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外国人受け入れ問題に関する提言

2004年4月14日
(社)日本経済団体連合会

1.基本的な考え方

(付加価値創造力を高めるために外国人の力を)

戦後の日本は、労働力の同質性、均質性を力に経済大国となったが、少子化・高齢化の進展に直面し、専ら労働力の“マス”の力に頼って経済を発展させることはもはや困難になっている。国立社会保障・人口問題研究所の人口推計(中位推計)によれば、2006年から総人口が減少に転じる見込みになっているが、私たちは、その“埋め合わせ”のために、外国人の受け入れを進めていこうとは考えていない。新ビジョン『活力と魅力溢れる日本をめざして』をとりまとめる際に日本経団連が行った試算によれば、2025年度までの期間において労働力人口の減少が潜在成長率を押し下げる程度は年平均で0.2%程度であり、技術革新を通じてイノベーションを着実に進めていけば十分克服できるレベルである。そこで本提言では、多様性のダイナミズムを活かし、国民一人ひとりの“付加価値創造力”を高めていく、そのプロセスに外国人がもつ力を活かすための総合的な受け入れ施策を提案する。

(高度人材の積極的受け入れ)

いわゆる高度人材については、既に1990年代以降、グローバルな大競争が展開されており、今や、モノやカネ、情報にとどまらず、多くの人が国境を越えて頻繁に移動し活動する状況となっている。また、1995年に発効したWTOのサービス貿易に関する一般協定には、多角的な国際協定としては初めて、人の移動についての規定が盛り込まれた。さらには、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の締結に向けた二国間の通商交渉のなかでも、より具体的な人の移動の自由化が議論されている。
日本では、1999年7月の閣議決定において、外国人の受け入れに関しては、まず専門的・技術的分野の外国人について、「日本経済の活性化や一層の国際化を図る観点から、受け入れをより積極的に推進」することを掲げた。しかし政府は、縦割り行政の壁に阻まれ各省庁が連携して施策を展開していない。現状を放置したままでは、日本において外国人がその能力を十分に発揮することは難しく、受け入れが進まないというのが私たちの結論である。
本提言において、各省庁の所管する外国人受け入れ関連の施策を一元化するために「外国人庁」(仮称)、あるいは「多文化共生庁」(仮称)の創設に向けた検討を求めたのは、そうした問題認識からである。加えて、外国人を受け入れているのは地域であり、国の関係省庁だけではなく、地方自治体も一体となって、総合的な政策を展開する必要がある。

(現場で働く外国人の受け入れとそれに伴う問題の解決)

政府は、一方で単純労働者の受け入れを「経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼす」との理由から、「慎重に対応する」という方針を打ち出している。経済原則から考えても、労働集約的で付加価値の低い商品については、国内生産から海外生産にシフトしていくのは当然の流れである。グローバルに経営を考えると、国内に人件費の安い外国人を導入することによって、国内で生き残りを図るという経営戦略は長続きするものではない。
しかし実態をみると、日本には、現場で働く外国人が相当数流入し就労・生活している。その多くはブラジル人を中心とした日系人であり、現在その数は23万人にものぼり、しかも最近では定住化する傾向が強まっている。
日本経済が長期にわたり低迷するなかで、日系人などの外国人が職を得られる背景には、日本人、とりわけ若者が働きたがらない仕事が存在するという現実がある。多くの企業関係者は、日本人の若者に現場で働いてもらいたいという期待を抱いており、また日本人の若者が専門知識、技術・技能を身に付けられるよう、企業、高校や大学、行政などが連携して、その職業能力・意識の向上に取り組む必要もある。しかし、日系人など外国人が日本人の就きたがらない現場で働いているという現実を直視しなければならない。
日本の労働力人口が減少していくなかで、女性や高齢者の力を最大限に活用したとしても、日本人では供給が不足する分野は、今後さらに増えていくことが予想される。その対策としては、まずは労働生産性の向上や就労環境・労働条件の改善を図ることが求められる。しかし、それでもなお、たとえば、福祉分野を中心としたサービス分野、あるいは農林水産業などの第一次産業分野などにおいては、日本人だけでは労働力不足が深刻化するであろうという見方もある。現場で働く外国人の受け入れを巡る問題をいつまでも先送りにすることはできない。

(外国人を受け入れるための三原則)

こうした現実を踏まえ、日本も外国人受け入れの原則を決めておかなければならない時期を迎えている。
第一に、外国人の受け入れは、その質と量の両面で、十分にコントロールされた、秩序あるものでなければならない。現在の受け入れは、在留資格というかたちで、日本国内での活動に質的な要件が課されているが、その総数については何ら規定がない。そこで、今後の受け入れに当たっては、求められる職種・技能の要件や受け入れ人数、期間を明確にし、合理的な基準で客観的な判断を行っていくことが必要となる。これは、来日する外国人の就労、生活の環境を良好に保つためのものでもある。
第二に、受け入れる外国人の人権や尊厳を損ねるものであってはならない。人間の尊厳に関わるような劣悪な労働条件や生活環境、あるいは賃金などをはじめとする差別が許されないことは当然のことである。労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働法制についても、日本人を雇用する場合と同様に遵守することは、企業として当然の責務である。また入国時だけではなく在留期間中においても、外国人の生活や就労の実態について、行政が必要に応じて把握、確認できるようにしておくことが必要である。
第三に、外国人の受け入れは、受け入れ企業や外国人にとって有益なものであることは当然として、さらに受け入れ国、送り出し国の双方にとってメリットのあるものでなければならない。とりわけ高度人材はどのような国でも、政治や経済、産業、文化を支える重要な存在として、大きな期待が寄せられている。日本において、このような人材が十分に活用され、才能や技能等が磨かれる環境が整備される必要がある。日本で活躍する彼らが満足し、また受け入れた企業もメリットを感じることになれば、日本と送り出し国との間で、経済的、文化的な交流の機会がさらに拡大していくことが期待される。また、外国人を受け入れることによって、日本国内の就労環境や労働条件の改善が妨げられてはならないことはいうまでもない。

こうした原則のもと政府には、3年、5年と期限を定めて具体的に施策を展開しつつ、透明かつ安定的な外国人の受け入れシステムを確立することが求められる。

2.日本企業における雇用契約、人事制度の改革

外国人の一層の活用を考える際には、受け入れようとする企業の側において雇用管理、人事諸制度などのシステムを改革することが必要となってくる。日本企業において外国人を働きにくくしている阻害要因を取り除くことは、日本人にとっても必要なことである。

(1) 異文化シナジーを生み出す経営のあり方

現在、企業経営においてダイバーシティ・マネジメントが必須のものになりつつある。ダイバーシティ・マネジメントとは「多様な人材を活かす戦略」であり、従来の企業内や社会におけるスタンダードにとらわれず、多様な属性(性別、年齢、国籍など)や価値・発想を取り入れることで、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と従業員の自己実現につなげようとするものである。これは、文化的な多様性を活かす経営という意味で「異文化経営」と呼ばれている。
もちろん多様性は、組織の効率的な運営に様々な影響を及ぼす。多様性によって組織の一体感が欠如したり、コミュニケーション・ギャップが発生する、あるいは意思決定に要する労力と時間が増大するといったことも考えられる。その一方で、多様性は「異文化シナジー」というべきプラスの効果を組織にもたらすとも考えられる。異文化シナジーを持つためには、構成員が互いの違いを認識しつつ、異なった方法が創造的に結合されることによって、組織の運営や仕事の進め方において最善の方法が生み出されることが期待されるのである。
従来の「異文化経営論」では、国ごとの文化の差に焦点をあて、その理解を深めて多様性に対応することによって企業経営を円滑にしていくことに主眼が置かれてきた。しかしグローバル化がさらに進展し、世界規模で迅速な市場ニーズへの対応を求められている今日においては、ことさらに差異を強調するのではなく、異なる文化を超える経営が必要になる。その意味で「異文化経営」は、新たな次元に入っており、企業はそのなかで外国人の活用も位置づけていくことが求められる。

(2) 外国人を受け入れ、活用するにあたって留意すべき点

日本経団連が今般実施した「外国人受け入れ問題に関するアンケート調査」によれば、外国人を活用している企業は、社内システム上の問題点として「文化・習慣の違い」(42.1%)、「職場内での意思疎通」(41.5%)をあげている(図表1)。また、外国人を活用しない理由としては、そもそも「外国人雇用のニーズがないこと」「接客業が中心となるため、言葉や文化の違いがネックになると考えること」などがあげられている。また、外国人受け入れにあたっての日本企業の課題を聞いたところ、「会社・従業員の意識改革」(44.9%)が最も多く(図表2)、その具体的な意見として、「社内のシステムだけでなく、従業員の意識に問題がある。グローバル時代にそぐわない排他的な意識が問題となる」といった声も聞かれた。日本企業が外国人を活用するにあたり課題となるのは、文化、語学、意識といったものであることが窺われる。

図表1−外国人を雇用・活用するにあたっての社内システム上の問題点
図表1−外国人を雇用・活用するにあたっての社内システム上の問題点
出典:日本経団連「外国人受け入れ問題に関するアンケート調査」(2003年10月)

図表2−外国人受け入れにあたっての日本企業の課題
図表2−外国人受け入れにあたっての日本企業の課題
出典:日本経団連「外国人受け入れ問題に関するアンケート調査」(2003年10月)

そうした文化、意識の改革と並んで、日本企業が外国人を活用するために必要なことは、外国人を適正な報酬で有効かつ適切に活用し得る仕組みづくりである。外国人が働きがいを感じ得る仕事と処遇を提供することが不可欠であろう。
日本で働く外国人、とりわけ専門的・技術的分野の外国人は、多様な雇用形態のなかから自ら適したものを選び、そのなかで自己のキャリア・パスを描きたいと考えている者も多い。日本での在留が短期であっても、その期間で自分に何ができるか、その次のステップとして何をするかを強く意識している。そのような姿勢で仕事に取り組む外国人が積極的に選択できるような働き方の選択肢を準備する必要がある。
こうした外国人には、日本企業の長期雇用を前提としたキャリア形成や賃金構造はなじみにくく、海外から優秀な人材を集められるかは疑問である。世界的な人材獲得競争はますます激しくなっており、長期雇用だけではなく、たとえば限られた期間の雇用を前提に、職種や担当業務を限定し、報酬なども在職期間の貢献に連動した刺激的なものとするといった選択肢を準備するなど、多様な対応をとることが求められる。これは、同じような働き方を望む日本人にとっても望ましいことであろう。
加えて、外国人社員に対する日常生活を含めたケアも必要である。外国人を積極的に活用している企業は、平日の夜などに日本語教育を行うほかにも、日本に長く住んでいる外国人社員を先輩役として相談員の形で配置する、それぞれの職場でしっかりと面倒を見る庶務係をつける、できる限り海外赴任の経験がある上司をつける、などの工夫をこらしている。
また、外国人を活用するにあたり、法令遵守・機密確保のための仕組みづくりも重要な課題となろう。日本経団連のアンケートでも、「固有技術の海外流出」「機密の漏洩」などの不安があげられている。企業は、細かな事項でも契約書に記載することを心がけなければならない。
以上指摘した点は、日本企業の置かれた経営環境のなかにあっては、グローバルな共通の規範(World Values)と呼ぶことができよう。こうした規範をベースとして、企業独自の文化と融合させ、異文化シナジーを発揮させていくため、社内の意識を変え、同時にシステム・制度を整えていくことが必要である。

3.国と地方自治体が一体となった整合性ある施策の推進

(1) 外国人受け入れ問題本部の設置、外国人庁(仮称)の創設検討

周知のとおり、日本では出入国管理及び難民認定法(以下、入管法という)によって、外国人の在留資格を審査した上で、入国及び就労・就学を認めている。日本に入国し在留する外国人に係る問題は、関係する省庁や地方自治体が一体となって対応すべきところであるが、関係省庁や地方自治体が日常、情報を共有し連携をとりあい、共同して問題解決を図るような体制にはなっていないのが実態である。
1990年の入管法改正以降、外国人の入国・在留は大幅に拡大したが、それに対応して国が総合的な施策を推進したとは必ずしもいえない。そうした状況のもと企業は、外国人を十分活用しきれておらず、また外国人が実際に居住し就労する都市では、地方自治体、NPO、NGOなどが具体的な問題解決に追われている。外国人に対する社会保険の不備、居住環境の悪さなど日本側の問題に加え、子弟教育や日本語修得への努力不足、地域コミュニティとの摩擦など、外国人側に起因する問題も含め、その対応は企業や地域に委ねられているのが実態である。
以上のような状況を改善するため私たちは、国に対して、外国人受け入れに関する検討体制の整備と外国人に係る諸問題を総合的に企画・立案し、必要な調整を行うため、内閣に「外国人受け入れ問題本部」(仮称)を設置するとともに、内閣府に「特命担当大臣」を置くことを提案する。同本部は、当面は閣議決定により設置し、本部長を内閣総理大臣、副本部長を内閣官房長官及び特命担当大臣、本部員を他のすべての閣僚とし、これに関する事務は内閣府の協力を得て内閣官房が行うものとする。
同本部は、外国人受け入れ全般の基本方針を企画・立案することを主な任務とする。また、出入国審査をになう法務省、査証発給を行う外務省、日本語修得、子弟教育に係わる文部科学省・文化庁、医療保険、年金、さらには外国人の雇用管理などを担当する厚生労働省、地方自治体への支援を行う総務省などの関連省庁との間で、具体的な施策に関する総合調整を行う。また施策の展開に当たっては、地方分権の原則を踏まえつつ、外国人集住都市など地方自治体、NPO、NGOなどとの連携を重視すべきである。
加えて国は、将来的に「外国人受け入れに関する基本法」(仮称)を制定し、さらにその取り組みを強化すべきである。さらに外国人受け入れに係る施策を一元的に管轄する「外国人庁」(仮称)、あるいは「多文化共生庁」(仮称)の設立について、その是非を含めたあり方を検討すべきである。

(2) 新しい就労管理の仕組み

入管法に基づき入国が許可された外国人については、その在留資格に基づき日本国内で就労・就学することが可能となる。そして、企業などにおいて就労した者について、職業安定法施行規則に基づき、国が外国人を雇い入れている企業から雇用状況の報告を受けることとなっている。しかしこれは、外国人個々の情報を報告するのではなく、企業が雇い入れている外国人をいわば概数的に報告するものであり、そのため現行制度のもとでは、国として外国人の就労実態を把握することができていない。
外国人の入国管理制度は、入国事前審査(査証等)、入国審査(上陸許可)及び在留審査・退去強制(在留管理)に分けられるが、就労管理の観点から最も重要なのは、入国後管理である。現行制度のもとでは、入国管理局による在留資格の変更、在留期間の更新等、市町村による外国人登録制度、厚生労働省による外国人雇用状況報告などがあるが、外国人労働者の権利を確保し、不法就労・不法在留を防止し、国内労働市場を保護するためには、入国後管理の制度を根本から改める必要がある。私たちは「中間とりまとめ」において、「外国人雇用状況報告」の拡充を提案したが、現状を踏まえれば、同制度を強化しただけでは、就労管理の徹底はできないと思われる。諸外国においても、アメリカ、ドイツ、イギリスなどが既に就労管理の仕組みを導入しており、所管の一元化、情報の共有化も進んでいる(図表3)。

図表3−海外の外国人行政と就労管理の現状
アメリカ 滞在期限付外国人労働者は、移民帰化局へのビザ申請に先立って連邦労働省の労働許可が必要。H-IB(専門職)の場合、雇用主は労働条件許可申請書を連邦労働省に提出。解雇・転職の場合は移民帰化局や労働局への変更手続きが必要。雇用主にはすべての労働者について就労資格確認義務がある。
ドイツ 外国人の滞在許可については市町村の外国人局が担当。労働許可については公共職業安定所が担当。両者の整合性は連邦内務省と連邦経済労働省の間で調整されている。1994年に外国人中央データベースが構築され、外国人の入国、在留および就業に関する行政データが共通化された。市町村外国人局のデータも安定所のデータも、利用目的やデータ保護などの制約の下で関係行政が利用可能。
イギリス 外国人の労働許可申請は雇用主によってのみ行われる。労働許可の発給は教育雇用省が担当していたが、2001年の組織改編によって、内務省移民国籍局労働許可課となり、所管の一元化が進んでいる。入国管理の対象となる外国人は一定の条件(国、目的)のもとで警察への住所登録が義務づけられている。
出典: 厚生労働省編「諸外国における外国人労働者の現状と課題」
経営労働協会「イギリス、オランダ、スウェーデン各国における外国人受入に関する調査研究」

こうした事例を参考として私たちは、図表4のとおり、企業が提供した外国人の個人情報をデータベース化し、地方自治体や社会保険庁などの公的機関が活用できるようにするために、「外国人雇用法」(仮称)を制定することを提案する。同法に基づいて、現在、指針(外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針)にとどまっている外国人雇入れ時の在留資格確認を義務化する。そして、外国人の労働条件の確保、社会保険加入状況の確認などを目的に、外国人の採用・離職時において報告する義務を雇用主に課し、その情報をもとに外国人雇用データベースを構築する。そのデータベースは、入国管理局、公共職業安定所、労働基準監督署、社会保険庁などが厳重な管理の下で共有する。また市町村が保有する外国人登録の記録と照合できるよう連携する仕組みを築く。なお新法制定の前提として、入管法、外国人登録法、社会保障関連法令、労働法令などの既存法制を整合性あるかたちで見直すことが求められる。
企業の側においても、同法に基づき雇い入れた外国人の情報を提供する一方で、日本人とは異なるダブル・スタンダードを設け、日本人より低い労働条件で雇い入れたり、外国人だけを合理的な理由もなく解雇したりすることがあってはならないことを再確認する。労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働法制について、日本人の雇用の場合と同様に遵守することは企業として当然の責務である。
なお、外国人を雇い入れる企業に対し、外国人雇用税を課すべきであるとの意見もあるが、税制における「公平の原則」に反することから、その導入は慎重に考えるべきである。外国人の受け入れに伴う社会的コストは一義的にその受益者が負担すべきものであるが、生産性の向上が直接、企業収益に反映され、また雇用の増加も図られることを考えれば、法人税や外形標準課税となる法人事業税等の納税というかたちで企業はその責務を相当程度果たし得るといえよう。

図表4−新しい外国人の就労管理の仕組み
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4.専門的・技術的分野における受け入れの円滑化

(1) 激化する人材獲得競争

国は、第9次雇用対策基本計画(1999年)、第2次出入国管理基本計画(2000年)において、「専門的、技術的分野の外国人労働者は、日本経済の活性化や一層の国際化を図る観点から、受け入れをより積極的に推進」することを掲げている。
世界的に、能力の高い専門的、技術的分野の人材獲得競争が激化しているなか、日本に在留するこの分野の外国人は登録者数(ストック)では増加しているが、入国者数(フロー)では必ずしも増加する傾向にない(図表5)。

図表5−専門的・技術的分野の外国人新規入国者数の推移(興行を除く13資格)
図表5−専門的・技術的分野の外国人新規入国者数の推移(興行を除く13資格)
出典:法務省入国管理局

そこで私たちは、企業からの高まるニーズへの対応、多様性のダイナミズムを基本とした経済社会の活性化といった観点から、専門的・技術的分野の外国人の受け入れを拡大するため、以下のような具体的な施策を講じるよう提案する。

(2) 受け入れ円滑化に向けた方策

  1. 在留資格の拡大
    いくつかの在留資格について、在留活動の見直しや上陸許可基準を緩和する。

    〔技術〕
    現在、「技術」の在留資格取得の要件として、入管法第七条第一項第二号の基準を定める省令(以下、省令)によって、「大学を卒業し若しくはこれと同等以上の教育を受け又は十年以上の実務経験により」と定められている。しかし情報処理技術者に対しては、法務省告示で定める情報処理技術に関する試験の合格または資格の保有を前提にこの要件が緩和されており、この要件緩和を「技術」の他の業種にも可能な限り拡大する。
    〔人文知識・国際業務〕
    省令の人文知識・国際業務の項の下覧に掲げる活動に関して、大学を卒業していない場合に求められる「十年以上の」実務経験という要件を大学を卒業する年限に合わせて「四年以上の」と改正する。
    〔企業内転勤〕
    省令の企業内転勤の項の下覧に掲げる活動に関して、在留資格の取得を希望する申請人の行おうとする活動が、技術又は人文知識・国際業務に係る在留活動に該当する場合には、業務経験が1年未満であっても企業内転勤としての在留資格を認定する。あるいは、技術又は人文知識・国際業務に係る「本邦の公私の機関との契約」には、直接の雇用契約だけでなく、出向契約等も含まれることについて、これを周知徹底する。
    〔投資・経営〕
    省令の投資・経営の項の下覧に掲げる活動に関して、投資については「二人以上の本邦に居住する者が従事する規模のものであること」が要件とされているが、これを削除する。二人以上の本邦居住者が従事する規模のものでなくても、日本経済の活性化に資する投資を行う外国人を受け入れることができるようにする。
    〔業務独占資格分野〕
    弁護士、公認会計士、医師、歯科医師、看護師等については、たとえば、アメリカ、欧州連合加盟国等の先進国ならびに経済連携協定を締結する国等が認定する同様の資格を有する者に対して、資格要件を緩和するとともに、在留期間の拡大及び就労制限の緩和を行う。

  2. 在留年数の延長

    〔最長在留期間の5年への延長〕
    すべての在留資格に関して、最長在留期間を5年に延長する。たとえば、ドイツ、イギリスは5年、フランスは10年となっている。
    〔在留期間の区分の細分化と区分選択の自由化〕
    在留期間に関して、期間の区分を5年、4年、3年、2年又は1年へと細分化した上で、在留資格認定証明書を申請する外国人が、この区分のなかから、従事する業務に応じた在留期間を選べるようにする。
    〔在留期間と有期労働契約期間との整合性〕
    在留期間の見直しの際には、有期労働契約期間との整合性をとることが必要である。2004年1月より有期労働契約期間は1年(高度の専門的知識を有する者は3年)から3年(同5年)に改められ、在留期間と労働契約期間を3年に合わせることが可能となった。さらに在留期間を5年に延長する場合には、入管法上の在留資格の要件と、改正労働基準法上の高度な専門知識等を有する者の要件を調整することが必要となる。

  3. 在留資格認定証明書の交付・不交付事例の公開、理由の提示
    在留資格認定証明書の交付・不交付に関する事例を類型化し公開する。また、在留資格認定証明書の不交付を決定した場合、その申請人に対して、別表以上の具体的な理由を提示する。

  4. 在留資格審査手続に係る処分の簡素化・迅速化
    法務省入国管理局における在留資格認定証明書交付申請に係る審査は、平均で2〜3カ月、長い場合には半年という審査期間を要するケースもある。こうした状況は、優秀な外国人をいち早く受け入れて事業を遂行したい企業からすればあまりに長いといわざるを得ない。イギリスでは、電子申請システムが導入されており、申請書受理後1日で7割、受理後1週間で9割が処理されている。
    また査証の申請には、在外公館のある地域によっては、代表取締役の押印まで求められる招聘理由書、身元保証書の提出が必要になる。
    たとえば、過去数年間にわたり申請において不許可になった事例がなく、かつ許可された外国人に事故が発生した事例もないような企業等を優良事業者として認定する制度を設け、こうした事業者が代理人として査証、在留資格認定証明書の交付を申請する場合には、特別に、迅速(例:1週間の処理期間の設定等)かつ簡易な手続き(例:査証申請の必要書類における代表取締役印を招聘企業の部門長印で代替等)で当該申請に対する処理を行い得るようにする。

  5. 社会保障協定の早期締結
    現在、日本が締結した社会保障協定はドイツ(2000年発効)、イギリス(2001年発効)の2カ国とのものに過ぎない。今般、署名に至ったアメリカ、韓国との協定を早期に批准するとともに、引き続き、社会保障制度が整備されている国との間、特に、既に交渉中の国(フランス、ベルギー)、申し入れのある国(オランダ、イタリア、ルクセンブルグ、カナダ、オーストラリア、フィリピン及びブラジル)、その他の重点国(アジア諸国)との協定の早期締結を図るよう求めたい。

  6. 高度人材の定住促進に向けた制度(日本版グリーンカード)創設の検討
    専門的・技術的分野の外国人がその能力を日本で十二分に発揮できるようにするためには、彼らが日本において自己のキャリアプランを長期的に考えることができる環境を用意する必要がある。たとえばイギリスでは、2002年1月、科学、金融等の専門技術者の受け入れを拡大する観点から、「高度技能移民プログラム」を導入している。図表6の得点計算方法に基づき75点以上ある場合、求人がなくてもまず1年間の在留が許可され、さらに最大3年の在留延長が可能となっている。また合計4年間、高度技能移民として就労した後には、定住が申請できることになっている。
    研究人材など、極めて高度な専門的・技術的分野の外国人の受け入れ、定住の促進は、世界的にみて既にひとつの大きな流れになっている。日本においてもこうした制度・システムの創設に向けて検討を行う必要がある。

図表6−イギリスの高度技能移民プログラム得点方法
学歴 博士号保持者=30点、修士号保持者=25点、学士号保持者=15点
職歴 学卒レベルの職に5年(博士号保持者は3年)以上就労=15点、
上級レベルないし専門職に2年以上=10点
過去の収入
(年収)
4万ポンド以上=25点、10万ポンド以上=35点、25万ポンド以上=50点
(EU諸国、アメリカ、日本の場合)
就労希望分野
での業績
「例外的な」業績がある場合=50点、「重要な」業績がある場合=25点
一般開業医
特別枠
国家保健サービスの一般開業医として就労を希望する
海外の医師を招致するための特別枠
出典:経済産業省『通商白書2003』(2003年7月)

5.留学生の質的向上と日本国内における就職の促進

(1) 留学生受け入れの意義と産学官の取り組み

外国人留学生の日本への受け入れは、諸外国との相互理解の促進、人的ネットワークの形成、国際社会への知的貢献、そして学術研究水準の維持・向上による国際競争力の強化などを図る上で意義は大きい。
国は、「留学生受け入れ10万人計画」(1983年)等に基づき留学生の受け入れを進めている。留学生数は、この4年の間に中国などアジアを中心に倍増しており、本計画は2003年に達成された(2003年5月現在、109,508人)。
今後は留学生受け入れの意義を踏まえて、留学生の質を向上させる必要がある。特に事実上、就労目的で来日する留学生が増え、その一部が資格外の就労をし、また犯罪に手を染めることが社会問題化している。大学は入学時の選抜厳格化(日本語能力、基礎学力、目的意識の重視)、大学院生の受け入れ拡大、入学後の学籍管理、学生サポート体制の充実などが求められる。留学生の質を向上させていくためには、何よりもまず世界レベルで競争力のある大学を数多くつくりあげることが重要であるが、これは日本人学生にとっても望まれることである。
具体的な方策として、以下のとおり提案する。

  1. 魅力的な大学教育プログラムの構築
    まず留学生に対して、人生の貴重な数年を日本で学びたいと思わせる、世界的にみても質が高く、魅力的な大学教育プログラムを開発し用意することが重要である。国際的にも卓越した教授陣を揃え、グローバルなコミュニケーション・インフラとなった英語による講義を充実させるなど、大学が国際的な汎用性という観点から、教育プログラムを見直すことが求められる。各大学が独自の取り組みを行うよう期待したい。
    加えて、それぞれの大学がどのような教育プログラムを持っているかについて、広く海外に情報発信する必要がある。そのためには在外公館が開催する日本留学説明会などを充実させるとともに、外務省、文部科学省、及び関係諸機関が連携し、ホームページ上で日本への留学情報を積極的に発信することなどが考えられる。
    日本で学び帰国した留学生は、政治、経済等さまざまな分野において日本と母国の架け橋となる貴重な人材である。帰国した留学生には、帰国後の定期的な動向調査などフォローアップを行うことも必要となろう。

  2. 留学生への生活支援の充実
    日本経団連が行った大学に対するヒアリングによれば、留学生が実際に日本で生活していく上で最も困っていることは、収入面では奨学金を受給できないこと、支出面では住宅費が高いことであった。この結果、アルバイトをしなければ、学業以前に生活していくことができない。そうした状況を踏まえ、官民あげて奨学金の充実に取り組む必要がある。(注1)
    国費留学生については、まず対象者を拡大する必要がある。また、一旦支給が決まった留学生には学業成績に関係なく支給し続ける現行の制度を改め、成績不振の場合には支給を打ち切り、注意を促してもなお改善されない場合には帰国を命じるなど、留学生のモラルが高まる仕組みに改める。一方、留学生の9割を占める私費留学生に対しては、公的な奨学金に加えて、民間の財団等による奨学金の充実が必要である。大学側には成績優秀な学生への授業料の減免など、優秀な学生が学業に専念できる環境を整えることを望みたい。
    住宅については、安くて良質な留学生宿舎を確保することが重要である。大学や公益法人が留学生宿舎を充実させることに加え、民間企業が協力して社員寮の一部を留学生宿舎として提供する方法も考えられる。
    2004年4月、日本育英会、日本国際教育協会、内外学生センターなどが統合し独立行政法人「日本学生支援機構」が設立され、日本人学生のみならず留学生に対する奨学金支給、宿舎提供等の事業を行う。本機構に対して、官民が一体となって支援することが必要である。

    (注1)
    日本で2番目に多くの留学生を受け入れている早稲田大学では (2003年現在約1,600人)、2001年に留学生の生活実態調査を行なった。その結果から浮かび上がった実態は、(1)留学生の月平均の支出額は約11万8千円、うち4割(約4万8千円)が住居費である、(2)7割の留学生は留学生寮ではなく、広さ6畳程度の民間アパートに住んでいる、(3)奨学金を受けている留学生は5割弱で、7割弱の留学生が週20時間前後、飲食店等でアルバイトをしている。これらの状況から、6割の留学生が現在の生活に経済的な不満を持っている。

  3. 日本語教育の充実、多様化
    日本に海外の優秀な若者を招くために、日本語教育の充実、多様化を図る必要がある。まずは、多様なカリキュラムの開発・提供により、日本国内外を問わず、また期間を問わず、日本語を修得できるシステムを整えるべきである。
    その際、海外における日本語教育の充実が重要な課題である。中国、韓国などアジアの国々を中心に、日本語学習へのニーズは依然として高い。国のODA資金を活用してアジアの主要都市に日本語学校を設立し、日本国内で培われたノウハウ、カリキュラムを活用した日本語教育を行うべきである。
    また今日、国内の日本語学校は、海外の若者が日本の大学を目指すゲートウエイの機能を果たしているが、そのために日本語学校の質的向上、学生サポート体制の充実を図る必要がある。最終的に、日本語学校の生徒の大半は、日本語能力試験1〜2級合格の力をつけ、日本の大学の留学生試験を受けているが、その間の生活は日本社会のルール、マナー、あるいは日本人のものの考え方などを理解するための重要な期間である。この期間を有意義に過ごすことが、大学進学後、勉学に集中できる生活習慣を身につけることにつながるものと考えられる。

(2) 日本国内における就職の促進

グローバリゼーションを背景に、日本企業においても国籍を問わず優秀な人材を確保しようという動きが出てきている。また、日本の大学におけるさまざまな研究分野において、既に重要な役割を担っている優秀な留学生の能力に注目する企業が増えている。一方、在学中の日本企業での就労経験をもとに、日本企業への就職を希望する留学生も増えている。
このような動向に対し、国は留学生の「留学」から「就労」への在留資格変更を積極的に認めることとしている。(注2)しかし、実際の在留資格変更は、図表7のとおり、申請3,600件に対して許可が3,209件となっている(2002年末現在の留学生数は110,415人)。問題は、留学生数に比べて在留資格変更数があまりにも少ないこと、申請に対する不許可率が11%にのぼることである。

(注2)
国費留学生は、留学後は本来母国に帰国し、母国の発展のために働くことを基本としているが、専門的・技術的分野の外国人受け入れの促進という方針のもと、国は日本国内での就職を認めている。

図表7−留学生等からの就職目的の申請者数等の推移
図表7−留学生等からの就職目的の申請者数等の推移
出典:法務省入国管理局

留学生の日本国内での就職は、専門的・技術的分野における外国人の活用にとって有効な方策である。本人の希望を前提としつつ、これを積極的に推進する。併せて、留学生による日本国内での起業を促進するための施策を実施していくことも必要である。
具体的な方策として、以下のとおり提案する。

  1. 在留資格制度の見直し

    1. 在留資格変更基準の緩和
      在留資格変更の不許可理由に、大学で学んだ「専攻」と就職する際の「業種」「職種」が一致しないことをあげるケースが少なくない。専攻と業種・職種が一致していないことを理由に在留資格変更が許可されず、企業への就職が内定していても結果として、就職できないという事態も生じる。このようなことが度重なると、企業は一連の手続きを煩雑に感じ、留学生の採用に躊躇することになる。昨今の企業活動においては文系理系を問わず、さまざまな専攻分野の人材を必要としており、このように専攻と業種・職種の一致を厳しく求める制度運用は是正されるべきであり、現行の在留資格変更基準の緩和が求められる。

    2. 就労、起業への橋渡しとなる在留資格の新設
      現行の入管制度では、留学生が日本での就職を希望しても、卒業時点で企業から就職内定を得ていなければ、帰国か進学かいずれかの選択を迫られる。「留学」から「就労」へ橋渡しする在留資格が存在しないことから、日本での就職機会が失われているとの指摘もある。
      日本の大学及び大学院の課程を優秀な成績で修了した留学生が、企業のインターンシップ制度のもとトレーニングを行うことを前提に1年間、在留できる在留資格を設ける。この期間は就職先を探すことに使われるが、留学生自らが起業するといった可能性を追求することにも活用できる。このような在留資格の新設は、不法就労、さらには治安悪化の一因となるとの意見もあるが、大学の正規課程を優秀な成績で修了した学生の在留を認めても、それらが助長されることはないと考える。

    3. 日本留学経験者への在留期間の優遇
      日本への留学経験者の日本での就職を促進するため、国は、就労における在留期間を他の外国人就労者より優遇することを検討する必要がある。

  2. 就職支援
    日本で就職を希望する留学生の多くは、就職活動の留意点や日本の雇用慣行などを内容とするガイダンスの開催、インターネットによる就職活動に必要な情報の提供、就職面接会の開催などを期待している。これらの活動は、大学のみならず国、経済団体、留学生の就職を支援するNPOなどが相互に連携して進める必要がある。

  3. 均等待遇の徹底
    日本企業においては、日本での就職を考える留学生にとって、昇進・昇格、さらには幹部登用の可能性を示す外国人のロール・モデルがほとんど存在しないという問題がある。留学生などを雇用しようとする企業においては、仕事自体の魅力を高めるとともに、採用や処遇において国籍を問わず均等に取り扱うという人事方針を徹底し、さらにその方針を留学生も含め外部に明確に発信することが求められる。

6.将来的に労働力の不足が予想される分野での受け入れ

(1) 透明かつ安定的な受け入れシステムの必要性

既に述べたように政府は、いわゆる高度人材については、「受け入れをより積極的に推進する」とする一方、いわゆる単純労働者の受け入れについては「国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対応することが不可欠である」との方針を打ち出している。しかし、日本の総人口が減少していくなかで、女性や高齢者の力を最大限活用するとともに、労働生産性の向上、就労環境・労働環境の改善を図ることがまずは求められるが、そうした対策を講じたとしても、たとえば福祉分野を中心としたサービス産業(注3)や農林水産業などにおいて、将来的に日本人では供給不足になる分野が出現することが予想され、また既に供給不足となっている分野も見られる。したがって日本は、これまで以上に多様な分野で外国人を受け入れることが必要になってこよう。他方、経済連携協定(EPA)の交渉においては、たとえばタイやフィリピンなどから看護や介護等の分野の人材受け入れに対する強い要望がある。そのため、日本人では供給不足となると予想される分野において、こうした国々の要望も踏まえつつ、送り出し国において必要な人材を奪うことなく、送り出し国・受け入れ国の共存共栄が実現されるよう、透明かつ安定的な受け入れのシステムを確立していく必要がある。
これら分野での受け入れは、適切な能力・技術を確保しつつ、日本国内の雇用情勢への影響に十分配慮し、質と量ともに十分にコントロールできるものである必要がある。諸外国においては、労働市場テスト、受け入れ上限制、二国間協定等を組み合わせたかたちとなっている。日本でも、(1)在留資格の見直しや労働市場テスト等を通じて、求められる職種・技能の要件や受け入れ人数、期間を明確にすること、(2)EPAを含む二国間協定の締結を通じて、公的機関等による送り出し・受け入れ体制を確立すること、など秩序あるシステムを実現すべきである。
今後供給不足が予想される分野については、まず、看護など専門的・技術的分野として在留が認められているものの、入国・就労が困難となっている分野について、制度改革や各種支援等を通じ、受け入れ促進に向けた環境整備を行うべきである。次に、介護など入国・就労が認められていないものの日本において該当する資格があるなど一定の専門性が認められる分野については、一定の条件のもと、研修や就労を認める方向で検討すべきである。
なお、現場で働く労働者については、既に日系人等が国内の製造やサービスの現場で働いていること、会員企業を対象に日本経団連が実施したアンケートでも、製造業を中心に不足すると見通されていること(図表8)から、諸外国の事例等を参考にしつつ、その受け入れのあり方を検討すべきである。

(注3)
例えば介護分野については、「人口・経済・社会保障モデルによる長期展望−人的資本に基づくアプローチ」(2003年4月 日本大学人口研究所)によると、1990年時点で44位だったわが国の家族扶養指数タイプIII(高齢者一人につき何人の成人した介護適齢期の女子がいるかを表す)は、2005年には世界最低水準の0.772、2015年には0.588まで低下する。高齢化が進展するにつれて、特に子供を介護者とする在宅ケアなどは一層困難となり、介護福祉士、ホームヘルパーなどによる介護の必要性がさらに高まるものと見込まれる。

図表8−将来(2010年頃)労働力が不足すると思われる分野
図表8−将来(2010年頃)労働力が不足すると思われる分野
※日本経団連が会員企業を対象に実施した「外国人受け入れ問題に関するアンケート調査」によれば、将来(2010年頃)の労働力不足は、総じて非製造業よりも製造業で多く見込まれており、中でも「製造部門(技能)」、「研究開発部門」、「製造部門(単純工)」、「国際業務部門」などを中心に不足すると予想されている。
出典:日本経団連「外国人受け入れ問題に関するアンケート調査」(2003年10月)

(2) 看護、介護分野での受け入れ

看護および介護の分野は、将来的に供給が不足するともいわれており、また、現在EPAの交渉が行われているタイやフィリピンなどからの送り出しのニーズも高いことから、各々の分野で以下のような施策を展開することが重要である(図表9)。

  1. 看護分野
    看護分野については、既に日本の看護師資格の取得を条件に4年以内の研修としての就労が認められている。しかしながら、受験にあたっては、日本の看護養成機関を卒業、または外国の看護師資格を有しかつ既に日本おいて在留資格を有している必要があり、受験資格を得ることは困難となっている。
    そこで、医療実務上の円滑なコミュニケーションができるレベルの日本語能力を有する海外の看護師資格者に対する国家試験の受験資格の緩和・見直しを行うとともに、4年以内の研修としての就労のみ認められるという制限を早急に撤廃すべきである。同時に上記の資格・能力取得を支援すべく、現地での日本語教育の充実や看護分野の養成所・講座の設置をODA資金等の活用により進めるとともに、現地での試験の実施等試験方法の多様化や、国内看護師等養成所の外国人受け入れ枠の緩和などを含めた国内施設での就学・研修・実習体制を整備すべきである。

  2. 介護分野
    介護については、現行の入管制度では該当する在留資格がなく、介護を目的としての入国・就労は認められていない。日本では、介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)の資格が同分野の資格として一般的である。
    そのため、介護福祉士の資格取得者や外国における隣接職種の資格者で介護実務上の円滑なコミュニケーションができるレベルの日本語能力を有する者等については、たとえば「技術」や「技能」の在留資格として就労を認める方向で検討を進めるべきである。同時に、上記の資格・能力取得を支援すべく、現地での日本語教育の充実や介護分野の講座の設置等をODA資金等の活用により進めるとともに、現地での試験の実施等試験方法の多様化や、現地での訪問介護員養成講座の受講者等に対する日本国内での補講・研修・実習を可能とするなどの体制整備を行うべきである。

図表9−看護師、介護福祉士の資格制度の概要
看護師介護福祉士
業務内容 免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者 登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があるものにつき介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者
資格の特徴業務独占資格名称独占資格
養成課程 看護師国家試験に合格
〈受験資格〉
  1. 高卒後、指定を受けた看護系大学・看護系短大(3年)又は看護師養成所(3年課程)を卒業
  2. 高卒又は実務経験3年以上の准看護師であって指定を受けた看護系短大(2年)又は看護師養成所(2年課程)を卒業
  3. 外国の看護学校を卒業し、1. の者と同等以上の知識及び技能を有することの認定(永住資格及び日本語能力も必要)
  1. 高卒後、指定養成施設(2年以上)を卒業
  2. 社会福祉系大学等卒業後、指定養成施設(1年以上)を卒業
  3. 実務経験3年又は高校で必要課程を修めかつ介護福祉士試験に合格
現行在留資格
(資格活動)
【医療】
  • 日本の養成校卒業
  • 4年以内の研修目的としての就労
なし

ホームヘルパー資格について
研修内容受験資格講習時間
1級課程 厚生労働省の定める研修基準による基幹的な研修で、2級課程で修了した基本事項についてより深い知識と技術を習得する。 2級課程修了者。2級課程修了後、原則として1年以上ホームヘルパーとして活動した人。 230時間(講義:84時間、実技講習:62時間、施設実習:84時間)
2級課程 厚生労働省の定める研修基準によるホームヘルプサービス事業に従事する人の基本的研修で、ホームヘルパーとして必要な知識と具体的技術を習得する。 なし 130時間(講義:58時間、実技講習:42時間、施設実習:30時間)
3級課程 厚生労働省の定める研修基準によるホームヘルプサービス事業の入門研修で、ホームヘルパーとして必要な知識と技術のうち基本的なものを習得するための研修。 なし 50時間(講義:25時間、実技講習:17時間、施設実習:8時間)
出典:厚生労働省資料

7.外国人研修・技能実習制度の改善

(1) 制度の概要と実績

外国人研修・技能実習制度は、開発途上国などの青壮年労働者を最長3年間(研修1年、技能実習2年)、日本国内に受け入れ、技術・技能・知識などを修得させ、帰国後、修得技能を活かし、その国の経済発展を担うことができる人材を育成することを目的とした制度である。
外国人研修生の受け入れについては、日本企業が、現地法人、合弁企業または外国の取引先企業の社員を研修生として受け入れるケース(企業単独型)に加えて、1990年より、商工会議所や事業協同組合などの団体が第一次受け入れ機関として研修生を受け入れること(団体監理型)も可能となった。さらに1993年には、研修を終了し所定の要件を充足した研修生に、雇用関係の下でより実践的な技術、技能などを修得させることを目的とした「技能実習制度」が創設され、現行制度の枠組みとなった(図表10)。

図表10−研修・技能実習制度の基本的な枠組み
1.開発途上国の人材育成協力
  • 単純労働力として受け入れるものではないこと
  • 講義主体の研修方式に加えて、OJTシステムを採用
  • 技能移転を確保するため、目標と公正な技能評価制度を設定
  • 研修生・技能実習生は、帰国後、修得技能を発揮すること
2.秩序立った受け入れ
  • より多くの国の多数の青壮年に職業能力の開発機会を提供
  • 受け入れ機関の受け入れ人数の上限を設定
  • 研修・技能実習を合わせ滞在期間は最大3年
3.研修生・技能実習生の保護
  • 受け入れ機関は、研修生に対して、安全衛生、保険、生活指導、宿舎等
    について出入国管理法令等に基づき適切に措置
  • 受け入れ機関は、技能実習生に対し、労働者としての位置付けの下に、
    賃金、労働時間、安全衛生、労災補償等について労働法令上の権利を保障
出典:JITCO資料

なお、本制度の適正かつ円滑な推進を図る中核的機関として、財団法人 国際研修協力機構(以下、JITCO)がある。JITCOは、1991年に設立された、法務・外務・厚生労働・経済産業・国土交通の五省共管による公益法人である。研修と技能実習は、前述のとおり同じ目的で実施されているが、図表11にあるように要件や内容に違いがある。

図表11−研修と技能実習の相違
研修技能実習
在留資格研修特定活動
対象職種入管法令の要件を満たす
同一作業の単純反復でない業務
技能検定等の対象となる
62職種113作業
取得技能水準の目標技能検定基礎2級技能検定3級
雇用契約の有無なし(就労は不可)あり(労働者としての扱い)
受け入れ機関の生活保障措置生活実費として
研修手当を支給
労働の対価として
賃金を支給
外国人に対する保護措置入管法令等に基づく保護労働法令等に基づく保護
社会保険・労働保険の適用民間の研修生保険の加入国の社会保険・労働保険の
強制適用
出典:JITCO資料より一部加工

JITCO運営による研修・技能実習制度の活用者は、2002年で約6万3千人(研修生約4万人、技能実習移行申請者約2万3千人)にのぼる。10年前と比較すると、研修生、技能実習生ともに約10倍の規模となっている。受け入れ形態別ではここ数年、団体による研修生の受け入れが急増している。出身国別の構成は、中国が全体の約8割を占め、インドネシア、ベトナムを加えた3カ国で全体の96.4%となっている。産業・業種別では製造業が圧倒的に多く、なかでも繊維・衣服製造関係が全体の約半数を占めている(図表12)。

図表12−技能実習生の出身国別構成と産業別受け入れ状況(2002年度)
図表10−技能実習生の出身国別構成と産業別受け入れ状況(2002年度)
出典:JITCO資料

(2) 運営上の課題と対応策

技能実習制度が創設されて10年が経過した。受け入れ人数の増加からも本制度が定着し、製造業を中心に産業界で広く活用されてきていることがわかる。しかし、受け入れ企業によっては、低賃金の単純労働者を確保するために本制度を活用しているといった面もあり、研修生・技能実習生が帰国しても、修得した技術等を活かせる職場が提供されていないケースもあるといわれている。こうした実態は、開発途上国などへの技術移転という本来の目的から乖離している。これが本制度における最大の問題である。加えて、研修手当や賃金を巡る問題、失踪問題などが発生していることも事実である。これらの問題は、研修・技能実習制度を低賃金の労働者供給ビジネスとして悪用している団体やブローカーなどが介在する場合に多く見られるが、このまま放置すれば日本の信用に係わる重大な問題となる。研修生・技能実習生の人権や労働条件の保護の観点からも、こうした問題は早急に解決されなければならない。
これら問題の解決に向けた対応としては、JITCOが関係省庁との緊密な連携のもと現場の実態を十分把握した上で、送り出し機関ならびに受け入れ機関に対する本制度の趣旨・ルールの周知徹底、適切な助言や指導、各種相談援助などの活動を強める必要がある。さらに、送り出し機関において研修生が適正に選抜される仕組みをつくること、受け入れ機関において各段階で語学・慣習などの教育を徹底すること、研修生・技能実習生のケアを充実することなどが特に重要である。
これらの具体策を考えるにあたり、岐阜県を中心とした繊維産業の事業協同団体における取り組みは参考になろう(図表13)。この受け入れ団体傘下の企業では、前述のようなトラブルはほとんど発生していない。受け入れ機関が自助努力を惜しまず、真摯に取り組むことによって、本制度を巡る様々な問題を払拭することができるという良い例である。

図表13−繊維産業の事業共同団体(受け入れ機関)の取り組み例
  • JITCO推薦の送り出し機関を活用するだけでなく、現地対応窓口(合弁会社等)を設置し、自ら研修生の選抜を行い、優秀な人材確保を図る。
  • 研修生の選抜にあたっては、実務試験や知能テストに加え、身元調査を行う。
  • 来日前に、研修手当や賃金の具体額、並びに税金・社会保険等の控除額を提示する。あわせて、失踪が重大犯罪であること、これまでにも厳しい処罰が行なわれていること等を具体的に説明する。
  • 日本語教育を徹底するため、教育・研修機関を自ら設立する。
  • 研修生・技能実習生に担当カウンセラーをつけるなど、相談・連絡先を明確化する。
  • 各企業を定期的に訪問し、研修手当や賃金の支払い状況を本人に確認する。
  • 受け入れ企業の倒産時等に、研修生・技能実習生への支払いが滞ることがないよう、保険見合いの基金の積み立てを行なう。
出典:日本経団連調査

また、本制度に係る問題として、研修生・技能実習生が低賃金の労働力として機能しているために日本人の雇用機会が奪われているのではないかとの指摘もある。しかし今日、国内では日本人に対して求人募集を行っても応募者がなく、研修生・技能実習生がいなければ事業を継続できない状況にある中小零細企業が多いという事実を見過ごすことはできない。こうした企業では、外国人である研修生・技能実習生を受け入れることで日本人の雇用機会が奪われているのではなく、彼らと共生することで事業が継続でき、その結果、日本人の雇用も守られているという面がある。
このように、本制度は功罪両面をあわせ持ち、制度自体、まだ不完全な部分がある。しかし本制度は広く定着していることから、まずは、関係者が本制度を巡る諸問題への解決に向けて真摯に取り組むことを求めたい。

(3) 制度の改善に向けた方策

こうした考え方に基づき、制度の改善に向け、以下のとおり提案する。

  1. 受け入れ機関の不正行為に対する処分内容の強化
    法務省では、1999年2月に「研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針」を公表し、そのなかで不正行為を6つの類型に分類している。それをもとに不正行為にあたると判断された場合には、3年間、研修生・技能実習生の受け入れを行うことができなくなるなどの処分を定めている。(注4)
    現在、研修・技能実習制度を巡っては、一部受け入れ機関の不正行為によって批判が高まっている。しかし本制度は、既に述べたように、地域における産業の活力維持や日本人の雇用維持にも資するという面も併せ持っており、不正行為に対しては、まず関係者への指導や不正行為の取り締りの強化を徹底すべきであろう。
    具体的には、本制度の改善を図るため、不正行為を行った受け入れ機関に対して、より厳しい処分を行うよう同指針を見直すよう提案する。具体的には、新規受け入れ停止の期間を5年間に延長するとともに、当該受け入れ機関が既に受け入れている研修・技能実習生については、JITCOの斡旋により、直ちに類似職種を取り扱う他の受け入れ機関に移すようにする。

    (注4)
    第1類型:二重契約、計画との齟齬、名義貸し(研修先・技能実習先の無断変更も含む)、虚偽文書の作成・行使、第2類型:研修生による所定時間外、休日等に活動、第3類型:研修手当ての不払い、直接支払い行為、暴行・監禁、旅券・外国人登録証明書の取り上げなど悪質な人権侵害行為、第4類型:失踪の事実を地方入国管理局に未届けの場合等(届出が行われた場合でも問題事例が外国人による刑事事件等の場合、失踪事例のうち不法在留していてそれが研修・技能実習の実施体制に起因する場合も含む)、第5類型:第二次受け入れ機関等が不法就労者を雇用するなどの外国人の就労に係る不正な行為をした場合、第6類型:改善策を講じて受け入れを再開したものの、再度同様の問題が生じた場合

  2. 研修・技能実習生の早期帰国制度の導入
    技術・技能等の修得という本制度の目的の達成を担保するものとして、不適格な研修・技能実習の実態がある場合には、期限前でも研修・技能実習を打ち切り、研修生・技能実習生を帰国させるといった制度を導入する。
    具体的には、研修・技能実習内容が計画した内容とかけ離れている場合、研修生・実習生の生活や素行に不審な点がある場合、さらには技能検定基礎1級に相当するレベルに到達することを技能実習2年目を履修する「要件」とし技能実習生が当該資格が取得できなかった場合(現在は技能実習1年目終了時に技能検定基礎1級に相当するレベルに到達することを「目標」としている)などにおいて、技能実習を続けることができないようにすることが考えられる。

  3. 再研修・再技能実習の制度化
    入管法では、研修・技能実習を終了して帰国した元研修生・技能実習生の再入国が禁止されているわけではないが、帰国後早々の再研修や、前回の研修と同種・同等レベルの再研修は認められていない。再研修・技能実習が認められるのは、帰国・復職後1年以上経過していること、再研修・技能実習の修得すべき技術・技能・知識・ノウハウ等の水準が管理監督者クラスのそれに該当するなど、研修技能実習目標・内容が前回よりレベルアップしていることなどの基本的な要件が必要とされることに加え、再研修が必要であると認めるに足りる相当の個別の具体的理由があると法務大臣が判断した場合に限られている。現実には、企業単独型の受け入れにおいて一部再研修・技能実習が認められた例があるものの、商工会議所や事業協同組合等の団体監理型の受け入れで認められたケースはほとんどない。しかし、多くの企業が元研修生・技能実習生のうち優秀な人材を再び受け入れたいと考えている。また、元研修生・技能実習生のなかにも、次は生産ラインの管理者としてのスキル、ノウハウを学びたいといった希望を持つ者も少なくない。
    そこで、まず再研修・技能実習が認められる基準を明確化し制度化すべきである。その際、これまで必要とされていた要件に加えて、技能実習2年目終了時までに技能検定3級を取得すること、日本語能力試験2級を合格すること、受け入れ企業が研修・技能実習制度を適正に運営していることなども要件とすれば、より厳格な運用が可能となる。

8.外国人の生活環境の整備

外国人に日本の社会とそれを支えるシステム・制度を理解し適応してもらうとともに、国、地方自治体が一体となって受け入れ体制を整備する必要がある。

(1) 多文化共生を促す地域の役割

在留資格を得て、日本に在留しようとする外国人はまず、地方自治体の窓口において外国人登録を行う必要がある。その際、行政が外国人に種々の説明を行うが、これを一歩進めて、日本の生活習慣や法律、日本語学習、子弟教育などのオリエンテーションの受講を任意で受けられる制度を整える必要がある。外国人が集住する都市では既に、外国人対応の職員の配置や行政パンフレットの翻訳などを行っているほか、日本語教育の機会を充実させてきている。国は、こうした地方自治体の取り組みを支援するだけではなく、地域における総合的な受け入れ体制の整備に取り組むことが求められる。
外国人の地方自治への参加も課題である。現在、国会には、永住外国人地方参政権法案が提出されているが、地方自治体が独自に、外国人の意見や要望を直接聞き行政に反映させる取り組みを進めている例も見られることは注目すべきである。なかでも川崎市の「外国人市民代表者会議」(96年12月設置)は、条例で設置が定められた唯一の例であるが、事実上の市政調査権も有し、代表者会議の提言が市政、条例制定に活かされている(外国人高齢者福祉手当の増額、公立学校への多文化教育講師の派遣など)。各地の地方自治体は、地方分権の大きな流れのなかでこうした先進事例を参考としつつ主体的に取り組み、外国人の声を地方行政に反映させていくべきである。
日々の具体的な課題としては、日本で生活する外国人の悩みを聞き適切なアドバイスを行う相談窓口の充実が不可欠である。今日、極めて多様な外国人が日本で生活しているが、地方自治体で窓口を開設しても、必要な言語の通訳を配置することができず、結果として、当該業務を外国語のできるボランティアが所属する各地の国際交流協会などに委託するケースが多い。しかし、地方自治体にも重要な役割がある。国際交流協会のみならず、弁護士会や精神医学会などの専門団体、さらにはNPO、NGOなどの団体がパートナーシップを原則に対等に連携できるネットワークづくりに取り組むとともに、市民のなかから有為な人材を発掘し、外国人に対するケアの活動に参画してもらう仕組みを構築することなどである。併せて、外国人と共生する市民の意識を醸成する観点から、学校教育などの現場において、国際化のための教育や交流プログラムを積極的に推進することも求められよう。
加えて、外国人に対する日本語教育を地域においてプログラム化する必要がある。外国人が日本語を修得することは、日本社会において自立と自己実現を図るための最初のハードルである。また、そうした外国人に日本語学習の機会を与えることは、日本人にとっても多文化共生の理念を理解する上で重要な経験となる。国と地方自治体、さらには地域の交流協会、NPO、NGO、教育機関などが連携して、日本語支援コーディネータや日本語教育の専門家などの人材育成や配置、教材・教授法の開発、各種情報を集め供給するリソースセンター、カウンセラーや通訳の配置された相談窓口の設置などに取り組むことが求められる。日本語学習のニーズは地域によって多様であると考えられることから、国の役割としては、日本語教育関連情報の収集・発信の推進へ向けて、たとえば、ITを活用した日本語学習環境の整備を図るとともに、地域が主体的に取り組む先進的なプロジェクトをモデルとして助成しつつ、その成果を全国に周知・普及させることなどが考えられよう。

(2) 居住環境の改善

日本に入国し職業を確保し、在留資格を得た後に外国人が最初に直面する問題は住居の確保である。企業による社宅の提供や、民間住宅の斡旋、保証の場合にはそれほど苦労はないが、外国人が自ら住居の確保を行おうとすると必ずといってよいほど、壁にぶつかる。
公的住宅においては、1980年と1992年に旧建設省が永住外国人・外国人登録を行っている者について日本人と同様に扱う旨の通達を都道府県に行った。その結果、90年代後半から外国人の公営住宅入居者数が増加した。しかし、民間の賃貸住宅では、依然として外国人の入居を拒否するケースが多く、外国人にとって住居確保は、苦労を要するものとなっている。また、外国人が集住する都市では、公営住宅への入居が中心となるが、なかには居住者の20〜40%を外国人が占めている団地もあり、地域のコミュニティとの間でトラブルとなっているケースも少なくない。
これら問題の解決には、地方自治体の取り組みが求められ、実際に対策が講じられているところもある。特に民間住宅における外国人に対する差別的な取り扱いをなくす観点から注目されるのは、川崎市などで行われている「外国人居住支援システム」である。民間の賃貸住宅の場合は、外国人の入居に日本人の保証人を求めるケースが多いが、保証人が見つからない場合、地方自治体が設けた「保証システム」を通じて、万が一の場合の損失補償を行うというものである。まだこのシステムの有用性が十分理解されていないため利用者が少なく、そもそもこうしたシステムを持たない地方自治体も多いなど課題はあるが、まずはこれを全国的に普及させる取り組みを行うべきである。

(3) 子弟教育の充実

日本に入国し在留資格を得て就労する外国人のなかには、子弟を連れて生活する者も少なくない。その子弟に対する教育については、インターナショナルスクールや外国人学校の場合、母国語による教育が可能であるが、無認可校か認可されていても補助金が極めて限定的にしか支給されない各種学校となっているため、授業料が相対的に高く、また数も少ないという問題がある。一方、公立学校の場合、当然のことながら日本語による授業のため、子供達に日本語修得へのプレッシャーがかかり、学力低下や不登校を招くケースもある。こうした事態を回避するため、外国人が集住する地方自治体のなかには、いわゆるプレスクールと呼ばれる教室を小学校内に設け、日本語教育や生活・習慣の指導を行うとともに、巡回型の日本語指導員やカウンセラー、通訳を配置するなどの取り組みも見られる。また保護者を対象とした学校制度に関する理解を促すための説明会・交流会などを実施している地方自治体もある。
こうした地方自治体の取り組みに伴う経費は、地方自治体が自主的に捻出せざるを得ない。特に教員や通訳、カウンセラーなどの追加的配置の経費に対する国による助成は少ないことから、外国人が集住する地方自治体、先進的な取り組みを行っている地方自治体を中心に、国による助成の拡大を図る。
そもそも日本の義務教育は外国人には適用されていない。そのため、特に日系人子弟の就学率の低さが問題となっている。不就学の状況は、中学、高校に進学するに従い高くなり、非行の温床ともなる。地方自治体や公立学校だけではなく、外国人学校、地域のNPO、NGOなどが協力して、保護者の子弟教育に関する理解を深めることが、子弟にとっても地域にとっても必要なことであろう。また日系人子弟などの非行を未然に防止する観点から、地域において彼らの居場所となる空間、時間を用意することが必要である。外国人が集住する都市を中心に、企業が保有する運動場、体育館などの施設を開放するとともに、スポーツ、文化、さらには日本語などを指導できるボランティアの派遣なども検討に値しよう。
小学生、中学生にあたる学齢の子弟の教育を外国人の保護者に義務化することについてはなお検討が必要であるが、入管法上の在留資格付与の要件として子弟の教育機関の特定を組み入れることや、在留期間更新時において子弟の就学状況を確認することなどを組み込むようにすべきである。

(4) 社会保障制度の改善、充実

日本で就労する外国人は、医療など社会保障に対し大きな不満をもっている。日本は、1982年に「難民の地位に関する国際条約」を批准し、これに伴う国内法の改正で、国民年金、児童手当、児童扶養手当を外国人にも開放した。また国民健康保険も、1986年にはすべての外国人に加入が認められている。しかし外国人に対する年金、健康保険制度は、必ずしも有効に機能していない。実際、外国人集住都市である豊田市での外国人の健康保険加入率(2000年12月末)は、「健康保険」(8.0%)、「国民健康保険」(46.9%)、「未加入」(45.1%)であり(健保、未加入は推計値)、半数弱が無保険となっている(なかには民間保険に加入している場合もある)。このように社会保障の分野では、医療保険の未加入者の増加とそれに伴う外国人市民の健康問題、医療現場における高額医療費の未払いや医療通訳の問題、国民健康保険制度運営における自治体間の格差や保険料の滞納など、きわめて多様な問題が発生している。
これは、日本の制度が長期雇用労働者を前提にしているため、定住を前提としない外国人の実情に合っておらず、さらに短期雇用を繰り返す外国人も多いため、社会保険への加入が進んでいないということが背景にある。また年金制度についていえば、保険料を6カ月以上納めた外国人が日本に住まなくなった場合、2年以内に請求すれば脱退一時金が支給されるという制度が導入されているが、図表14のとおり、保険料納付期間が36カ月以上の場合では、支給額は一定で、保険料を支払うだけ損という状況が生じている。掛け捨てに近い状態になる年金制度への加入を嫌い、これとセットになっている健康保険にも加入しないのである。
国民健康保険では、在留期間が1年以上の在留または、在留期間が1年未満であっても入国目的、生活実態からみて1年以上日本に在留すると保険者が認めた者という外国人だけの加入付帯条件がある。緊急医療については、現行の行旅病人及行旅死亡人取扱法では適用範囲が狭く、地方自治体のなかには1993年の群馬県を皮切りに、外国人の未払い医療費を一部補填しているところもある。国の制度としては、1996年度に外国人の未払い緊急医療費への補填制度がつくられたが、その指定を受けている病院(救命救急センター)は限られている。

図表14−年金脱退一時金制度の概要
保険料納付期間厚生年金(率)国民年金(額)
6〜12ヵ月0.439,900円
12〜18ヵ月0.879,800円
18〜24ヵ月1.2119,700円
24〜30ヵ月1.6159,600円
30〜36ヵ月2.0199,500円
36ヵ月以上2.4239,400円
厚生年金の受給額は平均標準報酬月額×率
国民年金は第1号被保険者の納付期間
出典:社会保険庁資料

こうした状況を踏まえ、私たちは外国人に対する社会保障制度の改善、充実の観点から、以下のとおり提案する。
まずは、社会保障協定の推進である。既に述べたように、日本の締結国は現在のところイギリス、ドイツの二カ国のみである(韓国、アメリカとは2004年2月協定署名)。さらに多くの国々との間で協定の締結を実現すべきである。
次に求められるのは、公的年金と医療保険の加入を巡る問題の解決である。現在、外国人だけに適用されている公的年金の脱退一時金制度に関しては様々な批判が聞かれることから、これを抜本的に見直すとともに、在留者の健康保険加入促進策を検討すべきである。

9.日系人の入国、就労に伴う課題の解決

日系人の入国、在留は、1990年の入管法改正に伴い急激に拡大し、現在、23万人余が日本国内で働いている。日系人は、現行の入管制度上、その身分や地位に着目した在留資格である「日本人の配偶者等」(主に二世)、「定住者」(主に三世)の資格により在留しており、一般の外国人のように企業等との雇用契約を前提としていない。一般の外国人であれば、雇用契約が成立し在留資格を得た後、離職し無職のまま在留することや、入国時に許可された資格以外の職に就くことは許されないが、日系人はその身分や地位において、厳密な意味で外国人とは扱われず、一般の外国人と比べかなり自由に入国、在留ができるため、かえって将来の生活の見通しや十分な準備が整わないまま日本に入国するケースが少なくない。その結果、入国後、厳しい生活・就労環境に置かれることも多い。
いうまでもなく日系人は、既に日本経済を支える重要な役割を果たしているが、日本経済の長期低迷によって、その生活基盤は揺らいでいる。そうした状況のなかで、安易な入国、在留は本人やその家族にとっても好ましいこととはいえない。生活基盤は、職業とそれによって得られる所得によって確かなものとなる。その前提に立てば、今後入国を希望する日系人については、企業等との雇用契約が整い、日本で安定的な所得を得られる者に対して在留資格を与えることを原則とするなど、現行の在留資格制度を見直すべきである。また、既に入国し生活をしている日系人については、日本語を学ぶ機会を可能な限り提供するとともに、社会保険への加入、子弟教育の努力などを在留資格更新時に確認する制度を設けるよう求めたい。
なお近年、永住権を取得する日系人が増加しているが、生活、就労の環境は定住者等として在留している日系人と基本的に変わりなく、特に生活支援などの行政による対応は定住者等に対するものと同じように行われる必要がある。

10.受け入れ施策と整合性のとれた不法滞在者・治安対策

(1) 不法滞在の現状

2004年1月1日現在、オーバースティなどの不法在留者数は22万人弱で、前年同時期に比べて約千人弱減少している。不法在留者は1993年5月1日現在の29万9千人弱をピークに減少を続けており、これに比べると約7万9千人減少したことになる。しかし依然として高いレベルであることには変わりない。
不法在留者の多くが不法就労の状態にあるとされている。不法に入国をして就労している者までも含めると、現在、不法滞在者数は約30万人にのぼるといわれている。外国人就労者が約80万人と推定されるなか、30万人もが不法の状態にあることは看過できない。加えて、不法在留は刑法犯罪に結びつきやすく、このことが日本の治安状況に影響を及ぼしているともされている(図表15)。

図表15−外国人犯罪の現況
  • 2003年の来日外国人犯罪検挙人員は約2万人。
    (内訳 刑法犯 8.7千人 特別法犯 11.3千人)
  • 刑法犯・特別法犯とも、ここ数年増加傾向にある。特に刑法犯の増加が目立つ。凶悪犯も増加しつつあるが、放置自転車の無断使用(占有離脱物横領)などの微罪が多く含まれているとの指摘もある。
  • 国籍別検挙人員は、中国が一番多く(45%)、韓国(9%)、フィリピン(7%)、ブラジル(6%)(2003年)と続く。
  • 特別法犯の82%、刑法犯の17%、全体の54%(2003年)は、不法滞在者が占める。
  • 犯罪の組織化(共犯事件の増加)が進んでいる。
  • 東京から全国への犯罪の拡散が進んでいる。
刑法犯:刑法に規定する犯罪(凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯など)
特別法犯:入管法、覚せい剤取締法、風営法、軽犯罪法などの違反で、刑法犯を除くすべての犯罪
出典:関係機関からのヒアリングにより日本経団連作成

(2) 具体的な施策の方向

  1. 不法滞在者対策
    法務省入国管理局は、「第2次出入国管理基本計画」(2000年3月)において、在留資格がなく日本に事実上在留している外国人は厳正に排除するという方針のもと、上陸審査の厳格化、摘発体制の強化、収容施設の拡充、内外関係機関との連携などを行ってきた。一方で、日本社会とのつながりが強く、退去強制させるのは非人道的と考えられる場合については、個別事案毎に「在留特別許可」を与えるという配慮措置をとっている。現在、在留特別許可を得る外国人は年間約7千人に上っている。また入国管理局は、罰則の強化等により不法在留の発生防止に努めつつ、他方では不法在留者が自発的に帰国することにメリットを与えることにより出頭を促す施策も講じ、両者の相乗効果により、不法在留者の減少を実現させることを目的とする入管法の改正法案を国会に上程中である。
    警察庁、法務省、厚生労働省は、「不法就労等外国人対策について」(2003年3月)において、(ア)不法就労外国人及び悪質なブローカー・雇用主に関する緊密な情報交換、(イ)事業主・団体に対する行政指導及び啓発活動の強化、(ウ)就労資格を有する外国人による資格外活動の防止対策の強化、(エ)悪質な不法滞在・不法就労事犯に対する取り締り等の強化、(オ)不法就労防止に向けた国内及び海外広報の積極的実施を打ち出し現在これに沿った対応を行っている。
    これらを踏まえ私たちは、政府の不法滞在者に対する厳正な対処を基本的に支持する。また現在検討中の入管法改正についても賛同したい。しかし、本改正については、改正による影響の大きさに照らして、国内外にその趣旨を周知すべきであると考える。特に、罰則の強化が検討されているが、どのような事例が本罰則適用の対象となるかを明確にする必要がある。
    不法在留者は、不法であるがゆえに活動が地下に潜ってしまうという性格を持つ。犯罪組織が、「不法状態をばらす」と脅し組織に引き込むケースも増えているという。不法在留者を日本社会のいわば“日陰者”として追い込まないよう、素行が良く、日本国内で生活基盤が確立している不法在留者には個別に合法的な在留を認めることが求められる。そのため、「在留特別許可」の条件緩和を行うべきであり、不法在留者の減少を実現するために、取り締りと合法化の両立ての対策が必要であると考える。
    不法就労対策は、既に述べた「外国人雇用法」(仮称)の制定に基づき外国人に対する就労管理を徹底することにより有効に機能するものと考えられる。本法は、入国管理行政と労働行政との連携強化を目指し、外国人の就労先を常に確認できるようにする仕組みである。雇用主には外国人を雇い入れる際、在留資格を確認することが義務付けられるが、不法在留者を雇い入れ、なおかつその程度が悪質である場合には、官公需の受注や入札が停止されるなどの措置も付加されるべきである。

  2. 治安対策
    不法滞在者を含む外国人の犯罪は増加傾向にある。刑法犯のなかには日本社会のルールを十分理解していない外国人が、たとえば無断で放置自転車を借用してしまうような微罪も多く含まれていると指摘されている。しかしながら、中国人就学生による福岡での残忍な殺人など象徴的な事件の発生により、国民の“体感治安”は悪化している(図表16)。

    図表16−凶悪犯検挙人数の推移
    図表16−凶悪犯検挙人数の推移
    出典:警察庁資料

    そうしたなか、政府の犯罪対策閣僚会議は、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」(2003年3月)において、今後5年以内に国民の治安に対する不安感を解消することを目標に掲げた。外国人についても、5年以内に不法滞在者を半減させることを目指し、偽装婚などの不正が発覚した外国人の国外退去処分の新設や、宿泊時に外国人登録証での身分確認を徹底させる態勢を整備することとしている。また、警察官などの大幅な増員も織り込んでいる。
    いうまでもなく、日本の治安回復は喫緊の課題である。そのためにこれらの施策は早急に実施される必要がある。
    刑法犯の多くを占める、犯罪目的で来日する外国人への対応としては、入国審査の厳密化や国内外治安関係機関間の連携強化が必要である。しかし、公権力の強化に加えていま求められているのは、外国人の受け入れ施策と整合性のとれた対策であると私たちは考える。
    犯罪は、個人の意思と犯罪に手を染めざるを得ない社会環境の双方によって起きるとされている。後者については、外国人が安心して仕事や勉学に励み、安定的な生活を送ることができるような社会環境を日本人の側で整備することにより、減少させることは十分可能である。来日する外国人の子弟をも対象とした日本語教育、就労支援、差別の防止など、多面的な外国人受け入れ施策を国と地方自治体とが一体となって展開することが何よりも求められているのである。
    昨今、日本に勉学を目的として来日した外国人が犯罪に手を染めるケースが社会問題化している。就学目的でない者が就学生、留学生を名乗り来日するケースがあることも事実である。しかし大半は、日本でまじめに勉学に励み、日本企業への就職などチャンスをつかみたいと考えている。留学生、就学生を受け入れている大学、日本語学校などでも、学生サポート体制を充実するなどしているが、その一方で、東京入国管理局では、2004年4月入学者について、日本語学校入学希望者の約55%について在留資格認定書を不交付とするなど、就学生の入国審査を厳格化している。このような行政の裁量の振れにより、まじめな就学生、留学生が排除されたり、外国人の日本への嫌悪感が増幅されることのないようにすべきである。
    国民が安心して生活するために、外国人犯罪への対応を含む治安対策は早急に実施される必要がある。しかし、日本社会において感情的に外国人を排斥するような動きが広がるようなことがあってはならない。多くの外国人は日本のなかで平穏にまじめに生活を送っている。特に日系人やアジア各国から来日した外国人は、既に日本の経済・社会にとって欠かせない存在となっている。日本人は彼らといかに共生していくか、その姿勢がいま問われているのである。何よりも重要なことは、日本あるいは日本人が外国人の人権や尊厳を損ねるような姿勢をとってはならないということである。外国人が外国人ゆえに差別されるようなことが無いよう、社会の諸制度・システムのなかで外国人を日本人と同じ条件で扱い、またケースによっては支援の手を差し伸べることが必要である。
    私たち日本人が外国人の人権や尊厳を尊重することにより、外国人犯罪が減少し、ひいては日本人も外国人も安心して生活できる多文化共生の社会が形成されることを切に希望するものである。

以上

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