経団連の最近の動き

(1997年9月)

「経団連インフォメーション」の記事より


民活インフラ促進のための提言を検討中

開発途上国のわが国からの援助に対する期待は大きい一方、わが国では財政構造改革の一環として1998年度の援助予算が10%減となり、今後いかにメリハリの効いた、効率的な援助を実施してくかが課題になっている。経団連が本年4月に発表した意見書「政府開発援助(ODA)の改革に関するわれわれの考え」の中では、民活インフラを促進するための諸施策については別途提言する旨を述べており、これを受けて国際協力委員会では、現在とりまとめ作業を鋭意行なっている。
民間インフラ・プロジェクトとは、経済インフラ開発に民間資金を呼び込むものであるが、これらプロジェクトには複雑かつ多岐にわたるリスクが伴う。本提言では、民間ではカバーできない周辺インフラや環境関連施設の整備についてODAを組み合わせ、いかに日本として途上国のニーズに応えていけるかを探る。同時に、貿易保険および輸銀の民活インフラ支援のあり方についても検討する。

第2回日米安全保障産業フォーラムを開催
日米共同提言取りまとめへ

経団連防衛生産委員会では、防衛庁と米国国防省の合意と要請を受け、本年1月に米国のワシントンD.C.において、第1回日米安全保障産業フォーラム(IFSEC)を開催した。同フォーラムは日米防衛産業界の初めての正式な対話の場であり、冷戦後の状況に対応し、日米の防衛装備・技術協力を推進する上での課題について、日米防衛産業界のトップが民間の立場から意見交換を行なった。
第2回フォーラムは、10月30日、31日の両日、経団連ゲストハウスで開催し、日米協力推進のための課題に関する共同報告を取りまとめる予定である。同報告では、互恵的な日米協力推進のため、防衛装備をめぐる対話の促進、米国の防衛装備・技術のリリース、日本の輸出管理、知的所有権の保護等についての政策提言を盛り込む予定である。

橋本新内閣に望む
−規制緩和、法人税制改革、土地流動化

9月18日、豊田会長が改造内閣を発足させた橋本首相を官邸に訪ね、新内閣のリーダーシップの発揮を要望した。豊田会長からは、特に
  1. 規制緩和の推進(2000年12月までを対象期間とする新しい規制緩和の実行計画の策定、行革委員会に替わる「規制緩和推進委員会」の設置)、
  2. 法人税制改革の推進(法人実効税率の40%程度までの早急な引き下げ、改革プログラムの明示、実質減税)、
  3. 土地流動化・有効利用の推進(地価税、法人譲渡益重課の廃止、不動産証券化等の推進)
の3点について、実現方を要望した。
これに対し橋本首相は「われわれの気づかない現場で具体的にネックとなっている規制を指摘してもらいたい」「課税ベースの拡大を考えてほしい」等と応えた。経団連では今後、それぞれの課題について関係委員会を中心に検討し、引き続き働きかけを行なう。

COP3ならびに地球温暖化対策について近く経済界の見解を発表

本年12月に京都で開催される国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)に向けて、2000年以降の温室効果ガスの削減目標を決める政府間交渉が大詰めを迎えている。米国の温室効果ガスの削減目標が10月にも発表されると伝えられていることから、わが国においても、今月中にも削減目標の取りまとめが行なわれるものと見られている。
温室効果ガスの排出削減目標については、環境庁の研究会は、2010年において、1990年比で7%程度削減が可能であると主張している。推計すると、産業部門は15%程度の削減を想定しているものと思われるが、こうした数字は、現在の生産施設のリプレイス周期や省エネ型製品の普及速度、あるいはコストを無視しており、政策的な裏付けも経済合理性も欠く非現実的なものである。産業界としては、デンバーサミットで合意されたように、「現実的」で「衡平」な目標と政策の実現を働きかけていく必要がある。
経団連では近く、温暖化対策についての基本的考え方、各部門における対策の進め方、COP3の交渉に臨む政府への要望、等を取りまとめ公表する予定である。

環境汚染物質排出・移動登録(PRTR)制度の準備状況

経団連では、OECDが昨年2月にPRTR制度の導入を勧告したことを受けて、本年4月15日に「『PRTR(環境汚染物質排出・移動登録)制度』導入についての見解」を発表し、産業部門におけるPRTR制度は産業界が自主的に構築することを表明した。7月に大気・水質等タスクフォース(座長:樋口三菱化学監査役)の下に、PRTR作業部会(部会長:上杉日本化学工業協会常務理事)を新規に設置し準備を進めているが、本作業部会には、非会員団体17を含む43の業界団体が参加している。
これまでに対象物質約180の選定を終え、引き続き、実施マニュアル、データ集計ソフトの作成等を行ない、準備終了次第、わが国初の全国ベース・全産業ベースの第一回PRTR調査を実施する。今後の予定としては、年内に調査票を各業界団体に発送、来年3月中に回収し、6月を目処に各業界から提出されたデータを経団連として一本にまとめ公表する。

法人実効税率の40%への引下げを求める
「法人税制改革に関する提言」を発表

経団連では、9月11日に税制委員会(委員長:前田勝之助副会長・東レ会長)を開催し、標記提言を取りまとめた。
法人税制の改革は、わが国の経済活力維持、経済構造改革に向けて不可欠な課題でありながら、これまで毎年先送りされてきた。しかし、今年5月には「平成10年度税制改正で結論を得る」旨が閣議決定されている。
そこで経団連提言では、国税・地方税を合わせた法人実効税率(現行49.98%)を、国際水準並みの40%まで引下げ、企業の実質的な税負担を軽減することを最優先に、国税(法人税)・地方税(法人事業税、法人住民税)を一体とした改革を強く求めた。
これと併せて、租税特別措置、各種引当金をはじめとする課税ベース全般についても、踏み込んだ適正化を行なうことを打ち出した。
この他、連結納税制度の早期導入、年金税制・金融関連税制など法人関連税制の見直し策も盛り込んでいる。
経団連は、この提言をもとに、平成10年度税制改正に向けて総力を結集することとしており、会員企業・団体にも広く理解、協力を求めている。

「コーポレート・ガバナンスのあり方に関する緊急提言」を公表

コーポレート・ガバナンス特別委員会では、コーポレート・ガバナンスのあり方について検討を行なってきたが、9月8日の会長・副会長会議の議を経て、標記提言を公表した。
同提言では、監査役(会)機能の強化等について、
  1. 社外監査役の要件の厳格化、
  2. 社外監査役の法定員数の増員、
  3. 監査役の選任議案に対する監査役会の同意、
  4. 監査役が任期途中に辞任した場合の説明義務、
  5. 会計士監査の一層の充実、
を提案している。
他方、株主代表訴訟に関しては、
  1. 原告適格の見直し、
  2. 会社の被告取締役への訴訟参加・訴訟支援の容認等、
  3. 定款・株主総会の特別決議による取締役の損害賠償責任の免除・軽減、
  4. 経営判断の原則の規定への明記等、
を提案している。

「農業基本法の見直しに関する提言」を近く公表

政府は、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意など農業をとりまく内外の環境変化を踏まえ、1961年に制定された農業基本法の見直しを行なうべく、本年4月、総理大臣の諮問機関として「食料・農業・農村基本問題調査会」(会長:木村尚三郎東京大学名誉教授)を発足させて、鋭意検討を進めている。
これに対応して、経団連では、経済界としての考え方をまとめるため、昨年度より農政問題委員会において検討を進めてきたが、今般、その検討成果を9月16日の理事会において、標記提言を取りまとめる予定である。
本提言では、産業としての農業の確立を図るため、わが国農政の抜本改革の方向性を示すほか、食料政策、離島・中山間地対策に関する基本的な考え方など、農政をめぐる諸課題に関し、幅広く指摘することにしている。

日本シンガポール・ビジネス・カウンシルを設立

豊田会長とシンガポール商工会議所連盟(SFCCI)のクエック・レン・ジョー会頭は、さる8月29日、経団連会館において、両国経済界の協力関係を討議するため「日本シンガポール・ビジネス・カウンシル(JSBC)」を設立することで合意した。
同カウンシルは、橋本首相が今年1月にシンガポールを訪れた際、ゴー・チョクトン首相に提案したのを受けて設立されたもので、開会セレモニーには両首相も出席した。
初会合では、タイの通貨問題、ミャンマー、ベトナム、ラオス等におけるビジネス拡大のための協力、シンガポールの文化政策などについて活発な論議が交わされた。同カウンシルとしては、第三国への共同ミッションの派遣、セミナーやフォーラムの開催などについて引き続き検討していくことになった。
次回会合は、来年末までにシンガポールにおいて開催する予定である。

「日タイ経済関係に関するアンケート調査」を実施

最近のタイにおける通貨不安および金融不安は、タイで事業活動を行なう日本企業に多大な影響を与えると思われる。そこで、経団連日タイ貿易経済委員会(委員長:瀬谷旭硝子社長)では、8月13日から9月1日にかけて、委員会メンバー93社・団体を対象に標記アンケートを実施し、タイ経済の現状や日タイ協力の現状および今後のあり方等について調査した(回収率44.1%)。その結果、半数以上のメンバーが、「産業構造の高度化等に成功すればまだまだタイ経済の高度成長は続く」と考えていることが明らかになった。また、変動相場制への移行については、6割超が「もっと早く移行すべきであった」と答えており、さらに約7割が、今回の通貨不安や経済再建策の実施により現地事業所の収益が悪化する恐れがあると答えた。

外国公務員贈賄問題ワーキング・グループを発足

OECD(経済協力開発機構)は、米国の主張を受け、外国公務員への贈賄を防止するための取組みを進めている。本年5月の閣僚理事会で、各加盟国が国内法でこうした贈賄行為を犯罪化することを条約により確保することが決定され、本年末までの条約締結を目指し交渉が開始された。現在、OECD事務局や欧米の主要国が作成した条約案をもとに、「外国公務員」「贈賄」の定義や、条約の発効要件などについて、議論がなされている。
本件は、企業の海外における事業活動に重大な影響を及ぼしかねない問題であることから、この度、経団連としても標記ワーキング・グループを設立することとなった。交渉状況をフォローするとともに、条約の内容につき詳細に検討し、適宜、経済界としての意見を表明していく予定である。


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