[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「政府開発援助大綱」政府原案に対するコメント

2003年8月7日
(社)日本経済団体連合会
国際協力委員会 政策部会

日本経団連では、さる4月22日に「ODA大綱見直しに関する意見」を発表し、ODA大綱の見直しにあたり盛り込むべき点を指摘したが、7月9日に発表された政府原案には、われわれの主張の多くが採り入れられており、評価したい。
すなわち、政府原案では、(1)ODAの目的として、必ずしも十分ではないものの「我が国の安全と繁栄」との表現で、わが国の国益を意識した表現が盛り込まれたほか、(2)重点課題として、経済活動上重要となる経済社会基盤整備、各種制度整備や人づくりへの協力を重視すること、(3)重点地域として、日本と緊密な関係を有し、日本の安全と繁栄に大きな影響を及ぼしうる東アジアを重点地域とするとともに、経済連携強化等を十分に考慮し、ODAを活用すること、(4)援助政策の立案・実施にあたって、政府全体としての一体性と一貫性をもった中期政策や国別援助計画を策定し、実施すること、及び(5)開発途上国から要請を受ける前から政策協議を活発に行うことなど、従来の大綱と比べ、わが国ODAを戦略的に活用する姿勢があらわれており、今後、最終的な閣議決定まで、その方向性を維持するとともに、さらなる充実を図るべきである。
とりわけ、われわれの意見の趣旨をより明確化する観点から、下記の点については、修正を提案する。

政府開発援助大綱政府(案)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/seisaku_1/t_minaoshi/taiko.html

1.「I.理念 −目的、方針、重点 1.目的」

(原案)
「我が国のODAの目的は、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである。」
(提案)
「我が国のODAの目的は、国際社会の平和と発展に貢献するとともに、我が国の安全と繁栄の確保に資することである。」
(説明)
わが国が、将来にわたり貿易立国として生存し繁栄していくためには、世界平和の実現、世界各国との友好関係の維持を図ることはもとより、貿易・投資等の経済活動の維持・発展が必須の条件となっている。
わが国にとってODAは、これらの諸目的を実現するための極めて重要な手段であり、ODA大綱の基本理念においても、国際社会が共通して取り組むべき諸課題への貢献に加え、国内資源に乏しい貿易立国としてのわが国の安全と繁栄を確保するという国益のためにODAを積極的に活用するとの姿勢をより強調すべきである。

2.「I.理念 −目的、方針、重点 1.目的」

(原案)
「このことは、我が国の安全と繁栄を確保し、国民の利益を増進することに深く結びついている。」
(提案)
「このことは、我が国の安全と繁栄を確保し、納税者たる国民の利益を増進するとの目的を達成することに深く結びついている。」
(説明)
国際社会の平和と発展への貢献やわが国の安全と繁栄の確保のための重要な手段であるODAが、国民の税金を原資とし、納税者たる国民の利益を増進するとの目的を達成する上で重要である旨を明記することは、ODAが国民の理解と共感をもって受け入れられるために重要である。

3.「III.援助政策の立案及び実施 1.援助政策の立案及び実施体制 (1)一貫性のある援助政策の立案」

(原案)
「本大綱の下に…視野に入れつつ、中期政策や国別援助計画を作成し、これらに則ったODA政策の立案、実施を図る」
(提案)
「本大綱の下に…視野に入れつつ、関係者の意見を踏まえ、中期政策や国別援助計画を作成し、これらに則ったODA政策の立案、実施を図る」
(説明)
援助政策の策定から実施に至るまで、わが国ODAの重要な担い手であり、豊富な経験・知見を有する関係者の意見を踏まえ援助政策を立案することは、わが国ODAの効率的・効果的な実施において極めて有益である。

4.「III.援助政策の立案及び実施 1.援助政策の立案及び実施体制 (2)関係府省間の連携」

(原案)
「政府全体として一体性と一貫性のある政策を立案し、実施するため、対外経済協力関係閣僚会議の下で、…」
(提案)
「政府全体として一体性と一貫性のある政策を立案し、実施するため、当面、国内の関係者の知見も踏まえるなど対外経済協力関係閣僚会議の機能を充実させるとともに、同会議の下で、…」
(説明)
一体性と一貫性のある、効率的・効果的なODA政策の立案・実施のためには、わが国ODA政策全体の司令塔の確立が極めて重要であり、当面、既に設置されている対外経済協力関係閣僚会議の機能を充実させるとともに、同会議において、ODAの重要な担い手であり、豊富な経験・知見を有する関係者の意見を踏まえ援助政策を立案することが有益である。将来的には、日本経団連が「ODA戦略会議」として提唱した「内閣総理大臣を議長、関係閣僚や民間有識者をメンバーとする司令塔」としての機能を持つよう、同会議の抜本的な改革を行うべきである。

5.「III.援助政策の立案及び実施 1.援助政策の立案及び実施体制 (6)内外の援助関係者との連携」

(原案)
「国内のNGO、大学、地方公共団体、経済団体…関係者がODAに参加し…」
(提案)
「国内のNGO、大学、地方公共団体、経済団体…関係者が経済協力の重要な担い手としてODAに参加し…」
(説明)
わが国のODAが、量から質への転換を求められている中で、民間が果たすべき役割がますます重要となっている。例えば、民間の資金・イニシアティブによる貿易・投資は、持続的な経済成長を確保するための重要な要素であり、民間企業は、技術と経験をベースとした経済協力の担い手となりうる。また、ODAの現場で途上国のニーズを熟知し、住民のきめ細かいニーズにも通じた民間企業・NGOは、援助の重要な担い手となり得る。こうした経済協力における民間の果たす役割をODA大綱においても明記し、ODAへの幅広い参加を促すべきである。
以上

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