今後の産業構造を展望するための参考として、2010年における産業の姿を、予想される需要や貿易構造の変化、生産技術の進歩を考慮する産業連関分析によって予測した。その際、日本経団連会員へのアンケート調査結果を反映した。
2010年の実質産出額は、製造業が約362兆円、非製造業(サービス業を除く)が約418兆円、サービス業が331兆円となる。また、2010年までの年平均伸び率が高い産業は、サービス、電気機器、通信、化学、自動車などである(1995年価格。詳細は別表Aを参照)。
2010年の就業者数は、農林水産業、鉱業、製造業などで減少する一方、サービス業で2,400万人強まで増加し(2000年比で約258万人増(注))、雇用機会が確保される(詳細は別表Bを参照)。
(参考)サービス業における就業者の増加について
経済財政諮問会議「サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会緊急報告」(2001年)では、約530万人の就業者増が見込まれている。
本提言における就業者数見通しは、(1)サービス業の範囲を相対的に狭くとっていること、(2)従来型サービス業における就業者の減少を差し引いた純増分を計測していること、の2点で、専門調査会緊急報告と異なる。したがって、専門調査会緊急報告と本提言の見通しは、必ずしも対応しない。
2010年の売上高営業利益率は、製造業が約5.0%、非製造業が約2.8%、全産業で約3.5%と、それぞれ現在に比べて1%前後改善される。
2000年 | 2010年 | |
製造業 | 3.8% | 5.0% |
非製造業 | 2.1% | 2.8% |
全産業 | 2.6% | 3.5% |
別表A 2010年の産業構造 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(単位:%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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別表B 2010年の就業構造 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(単位: 構成比は%、就業者数および増減は万人) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(1)アンケート調査の実施
産業連関分析に先立って、日本経団連常任理事などを対象に「2010年までの中期展望」に関するアンケート調査を実施し、(1)主な最終需要(個人消費(財)、個人消費(サービス)、民間住宅投資、民間設備投資、輸出)の伸び率、(2)産業部門別の生産性伸び率、(3)産業部門別の就業者数の推移、(4)製造業における輸入依存度の推移、についての見通しを聞いた。
(2)産業連関分析
各年の内閣府「SNA産業連関表」に基づく産業連関分析を行った。
具体的には、まず、アンケート調査で得られた2010年の項目別最終需要と、過去の推移を踏まえて予測した2010年の産業別最終需要比率などを用いて、2010年時点における産業部門別の最終需要を求めた。なお、2000〜2010年における最終需要合計(実質国内総支出)の年平均伸び率は1.2%となる(日本経団連ビジョンの財政シミュレーションでは、2002年秋時点の経済統計や情報に基づき、2003〜2010年度の年平均伸び率を実質1.9%と予測した。その後に発表された経済財政諮問会議「改革と展望−2002年度改定−」などでは、デフレ傾向の長期化が見通されており、今回のアンケート調査結果も踏まえて、2010年までの成長率予測を下方修正した)。
次に、2010年の投入係数をRAS法(注)に基づき予測するとともに、輸入係数および雇用誘発係数についても、過去の推移を踏まえて2010年の数値を予測し、2010年の産業連関表などを作成した。各係数の予測にあたっては、アンケート調査結果から得られた情報を反映させた。なお、諸制度の変更が資源配分に及ぼす影響は、直接的には織り込まれていない。
以上により、2010年における産業部門別の産出額、就業者数を予測した。
(3)企業収益見通しの作成
産業連関分析により予測した産出額、就業者数に基づき、2010年における業種別の売上高、付加価値額、人件費、減価償却費、営業利益など(いずれも財務省「法人企業統計年報」ベース)を推計し、売上高営業利益率を求めた。2010年までの物価上昇率は、年平均0.5%とした。
(注)RAS法:
基準時点の投入係数行列Aを、行方向の修正行列R(原材料間の代替変化を示す中間需要計の列ベクトルの二時点間変化率を対角化した行列)と、列方向の修正行列S(原材料投入率の変化を示す中間投入計の行ベクトルの二時点間変化率を対角化した行列)によって修正し、予測時点(ここでは2010年)の投入係数を行列積R・A・Sとして求める方法。