経団連の最近の動き

(1996年11月)

「経団連インフォメーション」の記事より


「民間」の政策立案能力を高めるため経団連の政策研究所を設立

経団連はこれまで各委員会の提言等を通じて、産業界の考えを政府や世論に訴えるために種々の活動を展開してきた。社会が高度化・多様化する中で、当会に対しても理論的・実証的に、より一層掘り下げた意見・提言のとりまとめが求められつつある。
また一方、わが国では現在、従来の「官」(行政府)主導による政策立案から、立法府主導への転換が求められており、「民間」も政策立案を積極的に行っていくべきとの指摘がある。
そこで、経団連としても理論武装の強化を図り、政策推進能力を一層充実させるため、「21世紀政策研究所−魅力ある日本創造のために−」(仮称)の設立が検討され、さる11月19日の理事会においてその設立が了承された。
本研究所は、企業人はじめ内外の政治家、学者等によるグローバルなネットワークを構築し、柔軟性と効率性の高い運営を行うこととする。研究テーマ、組織・運営等の具体案については「設立準備懇談会」(座長:那須副会長)にて検討することとし、第1回会合を11月26日に開催した。研究所は来年4月を目途に設立する予定であり、会員各位のご支援、ご協力をお願いしたい。

創造的な人材育成に関する企業アンケート調査を実施中

創造的人材育成協議会では、創造的な人材の育成のために、教育分野にかかわる規制緩和等を関係各位に働きかける一方、各企業に対しては、多様な人材の受入れと創造的な人材育成の環境整備のために、採用のオープン化・多様化、企業内における柔軟な処遇・評価制度の構築等を呼びかけている。
そこで、現在、創造的な人材育成の環境整備に資する事項の各企業における取り組み状況を中心に、会員各社の人事部等関係部署に、標記アンケート調査への協力を依頼している(回答期限:12月13日)。

医療、介護に続いて、年金制度改革について提言を検討

財政制度委員会では、医療、介護の制度改革の提言に続き、年金制度改革について検討を進めている。
厚生年金、国民年金は、5年毎に「財政再計算」を行い、長期にわたる年金財政、給付と負担の関係などの将来見通しが示されており、最近では1994年に行われた。ところが、その将来見通しを作成する上での主要な前提条件と実績が大きく乖離しつつある。例えば、将来推計人口、標準報酬上昇率、運用利回りなど、保険財政の収入面を規定する数値が、いずれも前提を大きく下回りつつあり、その意味で、前回の財政再計算は、既に破綻していると言える。
そこで、同委員会では、財政再計算の早期見直しと情報公開を求めると同時に、公的年金、企業年金の位置づけと、基本的な改革の方向について検討を進め、12月には意見をまとめ、公表する予定である。

PRTR(環境汚染物質排出・移動登録)の制度化について検討を開始

PRTRは、(1)事業者が、環境汚染物質について、工場・事業場から環境への排出量や廃棄物等としての移動量を自ら把握し、(2)その結果を行政に報告し、(3)行政はそれを何らかの形で公表する、という仕組みであり、アメリカ、イギリス、オランダ等が既に制度化している。
本年2月、OECDは加盟各国に対してPRTRを適切に導入すべしとの理事会勧告を行い、3年後に加盟各国が取り組み状況を理事会に報告するよう求めた。
わが国では、環境庁と通産省がそれぞれの立場から制度の導入を目指し、検討を開始している。
経団連では、環境安全委員会の大気・水質等タスクフォース(座長:樋口三菱化学常務)において、産業界の立場からPRTR制度のあり方を検討する。

Up with People“ふれあいツアー '96”との交流会を開催

海外事業活動関連協議会(CBCC)では、従来より草の根レベルでの若者の国際相互理解に寄与すべく、国際教育団体 Up with People(本部:米国コロラド州)への支援を行なっている。今般、世界17カ国、53名の若者が来日し、国内4都市において地域の人々との「ふれあい」をテーマに交流活動を行ったのを機に、11月19日、経団連会館において Up with People との交流会を開催した。歌とダンスによる若くエネルギッシュなショーパフォーマンスの披露や交流は、国際感覚を身につけた若者の魅力を感じさせるものであった。
当日挨拶に立った豊田経団連会長は「是非多くの日本の若者に参加してもらいたい」と述べ、Up with People のベルク名誉理事長からは「日本の若者が一緒にアジア各国をまわることは、アジアとの強い絆を結ぶことにもつながる」との発言があった。

新しい企業行動憲章の検討状況

企業行動委員会(委員長:那須翔副会長、共同委員長:鈴木敏文イトーヨーカ堂社長)では、企業行動憲章部会(部会長:小野敏夫日本電気専務取締役)を設けて、91年に発表した「企業行動憲章」の見直し作業を進めている。新しい憲章は、(1)改定の理由等を述べた前文、(2)本文、(3)本文の各項目を具体例なども含めて解説したマニュアル編の3つの柱から構成することになった。部会では、
  1. 会員への周知徹底を図りやすいよう、本文は出来るだけシンプルにする、
  2. 「べからず」集ではなく、21世紀に向けた新しい企業行動のあり方を示した前向きな内容とする、
ことなどに配慮しながら、今後さらに議論を進め、11月末までに部会としての結論をまとめる予定である。

OECD、外務省、通産省とともに規制制度改革シンポジウムを開催

先進諸国が、産業の空洞化、失業率の向上など直面する諸問題を解決し、持続的な経済成長を実現するためには、貿易の促進、新産業の発展、新技術の導入などが必要である。経団連では、それらの環境整備のために、規制制度改革を内外に訴え続けてきた。
一方OECDにおいても、昨年5月より、2年間の計画で本件についての多面的な分析プロジェクトを開始しており、規制制度改革は国際的なコンセンサスとなりつつある。
今般、当会では、内外の専門家、経済人を招き、各国の規制制度改革の推進に寄与するために『規制制度改革東京シンポジウム』を、OECD、外務省、通産省との共催により12月2日(月)ホテルオークラ(東京)にて開催する。

CBCC対米調査ミッションを派遣

海外事業活動関連協議会(CBCC)では、海外で事業を営む日系企業の現地化を促進することを通して、わが国と諸外国との関係を深めるための活動を行っている。1991年以来これまでに5回コミュニティー・リレーションズ活動に焦点をあてた対米調査ミッション(団長:立石信雄CBCC副会長)を全米各地(合計17州)に派遣し、在米日系企業、在米欧州企業ならびに米国企業の地域貢献活動の現状について調査・比較するほか、日本からの直接投資に対する現地コミュニティの期待等について意見交換を重ねてきた。
本年も以下の要領でミッションを派遣するので経団連、CBCC会員企業には是非ご参加いただきたい。

「規制緩和推進計画」の改定に向け18分野886項目の規制緩和を要望

政府は、「規制緩和推進計画」に沿って順次、規制緩和措置を講じている。同計画は、毎年度末に改定されるが、来年3月が最終改定となる。
そこで、経団連では、この機会に『計画』の大幅拡充を図るため、今年7月に全会員企業・団体を対象に行ったアンケート調査を実施し、その結果に基づき、10月28日の行政改革推進委員会(委員長:今井副会長)において、18分野886項目からなる『規制の撤廃・緩和等に関する要望』を取りまとめた。
この要望意見については、委員会終了後、豊田会長、今井副会長、飯田亮委員長代行が橋本総理に直接建議したほか、11月1日には飯田亮委員長代行が、行政改革委員会の飯田庸太郎委員長に手交し、実現方を要望した。

訪南部アフリカ経済ミッションを派遣

東アジアを中心とした開発途上国が顕著な経済発展を遂げている中、アフリカ諸国は取り残され、様々な困難に直面している。このような状況にあって、わが国には、これまでアジアの発展に果たした経験を活かし、今後の対アフリカ協力についても積極的に取り組むことが求められている。
かねて経団連では、米国の民間団体アフリカン・アメリカン・インスティテュート(AAI)とアフリカ諸国との間で、日米アフリカ3極会議を開催し、日米による対アフリカ協力の方途を探ってきた。この度、訪南部アフリカ経済ミッション(団長:笠原中東アフリカ地域委員長)を派遣し、ナミビアで開催の第3回日米アフリカ3極会議(12月4〜5日)に参加するとともに、南ア、ボツワナを訪れ政府関係者等と意見交換する予定。
○ミッション期間:11月26日〜12月8日

新たな時代における教員養成のあり方に関して教育職員養成審議会で意見陳述

21世紀に向けた教育改革については、現在中央教育審議会等の各種審議会・委員会で審議・検討が行われているが、今般文部省の教育職員養成審議会(会長:蓮見東京学芸大学長)より、新たな時代における教員養成の改善方策に関して経団連への意見陳述の要請があった。そこで、創造的人材育成協議会では協議会メンバー中心にアンケート調査を行うとともにこれをベースに、
  1. 21世紀初頭に重要視される人材・能力、
  2. 必要とされる新たなリテラシー、
  3. 望ましい教員の資質・能力、
  4. 新たな時代における教員養成への要望、等
についての考えを取りまとめ、11月12日の同審議会において和田常務理事より意見陳述を行う予定である。

橋本自民党総裁に、抜本的な構造改革の断行を要望

10月28日、豊田会長と今井副会長、飯田行政改革推進委員長代行が、首相官邸に橋本自民党総裁を訪問し、リーダーシップを発揮して組閣を行い、規制の撤廃・緩和、税制・財政構造の抜本改革を断行するよう申し入れた。
これに対し、橋本総裁からは、「政権が発足した際には、決意をもって行革を含む諸々の政権課題を、しっかりとした手順を踏んで実現したい。経済界からも強力な支援をお願いする。」との発言があった。
また、「中央省庁改革を進めるにあたっては、しっかりとした事務局の設置が重要であり、民間からも協力を得たい」との発言があった。

接続ルールを中心に通信市場における競争促進に関する意見を取りまとめ

さる9月20日、電気通信審議会接続の円滑化に関する特別部会より「接続の基本的ルール案」が公表されたのを受け、情報通信委員会通信・放送政策部会では、上記ルール案について検討した。その結果、「通信市場における競争の促進に向けた課題」と題する部会意見を取りまとめ、10月30日、電通審特別部会に提出した。意見のポイントは以下の通り。
  1. 「接続の基本的ルール案」は本年1月の経団連見解(「今後の情報通信市場のあり方に関する見解」)に概ね沿った内容であることを評価。
  2. より競争促進的なルールとするためには、接続料金の算定にあたって、特定事業者(現状ではNTT)自らコストの合理化に取り組むようなインセンティブを与える仕組みが必要である旨主張。
  3. 併せて市場原理に基づく競争に向けたスケジュールの明示を要望。

日米経済ハンドブックを刊行

経団連では、本年3月、日米関係を冷静かつ公平に議論するのに資するよう「日米経済ハンドブック」を内部資料として作成したが、この度、和英対訳の改訂版を制作、ジャパンタイムズ社から出版した。今回の改版では、ほとんどのグラフを含め和英対訳としたため、産業ごとの日本経済の現状を対外的に説明する場合の参考資料としても極めて有用であると考えている。本書は次週より大手書店の洋書コーナーを中心に販売されるが、下記問合先においても受託販売を行っているのでご利用いただきたい。(定価 2,060円)
〔お申込み先:アメリカ・カナダグループ 伊豆 FAX:03-5255-6231〕


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