産業問題委員会では2002年4月、国際的な分業体制の変化等を踏まえ、わが国における新たな成長基盤の構築に向けた提言をとりまとめる予定である。
わが国企業は現在、労働力をはじめとする生産要素のコストや土地、税金などの立地関連コストの安さを背景に、近隣アジア諸国に生産拠点を移転させている。とりわけ中国への投資は、その市場の成長可能性もあり、1999年末までの累計で2兆3千億円にのぼるなど急拡大している。対中投資の拡大は企業の最適生産の帰結として受け止めることが自然であるが、国内における生産、雇用の減少、逆輸入の増加による国内市場の競争激化などを通じて、わが国の経済産業に多様な影響を及ぼす。中国の台頭により国際分業が構造的に大きく変化しつつあり、今後もわが国経済産業への影響は、より広がりと深みのあるものになっていくことが予想される。
今般、調査を行った台湾においては、90年代を通じて、食品や靴、繊維などのいわゆる伝統産業から家電や情報通信関連産業などの付加価値の高い産業に至るまで、広範な製造業企業がその生産拠点を中国大陸に移転させている。
台湾経済は2001年、戦後初めてのマイナス成長を記録し、失業率も4%の半ばと、98年に比べると2%ポイント近く上昇した。こうした実体経済の悪化が産業の空洞化によるものなのか、産業の高度化に向けて政府や企業がどのように対応を行っているかなどについて、現地の官民関係者にインタビューを行い、その実態と課題を整理した。
本報告書は台湾での現地調査にもとづくものであり、関係者の考えや台湾の政策を引用している部分がある。「台湾」のステータスに対する見解が中国の考えと異なるところがあることをご了承いただきたい。
久野 仁史 | 日本興業銀行産業調査部副部長(調査団団長) |
増井 暁夫 | 旭硝子産業政策企画室主幹技師 |
大和 弘明 | 日本政策投資銀行産業・技術部調査役 |
鶴木 大輔 | 日本興業銀行産業調査部 |
井上 洋 | 経団連産業本部産業基盤グループ長兼国土グループ副長 |
佐々木 省吾 | 経団連産業本部員 |
マクロ経済の状況
産業構造の変化
両岸貿易、投資の状況
経済発展諮詢委員会を中心とした検討状況と具体的な施策・計画
産業活性化に向けた施策
大学教育・研究の充実、産学官連携の推進
雇用政策上の課題と対応
台湾・中国における分業の状況(今回調査対象企業)
国際分業に関する台湾企業の考え方
企業の研究開発部門の動向(研究開発体制)
雇用関連の対応策
台湾における産業空洞化の背景
台湾企業の経営戦略
政府の産業競争力の強化に向けた施策