経団連の最近の動き

(2000年9月)

「経団連インフォメーション」の記事より


No.272 ( 9月29日発行)より

「次期中期防衛力整備計画についての提言」を建議

政府は、わが国の防衛力のあり方やその具体的整備目標を定めるものとして、5年ごとに、「中期防衛力整備計画」(以下、中期防)を策定している。現在の中期防は今年度が最終年度であり、現在、防衛庁では、「次期中期防衛力整備計画(平成13〜17年度)」(以下、次期防)の検討を進めている。そこで、経団連では、防衛産業・技術基盤の維持、強化の観点から、9月19日に標記提言をとりまとめ、政府等関係各方面に建議した。
同提言では、北朝鮮によるテポドンミサイルの発射等の安全保障環境の変化、防衛装備予算の減少や取得・調達改革の下での厳しい経営環境、国際的な防衛産業の統合等のわが国の防衛産業を取り巻く状況を踏まえ、次期防策定にあたり、

  1. 重点的に国産化すべき防衛装備・技術の明確化と研究開発費の増額、
  2. 技術基盤強化に資するプロジェクトの推進(ITを活用した情報共有基盤の構築、大型プロジェクトの推進)、
  3. 生産基盤の維持と企業努力が反映される取得・調達改革の推進、
  4. 国際提携のための環境整備、
等を要望している。

「日本・シンガポール自由貿易協定への期待」

わが国とシンガポールは、昨年12月の両国首脳会談での合意を受けて、自由貿易協定締結の可能性について両国の産官学による合同検討会で検討してきた。経団連としても、アジア・大洋州地域委員会の自由化タスク・フォース(座長:深田静夫 オムロン顧問)で、シンガポールとの自由貿易協定について検討し、「日本・シンガポール自由貿易協定への期待」をとりまとめ、去る9月27日のアジア・大洋州地域委員会で承認を得た。
この意見書では、日シンガポール自由貿易協定の締結に向けた交渉の開始への強い支持を改めて表明した上で、自由貿易協定が両国のビジネス環境の改善ならびに産業の競争力強化、さらにはアジア域内の経済関係緊密化に資する内容となることを求めている。また、併せて、自由貿易協定に積極的に取り組む前提として、わが国自身が市場開放および輸入拡大を進める決意を新たにすることを求めている。

企業人政治フォーラム定時総会・講演会・パーティーを開催

9月26日、企業人政治フォーラムは、2000年度定時総会を開催した。
定時総会に続く講演会には、深谷隆司・前通産大臣を招き、「前通産大臣−思いを語る」と題し、先の総選挙の結果を踏まえて、今後の日本の政治・政党のあり方等について話を聞いた。講演では、深谷・前通産大臣は、将来を展望した政策の重要性を訴え、次回総選挙での当選に向けた思いを語った。
また、定時総会後の記念パーティーには、保岡法務大臣をはじめ、約30名の国会議員の出席を得て、政治家と企業人との交流を深めた。

No.271 ( 9月22日発行)より

今こそ観光の重要性を認識すべき

観光は、約50兆円の経済規模と約420万人の雇用を提供する裾野の広い産業である。今後、経済的・時間的に余裕のある高齢人口の増大に伴い、21世紀の成長産業の一つになると期待される。また、地域資源を活用した観光振興が地域の活性化につながる一方で、観光が国際的な相互理解の増進に寄与する側面もある。
しかし現状では、邦人海外旅行者数1,600万人に対して、訪日外国人旅行者数は400万人に過ぎない。今後、観光関連インフラを整備し、観光の高コスト構造を是正するとともに、関係者が連携してわが国の観光振興に取り組む必要がある。
本年秋には、政府の観光政策審議会が、21世紀初頭における観光振興方策について答申する予定となっている。経団連としても、国土・住宅政策委員会において、わが国観光のあり方に関する提言をとりまとめ、10月17日の理事会に諮った上で、政府および関係方面に建議する予定である。

第5回アジア欧州ビジネス・フォーラム(AEBF V)について

来る9月29・30日の両日、ウィーン(オーストリア)にて第5回アジア欧州ビジネス・フォーラム(AEBF V)が開催される。アジアと欧州の経済交流を活発にすることを目的に開催される同フォーラムには、アジア10カ国、欧州15カ国から多数のビジネスパーソンが参加し、活発な議論が展開される。
今回のフォーラムでは全体会議に加えて7つのワーキング・グループ(投資・金融サービス・貿易・中小企業・IT・ライフサイエンス・インフラ)が設けられており、日本からも各ワーキング・グループへの参加を予定している。特にITワーキング・グループでは、島田・経団連情報化部会長(三井物産副社長)が共同議長として議論の進行役を務める。
なお、フォーラムで議論された内容は、10月にソウル(韓国)で開催される第3回アジア欧州首脳会合(ASEM III)に提出されることになっている。

No.270 ( 9月14日発行)より

日経連との統合について

21世紀に向けて民主導の活力ある経済社会を実現するために、経済団体の果たすべき役割はますます大きくなっている。特に、 近年の社会・経済情勢の変化に伴い、社会保障制度の改革等、日経連と共同で取組むべき課題が増えつつある。
他方、企業の合併等の再編が急速に進展し、近く、中央省庁の統合等も実現する予定であり、このような状況の下で、経済団体のあり方についても、改めて見直しが求められている。
そこで経団連では、日経連との統合によりこれまで以上に政策立案・実現機能を有した強力な総合経済団体を創設することを目指し、今月19日開催の理事会の議を経て、早急に両団体による共同検討のための組織を設置し、年内を目途に統合の具体的な構想をとりまとめる方針である。

商法改正に向けた本格的議論を開始
─法務省幹部と懇談

9月6日、法制審議会商法部会は、原則2002年の通常国会を目途に、会社法制の大幅な見直しを行なう基本方針を決定した。商法の全面改正については、保岡法務大臣も就任直後の7月に表明している。経済界は8月31日の産業新生会議や法制審議会商法部会で、立法化の体制を整えて、重要項目は来年通常国会で前倒して実現すべきであると働きかけている。
9月12日には、保岡大臣の呼びかけで、片田副会長、千速経済法規委員会共同委員長など経団連首脳や産業新生会議委員が集まり、保岡大臣、上田総括政務次官はじめ法務省幹部との間で、会社法の全面改正の進め方について意見交換した。経済界側からは、法制審議会は危機感と時代認識を持って、

  1. 株主代表訴訟制度の見直し、
  2. CPのペーパーレス化、
  3. 株式分割の際の1株当たりの純資産額規制の撤廃、
  4. ストックオプションの見直し、
  5. ITを活用した招集通知や議決権行使等、
  6. 種類株式の多様化、
  7. 株主総会の定足数の見直し、
  8. LLC/LLPの創設などの重要項目の改正、
実現に早急に取り組むべく求めた。これに対して保岡大臣は「立法化の体制を整え、全力でニーズに応えていきたい」と回答された。

大島文部大臣および同省幹部との懇談会を開催

9月13日、文部省からの申し入れに基づき、今井会長が出席して、大島文部大臣はじめ同省幹部との懇談会を開催した。懇談会では、教育改革の進行状況について説明をきくとともに意見交換した。
大島大臣は、「青少年の健全育成、学校教育の充実、地域の教育力の充実、高等教育改革、教育のIT化等を推進しているが、(教育改革国民会議等の議論を踏まえて)来年の通常国会で具体的に法案を提出したい。教育基本法についても議論せざるを得ない。」と述べた。また、産業界に対して

  1. 有害番組へのスポンサーの自粛、
  2. 社会人活用のための特別非常勤講師制度や教員の社会体験研修への協力、
  3. 父親の家庭教育への参加促進、
  4. 新規学卒者等の採用枠の拡大、
が要請された。
経団連側からは、グローバル化時代の人材育成、産業技術力強化に向けた大学改革、教育のIT化、起業家教育について要望するとともに、社会的道徳的側面からの教育についても意見が出された。特に高等教育については、社会のニーズに応じて大学が自由に学部学科の設置等が行なえるようにすることを求めた。

No.269 ( 9月 8日発行)より

プーチン ロシア大統領歓迎昼食会を開催

9月5日、経団連、日本商工会議所、経済同友会、日本ロシア経済委員会、ロシア東欧貿易会の共催でプーチン大統領歓迎昼食会を開催した。大統領は今井会長をロシアに招待し、会長は応諾した。さらに、大統領から、

  1. ロシア経済は着実に回復している、
  2. 法制度の整備を進めロシアに「統一された法的空間」を構築する、
  3. 日本企業が直面する問題を解決すべく全力を挙げる、
との発言があった。
日本側からは
  1. サハリン大陸棚天然ガス開発プロジェクト、カマズ自動車工場など日ロ経済協力の象徴的案件の着実な実施、
  2. 対ロ直接投資を阻害する税制、関税制度の是正、
  3. 日ロ共同プロジェクトへの国家保証の付与、
  4. ロシアの金融システムの整備、
  5. 極東貿易促進ファイナンススキームの構築、
  6. 日ロ合弁事業をめぐる紛争の早期解決、
などにつき大統領の理解と尽力を求めた。

新むつ小川原株式会社が発足

昨年12月の閣議了解に基づき、政府は巨額の債務を抱えたむつ小川原開発株式会社を清算し、新会社を設立することを決めた。この方針に基づき、8月4日、新むつ小川原株式会社が発足した(社長:永松恵一経団連常務理事)。
新会社は、旧会社からの資産を引き継ぎ、借入金に依存しないことを原則として、土地の一体的確保、造成、分譲などの事業を行なう。その際、わが国にとって重要な課題である環境、エネルギー、資源問題等の解決に寄与する官民のプロジェクトを誘致することで、用地分譲を着実に進め、株主に対して、株式の有償減資や配当というかたちで還元するよう努力する。
経団連でも、新設の「むつ小川原開発推進委員会」を通じ、官民プロジェクトの立地働きかけや新会社への人材派遣・斡旋、活動拠点の提供、土地賃貸収入の拡大、緊急時における資金の融通等を含む運営面での協力を行なう。

日独経済会議について

9月11日、デュッセルドルフ(ドイツ)において、「21世紀に向けての政治・経済の挑戦」というテーマで日独経済会議が開催される。同会議は、昨年10月からドイツ各地で催されている文化行事「ドイツにおける日本年」の最終行事として位置づけられており、ノルトライン・ウェストファーレン州首相、デュッセルドルフ市長、ヘンケル・ドイツ産業連盟会長、ならびに浅野外務省外務政務次官らが参加予定である。
経団連からは香西副会長(住友化学工業会長)が参加、「日本経済の展望と課題」について講演し、他の参加者とともにパネルディスカッションを行なう。
同会議には、在独日本企業やドイツ企業関係者はじめ約500名が聴講すると見込まれており、社会保障制度や経済構造改革、IT革命などについて日独双方からの参加者による意見交換が行なわれる。


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