウンターパートであるKADIN(インドネシア商工会議所連合)との間で、6月5日〜6日、ジャカルタにおいて第14回日本・インドネシア合同経済委員会を開催した。
この会議では、(1)貿易、投資、人的資源開発など2国間での協力、(2)両国の規制緩和、(3)WTO、APECなどリージョナルおよびグローバルな枠組みでの両国の協力、の3つのテーマに関し、活発な意見交換を行った。
会議には、ハルタルト生産・流通担当調整大臣、アリウィボウォ商工業大臣、アブリザル・バクリーKADIN会頭、渡辺駐インドネシア大使が来席し、スピーチを行った。
また、会議開催に併せて、熊谷委員長ほかがトリ・ストリスノ副大統領を表敬訪問し、両国関係の一層の発展に向けて懇談した。

財政構造改革の推進と経済成長について検討

今後の財政運営の課題は、当面の景気を支えつつ、財政構造改革を推進することにある。
さる5月16日開催の4審議会(経済審、財政審、税調、社保制審)会長懇談会で、橋本総理は「国民負担率を抑え、財政構造改革を進めることが必要である」と述べた。
経団連では、これまでの財政金融委員会を発展的に改組し、さる5月の総会で、財政制度委員会(委員長:伊藤助成日本生命社長、共同委員長:福原義春資生堂社長)を発足させた。同委員会では、
  1. 財政再建と経済成長のバランス、
  2. 官民の役割分担の見直し、自己責任原則の観点からみた社会保障、公共事業、文教等個別分野の歳出削減策、財政投融資改革、
  3. 財政再建のための道筋、
  4. 予算編成のあり方
などについて検討をすすめる予定である。

技術による魅力ある国家づくりのため宇宙開発の一層の推進を要望

宇宙開発推進会議では、6月14日に総会を開催し「魅力ある国家づくりに寄与する宇宙開発の推進を望む」と題する提言を公表する。この提言は、昨年秋の科学技術基本法の制定、本年1月の新宇宙開発政策大綱の策定等により科学技術振興の気運が盛り上がるなかで、宇宙開発の一層の充実強化を働きかけるものである。
本提言では、日本を魅力ある国家にするためには、宇宙開発のような高度な先端分野を推進することが必要であることを基本的認識とし、
  1. 地球観測システムの構築などの重要プロジェクトの推進が必要であること、
  2. 宇宙産業の活性化を推進するための施策が必要であること、
  3. 宇宙予算の飛躍的な拡充(早期に5,000億円に倍増)が必要であること
を要望している。

豊田会長、会員企業にコーポレート・ベンチャーへの取組みを要請

先般5月28日開催の第58回経団連定時総会において、豊田章一郎会長は、新産業・新事業を推進するとの経団連決議を受けて、全会員企業に対し、少なくとも1社以上のベンチャー企業を立ち上げることを呼びかけた。
そこで、新産業・新事業委員会では、全会員企業代表者に対して、書面にて豊田会長の呼びかけにつきご報告するとともに、既にコーポレート・ベンチャーを行っている、あるいは計画がある場合には、その関連資料の送付方をお願いした。

第58回経団連定時総会における豊田会長挨拶〔抜粋〕

1996年5月28日
〔略〕
(創造的な企業活動の展開)
以上、わが国の構造改革の重要テーマとして、規制の撤廃・緩和、税財政改革、首都機能の移転を中心にお話を申し上げましたが、経済構造改革の担い手は何と申しましても企業でございます。
私は、日本企業のポテンシャリティには極めて高いものがあると信じており、われわれ企業経営者が先頭にたって自己革新と挑戦の気概を持てば、必ずや新たな成長を実現することが可能であると存じます。そのためには、多様化する消費者ニーズに対応した、新しい商品やサービスの開発・提供や技術・研究開発の促進などにより事業の競争力確保に努める必要がございます。また、産業の空洞化を回避し、新たな雇用を生み出すためには、新産業・新事業の創出・育成の環境整備が急務であります。企業としての努力は勿論、規制緩和を通じた事業機会の創造、ストック・オプションの導入、資金調達環境の整備などの政策的課題についても、積極的に働きかけていく所存であります。
私としましては、この機会に、会員各社で少なくとも一社以上のベンチャー企業を立ち上げ、雇用の増大、経済の活性化を図って頂くようお願いしたいと存じます。
〔以下略〕

インターネットでの景気動向に関する情報提供を開始

景気動向専門部会では、毎月、日銀及び関係省庁(通産省、経企庁、労働省、大蔵省)より最近の景気動向につき説明を聴取するとともに、意見交換を行っている。従来はこの概要を「経団連くりっぷ」にてお知らせしてきたが、景気関連の情報をより詳細かつタイムリーに提供すべく、6月14日よりインターネットにて同会合の概要を公開することとなった。奮ってご利用下さい。
(http://www.keidanren.or.jp/のニュースのコーナー)。


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