経団連の最近の動き

(1997年6月)

「経団連インフォメーション」の記事より


原子力政策のあり方 ―提言

動燃事故を契機に、国民の原子力政策に対する不信感が高まり、原子力立地問題、プルサーマル実施問題、使用済燃料の貯蔵問題等当面の原子力政策にも支障が及ぶ事態にいたっている。
目下、原子力委員会に高速増殖炉(FBR)懇談会が設置され、本年2月以降、FBRの今後の開発のあり方について議論が行なわれている。この夏に中間報告が、年末までに報告書が出される予定になっている。
また、これまで核燃料サイクルの研究・開発を担ってきた動燃事業団については、その組織・体制上の問題が指摘され、動燃改革検討委員会において抜本的改革について議論がなされており、7月に委員会案が示される見込みである。
そこで、経団連資源・エネルギー対策委員会では、わが国のエネルギーの安定供給における原子力の重要性に鑑み、現状の早期打開とFBR開発路線の堅持を訴えるとともに、国に対してより積極的な対応を期待する旨の提言を近々提出する予定である。

国際契約届出制度の廃止について

先の通常国会で独占禁止法が改正され、6月18日に公布されたが、これにより持株会社の解禁とともに、国際契約の届出制度が全廃され、公布と同時に施行された(なお、6月17日以前に締結された契約については従前の届出が必要)。
旧独占禁止法は、事業者が国際的契約を締結した際には30日以内に公取に届出ることを義務づけていたが(旧第6条第2項)、経団連では、このような届出制度は他の先進国に例がなく、企業側、公取側双方の事務負担軽減のためにも早急に廃止すべきことを、規制緩和提言の中で求めてきた。今回の措置は、経団連の主張を全面的に入れたものであり、規制緩和の重要な成果の一つである。

経団連環境自主行動計画を最終発表し、二酸化炭素排出抑制を要請

環境安全委員会(委員長:辻副会長・日産自動車会長)では、産業界による環境対策への自主的かつ積極的な対策として、産業毎の環境自主行動計画の策定を働きかけてきた。昨年12月17日に29業種について中間的に発表したが、今回、7業種を追加し、合計、36業種・137団体による行動計画を最終発表した。追加された7業種は、石灰石鉱業、セメント、紙パルプ、住宅産業、石油、チェーンストア、不動産である。
経団連の自主行動計画は、今年度の環境白書では、2個所計4ページにわたって紹介されるとともに、UNEP(国連環境計画)やOECDからも高く評価されている。
本計画は当面、毎年レビューすることとしており、第1回目は来年夏頃実施する。
なお、今回の発表と併せて、「産業界としては2010年における産業部門、すなわち製造工程からの二酸化炭素排出量を1990年レベル以下に抑える」ことを決定した。
すでに今回の自主行動計画に参加している企業は計画を着実に実行するとともに、参加していない企業も、二酸化炭素の排出抑制に取り組むことが望まれる。

米国税制調査ミッションを派遣

税制委員会(委員長:前田副会長・東レ社長)では、5月のドイツ、フランス税制調査団の派遣に続き、現地時間の7月7日(月)から11日(金)にかけて、米国税制調査ミッション(団長:牧康一オリックス専務取締役)を派遣することとした。 今回のミッションでは、主としてレーガン税制改革の米国経済への影響やその教訓、企業活力と税負担の関係、法人税を巡る最近の動向等を中心に調査を行なうこととし、財務省や連邦議会関係者、シンクタンク、経済団体等を訪問し、意見交換を行なうこととしている。

予算の重点配分により「顔の見える」ODAを求む

6月3日、政府は、「財政構造改革の推進方策」を発表、今後3年間の集中改革期間においてODA予算を「前年度比10%マイナスの額を上回らない」旨閣議決定した。
経団連では、ODAは外交戦略上、重要な手段と認識しており、去る4月には「わが国政府開発援助(ODA)の改革に関するわれわれの考え」を発表している。そこで、6月18日に開催された自民党幹部との懇談会において、熊谷副会長・国際協力委員長より、ODA予算につき以下の考えを示した。
  1. 予算編成に際しては各省庁毎のODA予算をそれぞれ一律に10%削減するのではなく、むしろ中味にメリハリをつける必要がある。
  2. 「顔の見える」援助の推進という観点から、今後ますます重要になる無償資金協力、技術協力は削減すべきではなく、むしろ日本の顔の見えにくい国際機関への拠出ならびに有償資金協力については、ある程度の減額もやむを得ない。
今後とも、経団連としてODA改革ならびに、ODA予算の重点配分化の実現に向けて政府に働きかける予定である。

第16期中教審「審議のまとめ(その二)」に対し、経団連の意見を提出

中央教育審議会では、一昨年来、21世紀を展望した教育のあり方を検討してきており、5月30日に、個性尊重を基本的な考え方とする「審議のまとめ(その二)」を公表した。
経団連では、中教審からの書面による意見提出要請に対して、「審議のまとめ」の基本的な考え方と、大学・高校入試の改善、中高一貫教育の選択的導入等の提言事項に関しては、昨年3月に提言した「創造的な人材の育成に向けて」の認識と一致しており、評価する。一方、提言事項の早急な実現、学歴偏重社会の是正に向けた取り組みの推進、教育改革に対する社会各層の理解と協力の必要性を訴える意見を、6月12日に提出した。

「わが国宇宙開発・利用の課題」をとりまとめ

経団連・宇宙開発利用推進会議(会長:関本忠弘日本電気会長)では、さる6月11日の総会において、「わが国宇宙開発・利用の課題」をとりまとめた。同課題では、財政事情が厳しいなかでも、引き続きわが国は21世紀の戦略的国際的インフラである宇宙開発に力を入れることが重要であり、
  1. 宇宙産業が国際競争力を持つための施策(低コスト化のための環境整備など)、
  2. 国として推進すべき重要プロジェクト(衛星を利用した地球観測システムの早期構築など)、
の一層の推進が必要である旨指摘した。
今後、この課題を実現していくため、特に利用面を含めた広報活動に注力する予定である。
なお、名称も宇宙開発推進会議から宇宙開発利用推進会議へと変更した。

OECD多国間投資協定(MAI)の今後の交渉に対する意見を表明

OECD(経済開発協力機構)では、国際投資の円滑な流れを促進するため、ハイレベルかつ包括的な多国間の投資ルールを本年5月までに締結することを目指して、1995年から多国間投資協定(MAI)交渉を進めてきた。しかし、(1)協定内容をめぐり依然として各国の意見の対立が見られること、(2)米国の主張に基づき投資自由化交渉を併せて行なうこととなったこと等から、期限を1年延長することが、去る5月26、27日のOECD閣僚理事会で決定された。
わが国経済界としては、これまでの交渉により、ハイレベルの投資自由化、投資保護、効果的な紛争解決メカニズムが規定されたことを評価するとともに、交渉の早期終結を期待する立場から、近く同交渉に対する意見を取りまとめ、関係方面に建議することを予定している。

欧州統合問題研究会の発足について

1999年に迫った欧州通貨統合の行方、21世紀を見据えたEU加盟国の拡大など、欧州を巡る環境の変化には目覚しいものがある。しかし、これらの課題は、先日の英国やフランスの総選挙の結果からも明らかな通り、EUを構成する各国の政治・経済状況によって大きな影響を受けるものである。
ヨーロッパ地域委員会では、こうした欧州の現状について、企業・業界としての問題意識を交換し、また各界有識者の意見を取り入れながら、わが国経済界の欧州地域に対する関心を醸成、且つ経済界の側面から新たな日欧関係のあるべき姿を模索するために“欧州統合問題研究会”を発足することとした。

フランスにおける日本年
―日仏宇宙協力シンポジウムに参加

5月27〜28日、パリにおいて日仏宇宙協力シンポジウムが開催された。同シンポジウムは、「フランスにおける日本年」行事の一環として、日本の宇宙開発事業団とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が共催したもので、日仏両国の宇宙関係者240名が一堂に会した。
経団連宇宙開発推進会議としても、下村尚久・企画部会長(東芝常務)がセッションの共同議長をつとめたほか、主要メンバー企業が各セッションで発表するなど、宇宙開発に関する日本の産業界の活動や考え方を紹介した。
シンポジウム閉会にあたって下村部会長より、経団連では重要活動分野の一つとして宇宙開発に積極的に取り組んでいること、宇宙の技術がますます進歩する中で政府間協力とともに産業界ベースでも一層の国際協力が必要である旨発言した。


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