経団連の最近の動き

(2001年11月)

「経団連インフォメーション」の記事より


No.323 (11月30日発行)より

韓国・全国経済人連合会首脳との懇談会をソウルにて開催

経団連は、日韓経済関係の促進を目的として、1983年以来、毎年、韓国の全国経済人連合会(全経連)との間で両団体首脳の相互訪問を実施している。今年は、11月26日〜27日、今井会長はじめ経団連首脳20名がソウルを訪問した。ソウルでは、金ガク中全経連会長、金大中大統領、張在植産業資源部長官など経済界、政府要人と会見し、日韓産業協力のあり方や日韓自由貿易協定(FTA)の推進方策を中心に懇談した。
全経連首脳との懇談会では、韓国側から、日韓FTAを実現するには、日韓貿易不均衡の是正、対韓技術移転の促進、日本の非関税障壁の撤廃を進める必要があるとの指摘がなされた。これに対して、日本側からは、

  1. 電機、電子、繊維、化学などの分野で両国企業は重層的な協力関係にある、
  2. 日韓FTAの推進により両国企業の国際競争力を高められる、
  3. アジアの先進国として日韓両国は域内経済を牽引すべきである、
との意見が出された。
懇談の結果、経団連と全経連は、中国の台頭や東アジアの自由貿易圏構想等を念頭に、包括的な日韓FTAの早期締結をめざし協力していくこととなった。
両団体の合意内容については、金大統領、張長官にも説明し歓迎された。

No.322 (11月22日発行)より

タクシン タイ首相との朝食懇談会を開催

11月20日、来日中のタクシン・タイ首相一行を招いて朝食懇談会を開催した。経団連側からは、今井会長、安居日タイ貿易経済委員長、上島副会長、西室副会長、高原評議員会副議長ら30名が出席し、今井会長が経団連を代表して挨拶した。
タクシン首相からは、タイの投資環境整備に今後も努力する、ラオスやミャンマーなどタイの近隣諸国に日本企業が進出する際にタイが重要な拠点となりうるとの話があった。中国との関係については、中国のWTO加盟はタイにビジネスチャンスをもたらすと述べたのに加えて、どのような分野で中国とタイが競合するかを研究していると発言した。さらに同首相は、アジア域内の貿易・投資をもっと拡大したいと述べ、日タイ間のFTA(自由貿易協定)にも積極的な姿勢を示した。

「産業廃棄物不法投棄原状回復基金」への第3回目の出えんを決定

経団連は、社会的責任を果たす観点から、98年度、2000年度に標記基金への出えんを行っている。その後、不法投棄の状況、不法投棄防止対策の進展、基金の推移等を踏まえて、改めて環境安全委員会を中心に基金のあり方について検討し、11月20日開催の経団連理事会において、基金に対し現行方式では最後となる第3回目の出えんを行うことが承認された。
本制度では、平年度ベースの総事業費8億円のうち半額の4億円を産業界が負担することとなっており、経団連負担分としてこのうち8,000万円を通常実施している募金の負担割合(経団連方式)で出えんしている。なお、今後の基金への協力のあり方については、改めて各業界の意見を踏まえつつ、検討を進めることとしている。

産学官連携サミットを開催

わが国企業が技術革新を進め、国際競争を勝ち抜くためには、産学官連携を一層推進することが求められている。企業、大学双方にメリットのある形で産学官連携を進めるためには、産・学・官の代表者が一同に会し、相互理解の増進を図る場が必要であるとの観点から、11月19日に、内閣府、経団連、日本学術会議の共催で産学官連携サミットを開催した。
当日は、尾身大臣をはじめとする政府関係者、大学の学長、公的研究機関のトップ、企業のトップが参加し、各関係者から、産学官連携の現状と課題、推進方策等について提案が行われるとともに、その結果を共同宣言として取りまとめた。
共同宣言では、産学官連携の飛躍的発展に向け、企業側は、自前主義からの脱却、経営戦略における大学との連携の明確な位置付けを、大学側は、非公務員型の法人化への移行を目指す等改革の推進を、官側は、産学の相互連携に向けた制度改革等を、それぞれ果たすべき役割として掲げた。
今後とも、定期的に産学官連携サミットを開催する予定であり、経団連としても、産業技術委員会を中心に、大学との直接対話の場を設けていく予定である。

No.321 (11月16日発行)より

「日本経済団体連合会」会長に奥田トヨタ自動車会長内定

11月12日、今井経団連会長、奥田日経連会長が共同で記者会見し、経団連と日経連との統合により誕生する「日本経済団体連合会」の初代会長に、奥田碩トヨタ自動車会長の就任が内定したと発表した。正式決定は、来年5月28日に予定されている総会となる。
今井会長は奥田会長を「若く、人格も立派で、何よりも日経連会長として立派な業績をあげている」と評した。
奥田会長は、「諸般の事情を考え、やるべきことをやると覚悟を決め、内諾した。日本経済を一刻も早く立て直すために、微力ながら粉骨砕身努力したい」と抱負を語った。

COP7後の温暖化問題への対応

10月29日〜11月10日、モロッコのマラケシュにおいて、気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)が開催され、温暖化防止のための京都議定書の運用ルールについて合意が成立した。
今後、各国は2002年9月の地球環境サミットまでの議定書発効を目指し、批准作業を進める。わが国も11月12日の政府地球温暖化対策推進本部で批准に向けた準備を進めることを決定した。
しかし、米国は本年3月に表明した議定書への不参加の姿勢を変えておらず、中国・インド等の途上国の参加についても見通しは立っていない。
温暖化は地球規模の問題であり、大量排出国の欠けた枠組みは実質的に効果を持ち得ない。産業界は、温暖化への自主的な取組みを着実に進める一方、すべての国が参加する国際的枠組みの構築を求め、拙速な議定書批准に反対していく。

WTO閣僚会議で新ラウンド開始を合意

カタールで開催されたWTO閣僚会議において、11月14日、新ラウンドの開始が決定された。これを受け、今井会長はコメントを発表した。ポイントは以下の通りである。

  1. 新ラウンドを通じた自由貿易体制の強化は、世界経済の活性化に大きく寄与するものと期待する、
  2. 2年後に国際投資ルールの策定交渉が開始されることを強く希望する、
  3. アンチダンピング協定の明確化および規律の改善に関する交渉が開始されることになったことを歓迎する、
  4. 中国および台湾のWTO加盟は長期的に見れば日本経済にとってプラスであり、このチャンスを日本企業は大いに活かしていくべきである。
経団連では、7月に「WTO新ラウンド交渉立ち上げにあたっての基本的立場」を発表、10月にはWTOにミッションを派遣しわが国経済界の立場を広く関係各国に訴えた。今後は、交渉の対象となった分野ごとに意見の取りまとめを行っていく。

No.320 (11月 9日発行)より

「日韓産業協力の新たな発展に向けて」(案)を審議

アジア・大洋州地域委員会(共同委員長:立石信雄オムロン会長、茂木友三郎キッコーマン社長)では、「日韓産業協力検討会」(座長:大貫昭義三井物産顧問)を設置し、自由貿易協定(FTA)ならびに日韓の産業協力のあり方について検討している。11月5日には、同検討会で取りまとめた「日韓産業協力の新たな発展に向けて」(案)を委員会の場で審議した。
その内容は、

  1. 日韓両国が、アジア経済の今後の発展を牽引する重要なパートナーであり、今後もさらに協力関係を進展させるべきである、
  2. FTAは日韓の産業協力を加速させる有効な手段であり、包括的な協定とすべきである、
  3. 日韓FTAは21世紀の両国関係を象徴するものであり、早期の締結が望ましい、
である。
本意見書は、20日の理事会を経て、内外に公表する予定である。

今井会長が日本外国特派員協会で講演

経団連は、かねてより在京外国特派員への協力の観点から、日本外国特派員協会(FCCJ、会長:我孫子AP通信東京支局次長)の活動に協力してきた。今井会長の講演会は、1998年6月に続き、2度目である。
11月7日に開催した講演会には、100名を超える参加者が出席、うち40数名の内外記者が会長の対米テロに対する考え方、日本経済の現状と今後の展望、構造改革推進についての発言に聞き入り、鋭い質問を浴びせた。
講演後の質疑応答の中で今井会長は、食糧安全保障にも配慮した農業改革の推進、わが国人口動態の変化に伴う規制改革と医療・介護・保育を中心としたサービス産業の育成、IT・バイオ・環境・ナノテク等の先端技術の開発と知的財産権保護、ASEAN+3(日中韓)を中心としたアジアの経済統合促進、わが国財政規律の維持・強化と財政構造改革推進の必要性を訴えた。

No.319 (11月 2日発行)より

尾身科学技術政策担当大臣との懇談会を開催

11月1日、尾身大臣を招き、産学官連携を中心とする今後の科学技術政策のあり方などについて意見交換を行った。
当日は、尾身大臣より、

  1. 教育や研究面での空洞化を防ぐために、日本を魅力ある国にしていかなければならない、
  2. 産学官連携を進めるためには、トップが自分の組織に号令をかけていくことが必要、
との発言があった。
経団連側からは、産学官連携に関して、10月16日に公表した提言「国際競争力強化に向けたわが国の産学官連携の推進」について説明し、
  1. 産学官連携へのインセンティブの付与が大切、
  2. 産学官連携を進める大学は独立法人化の際に非公務員型を選択することを期待する、
  3. 経団連としても、来たる11月19日の産学官連携サミットを契機に大学との直接対話を推進する、
との説明を行った。また、産業界、総合科学技術会議側双方より、企業と大学が互いに尊敬しあう関係を築くことに努めるべきといった発言があった。
その他、経団連側から、
  1. 宇宙やバイオの産業化に向けた政策面のバックアップも大変重要、
  2. 科学技術に関する予算の複数年度化を検討すべき、
等の意見が出された。

フランス経団連セリエール会長一行と懇談会を開催

11月1日、アントワヌ・セリエール会長を団長とするMEDEF(フランス経団連)一行が経団連を訪問し、今井経団連会長はじめ経団連幹部と意見交換を行った。また、来年5月に統合が予定される日経連からも山路副会長ほかの出席を得た。
意見交換では、MEDEF側から、

  1. フランス経済は減速しているが来年半ばには景気回復が期待される、
  2. フランスは世界有数の航空宇宙産業を有しており、日本との協力関係の強化を望む、
  3. 来年1月のユーロ紙幣導入に際しては多少の混乱も予想されるが、欧州統合がさらに具体化され、金融・投資活動が活性化するなどの効果がもたらされる、
  4. 日本からフランス、特に西部地域への一層の投資を歓迎する、
などの発言があった。
日本側からは、
  1. 日本経済の現状と経済構造改革、
  2. 不良債権問題への取組み、
  3. 雇用問題への取組み、
  4. 対日直接投資環境の変化、
  5. アジア市場への取組み、
  6. 貿易自由化に関する立場、
などについて説明を行い、意見交換を行った。
次回会合はフランスにて開催の見込みである。

連合首脳と意見交換

経団連では、日本経済が直面する政策課題について、連合と機会あるごとに意見交換を重ねてきた。今年度も、11月2日、今井会長、笹森会長をはじめとする両団体首脳の参加を得て懇談会を開催した。
会合では、双方から重要政策課題について説明した後、意見交換した。
経団連側からは、規制改革、株主代表訴訟、医療制度改革、地球環境問題について説明した。連合からは、経済・雇用対策、規制改革、医療制度改革、税制改革への取組み等について説明を受けた。
その後双方は、上記テーマのみならず、ワークシェアリング、産業空洞化問題、経済構造改革等についても意見交換を行った。
閉会にあたり笹森連合会長からは、傘下労組の問題につき、対岸の火事とは捕らえず、積極的に真相を究明し、新たにスタートを切りたいとの決意表明があった。また、今次会合が、経団連と連合の最後の首脳懇談会となろうが、経団連が日経連と統合した後も、引き続き意見交換を続けていきたいとの要請があった。


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