[ 日本経団連 ] [ 意見書 ] [ 目次 ]

若手社員の育成に関する提言

〜企業は今こそ人材育成の原点に立ち返ろう〜

2005年5月17日
(社)日本経済団体連合会

はじめに

少子化の急速な進行など企業を取り巻く環境が大きく変化している中で、とりわけ「若年労働力の減少」という問題については、国、教育界、企業がそれぞれの立場で取り組んでいくべき重要な課題である。特に企業においては、この問題にどのように対応し競争力を維持・強化していけばよいのか。こうした問題意識のもとに検討を重ね、このたびその検討結果を「提言」としてまとめた。
若年者雇用については、外部の労働市場に滞留する若年者の問題等、検討すべき課題は数多いが、ここでは、企業内における若手社員の育成に焦点を当てた。
本提言は、第1章において、まず若年者雇用の現状と課題を整理し、企業における若手社員育成の重要性を確認している。
その上で、第2章において、入社から10年ぐらいまでの層を念頭においた若手社員の育成や採用のあり方について、企業に対して4項目の具体的な提言を行なっている。これらの提言は、企業が存続・発展していくための源泉は人であるという基本認識に基づいて、企業の経営者、人事部門、あるいは上司(管理職)が、いかなる取り組みを行なうべきかについてまとめたものである。
さらに、第3章においては、企業が若手社員の育成を行なう際に必要となる環境の整備に関して、国や教育界への要望事項を5つの視点から記載している。
本提言が、企業が将来を担う人材−若手社員を育成していくにあたっての一つの羅針盤となれば幸いである。また、国や教育界において、本提言の要望事項も踏まえた取り組みが行なわれることを期待したい。

1 若年者雇用の現状と課題

(1)若年労働力減少時代の到来

わが国において少子化が一般に認識された1990年以来、合計特殊出生率は低下の一途をたどっている。2003年の合計特殊出生率は1.29(前年は1.32)となり、過去最低の水準を更新した。わが国の総人口は来年2006年をピークに、その後は減少していく見込みとなっている。国立社会保障・人口問題研究所によれば、中位推計であっても (*1) 、2000年に1億2,693万人であったわが国の人口は、2050年には1億59万人、2100年には6,414万人となり、21世紀末には人口が半減するとされている。
このことは、企業にとっても労働力、特に若年労働力の減少という形で大きな影響をもたらす。厚生労働省の推計によれば、1990年に1,475万人(全労働力人口に占める構成割合23.1%)であった15歳から29歳の労働力人口は、2010年には1,260万人(同18.7%)、2025年には1,079万人(同17.1%)と大幅に減少する見込みである。今後、少子化対策が効を奏して、合計特殊出生率の低下に歯止めがかかったとしても、この先長期において労働力人口、特に若年者層の労働力人口の減少は避けられない。
したがって、若手社員をいかに育成し、その能力を活かしていくかが企業の存続にもかかわる重要な課題となっている。また、これからいわゆる「団塊の世代」の大量退職期に入ることを踏まえ、企業が保有する技能・技術をいかにして次代を担う若手社員に継承していくかも問われている。

*1: 2003年の合計特殊出生率は中位推計(2002年時点)の予測数値では1.32とされており、実際の数値(1.29)は既に予測数値を下回っている。こうしたことから、実際のわが国の総人口は、中位推計よりも低い数値になると思われる。

(2)昨今の雇用情勢−若年者を中心に−

長期にわたる景気の低迷、企業のリストラクチャリング等により、近年のわが国の雇用情勢は非常に厳しい状況が続いてきた。1993年度に2%台で推移していた完全失業率は、2003年度には5%台まで上昇した。その背景の一つとして、製造業を中心に生産拠点を国内から海外へシフトする動き、いわゆる「産業空洞化」があると考えられる。
しかし、このところ国内の景気が回復基調にあることを受けて、現下の雇用情勢は、厳しさが残るものの改善傾向にある。完全失業率は、2004年に入り徐々に好転し始め、2005年3月の完全失業率は4.5%となり、前年同月に比べ、0.2ポイント改善している。
また、今後の少子化の進行を見据え、新卒者に関しては、各社とも一時期と比べて採用活動を活発化している。日本経団連が2004年11月に実施した『2004年度・新卒者採用に関するアンケート調査』によれば、採用実施企業は前年度の85.9%から87.6%となり、わずかながら増えている。このうち、採用人数を「増加した」企業は51.0%であり、前年度の35.1%と比べ15.9ポイント増加している。さらに、厚生労働省および文部科学省の『平成16年度大学等卒業者就職内定状況調査』をみると、2005年2月現在、大学卒業予定者の就職内定率は82.6%で、前年同期を0.5ポイント上回っている。厚生労働省発表の『平成17年3月高校・中学新卒者の就職内定状況等(平成17年1月末現在)について』をみても、高校新卒者の就職内定率は、2005年1月末現在で81.6%、前年同期を4.9ポイント上回る。
一方で、新卒者を含む24歳以下の若年者層については、有効求人倍率は1.43倍あるにもかかわらず、完全失業率は10.3%と依然高い状況にある(2005年3月時点)。また、総務省統計局『労働力調査(詳細集計)』(2003年平均)によれば、15歳から24歳以下の完全失業者が仕事に就けない理由として最も多かったのは「希望する種類・内容の仕事がない」44.1%であり、「条件にこだわらないが仕事がない」11.8%、「自分の技術や技能が求人要件に満たない」8.8%など他の理由を大きく引き離している。以上のことから、仕事自体がないという状況ではなく、労働力需給における質・量両面でのアンバランス・ミスマッチが発生しているものと推測される。
こうした背景には、(1)労働条件が合わない、(2)産業構造の変化等に対応して有期雇用を増やし、期間の定めのない雇用を抑制している、(3)企業が即戦力を求める結果、職務経験の乏しい若年者層の就職はむずかしくなる―などということもあるのではないか。
また、本来「キャリア」には幅広い意味があるにもかかわらず、大学等で「キャリアとは資格をとること」といった誤解を招くような指導がなされるケースもみられる。この結果、学生本人も必要以上に資格取得を意識してしまい、かえって自分の可能性を狭め、それが就職活動に影響を及ぼしていることも否めない。
他方、フリーターおよび「ニート(NEET)」 (*2) と呼ばれる若年者の増加が社会問題となっている。厚生労働省によれば、フリーター (*3) は2003年平均では217万人、無業者 (*4) は2003年では52万人であった。(2005年3月に内閣府は、2002年にはニートが85万人だったとする集計を公表。同集計では、「家事手伝い」も含めている。)
若年者の価値観、職業観も影響していると考えられるものの、多くの企業がここのところ新規採用を抑制してきた結果として、学卒採用に取り込まれない層が生じてフリーターとなり、また、就業意欲を失った若年者がニートとなっているという指摘もある。

*2: NEET = Not in Employment, Education or Training の略。英国で名づけられた用語で、通学も仕事もしておらず職業訓練も受けず、労働市場に参入してこない者のこと。なお、日本においては明確な定義がなされているわけではない。

*3: 年齢15歳から34歳、卒業者であって、女性については未婚の者とし、さらに現在就業している者については勤め先における呼称が「アルバイト」または「パート」である雇用者、現在無業の者については家事も通学もしておらず「アルバイト・パート」の仕事を希望する者として定義して集計

*4: 非労働力人口のうち、特に無業者として、年齢15歳から34歳、卒業者、未婚であって、家事・通学をしていない者に限って集計

フリーターやニートの問題については、その解決に向けて、国や教育界が対応策を検討すべきである。具体的には、効果を検証することを前提にした雇用対策への予算措置や、学校教育・家庭教育における就労意識の醸成などが考えられる。
なお、企業としては、ニートについては、労働市場に参入してこないことから、協力できることには限りがあるものの、フリーターについては企業の中にうまく取り込むことができないかという観点で検討することも必要である。

(3)多様化する雇用・就労形態

グローバル化による競争激化等、経営環境の変化が著しい今日、各企業とも契約社員や労働者派遣など、多様な雇用・就労形態を組み合わせた企業経営に取り組んでいる。また、中核となる業務(コア業務)に経営資源を集中することを目的に、コア業務以外の業務をアウトソーシングする企業もある。総務省統計局『労働力調査(詳細集計)』によれば、雇用者数(役員を除く)に占める有期雇用者等の割合は、2003年で30.4%(1,504万人)となっており、10年前と比較して9.6ポイント増加している。
このように、有期雇用者等の比重が高くなることで、新たに考えなければならない問題も生じている。例えば、労働者の仕事に対する動機付けや人材育成の問題、企業固有の技能・技術の継承にかかわる問題などである。特に、人材育成については、これまで若手社員が担当していた基礎的な業務がアウトソーシングされることにより、若手社員のOJTの機会が失われていることも懸念される。

(4)若年者の意識

若年者の仕事に関する価値観、職業観について、(財)社会経済生産性本部・(財)日本経済青年協議会が共同で実施した『平成16年度新入社員「働くことの意識」調査報告書』によると、就職先の企業を選ぶ基準では、「自分の能力・個性が活かせるから」が全体の32.0%と最も多い。以下「仕事がおもしろいから」(23.2%)、「技術が覚えられるから」(10.5%)という順になっており、同調査の10年前の結果と比較すると、「自分の能力・個性が活かせるから」が6ポイント、「仕事がおもしろいから」が11ポイント上昇している。その一方で、企業に関連する項目である「一流会社だから」(2.5%)「福利厚生施設が充実しているから」(1.0%)等は非常に低い数値に留まっていることから、企業の知名度等よりも自分の能力や個性を活かせるかどうかを重視しているということがわかる。

図表1 就職先の企業を選ぶ基準

また、定年までこの会社に勤めるかどうかについては、「状況次第で変わる」が44.5%と最も多く、「定年まで働きたい」が18.2%、「とりあえずこの会社で働く」が29.0%となっている。同じく10年前の調査結果と比較すると、「定年まで働きたい」との回答が減少傾向で、「とりあえずこの会社で働く」、「状況次第で変わる」が微増傾向にある。

図表2 定年までこの会社に勤めるか

一方で、内閣府の『若年層の意識実態調査』(2003年1月)においては、「仕事が面白くなければ辞めればよい」という考え方について否定する意見が62.2%にのぼっていることから、安易な離職はすべきではないという考え方を持つ若年者も少なくないことがうかがえる。
また、「仕事より自分の生活を大事にしたい」(75.4%が肯定)、「より専門的・高度な仕事をしたい」(56.5%が肯定)など、若年者の価値観、職業観は多様化している。受け入れる企業には、こうした事実を前提とした柔軟な対応が求められる。

図表3 仕事に関する考え方について

若年者の価値観、職業観については、ある意味では社会の意識の反映と言えるのかもしれない。特に職業観については、社会に出て働く中でも築かれる。したがって、企業の雇用や育成に対する姿勢が、結果的に若年者の価値観に影響を与えている部分もあると考えられる。企業として、人材育成等にどのような姿勢を示すことができるかが実は問われている。

(5)若手社員育成の重要性

労働力人口の減少時代を迎える中で、わが国の活力を高め、企業の競争力を維持・強化していくためには、人材の質的水準をこれまで以上に向上させていくことが必要であり、将来を担っていく若手社員をいかに育成していくかということが企業の喫緊の課題となる。
戦後からこれまで、生産性・効率性・コストダウンに多くの産業界が取り組み、それに合わせた制度・システムを整え、標準化を図ってきた。しかし、現在は高機能・高付加価値を生む事業・商品・サービスが要求される時代となっている。したがって、企業は、従来の発想を転換して、こうした時代の要請に対応できる人材を育成し、一層高い付加価値を生み出していく必要がある。
以上を踏まえて企業は、若手社員が自ら育つことができ、また、その能力を十分発揮できるような環境を整えていくことが必要となる。

2 これからの若手社員の育成のあり方

本章は前章で掲げた現状と課題を踏まえ、若手社員、具体的には入社から10年ぐらいまでの層を念頭においた育成とその前段の採用について、企業が取り組んでいくべきことをまとめている。以下、「具体的提言」という形で提案したい。

具体的提言1:経営者は人材育成にもつながる企業理念を明確に打ち出す

企業トップに求められるのは、その企業の理念や目指すべき方向をわかりやすい言葉で社内外に発信することである。これにより、企業の進む方向と社員の意識のベクトルが合い、企業の発展や競争力強化の原動力となるとともに、その企業の中で求められている人材像も自ずと明確になる。また、経営者の発信した企業理念に共感して、入社を希望する若年者が増えれば、その後の人材育成も円滑に行なうことも可能となる。
企業が存続・発展していくための源泉は人であることから、経営者は、企業における人材育成の問題を自らの重要課題と位置づけ、積極的にリーダーシップを発揮すべきである。

具体的提言2:将来を担う人材を長期的視点で育成する

(1) 長期的視点の「人材育成」と「成果主義」の両立を図る

少子・高齢化、人口減少という避けて通ることのできない問題がある中で、企業を取り巻く環境の変化に柔軟に対応し、企業理念や技能・技術などを継承していくためには、自社の将来を担っていく人材を長期的な視点で育成していくことが必要である。若年者にとっても、長期的な視点で育てられていくという安心感が、本人の成長の大きな支えにもなろう。
現在、成果主義人事制度が浸透しつつある中で、ややもすると短期的な成果を求める傾向がみられる。成果主義の考え方は決して否定すべきものではないものの、若手社員は企業の将来を担う人材としての育成の対象でもあるということも忘れてはならない。経営者は「人材育成」と「成果主義」の両立を図るという方針を明確に打ち出すべきである。若手社員については、短期的な成果や業績を求めるだけではなく、長期的な視点から、本人の将来性や可能性を重視し、成長に結びつけていくことが必要である。例えば、若手社員に対しては仕事の結果よりも、結果に至るまでの本人なりの工夫や進捗度合いなど、そのプロセスを重視して評価するという考え方をとる企業もある。(事例1
企業としては、「不易流行」の考え方に基づき、雇用のあり方、諸制度のあり方、育成の仕方等について、変えるべきものは柔軟に変えていく一方で、自社の将来を担っていく人材を確保するという観点から、守るべきものはしっかり守っていく必要がある。すなわち、事業展開等を踏まえつつ、自社に必要な人材をある程度長い期間をかけて潜在能力を最大限引き出していくという、人材育成の原点に立ち返ることが重要である。
なお、人材育成に関連して、企業は、常に変化している経営環境に柔軟に対応して企業の競争力を強化するために、多様な雇用形態(長期蓄積能力活用型・高度専門能力活用型・雇用柔軟型)を最適に組み合わせる「雇用(人材)ポートフォリオ」を自社の状況に応じて構築していくと思われる。その際は、短期的なコスト面での最適化だけを追い求めることなく、人材の能力を最大限引き出すという人的資源の観点からも考えることが重要である。

【事例1 評価制度】

A社は、これまで「自由と自己責任」の原則のもとでの成果主義型の人事制度であった。しかし、早期からさまざまな選択を迫られることで若年者に大きなプレッシャーがかかっていたことから、新評価報酬制度を中心とした人事制度改革を行なった。新評価報酬制度では、個人の実績評価にあたって、目標に対する「結果評価」だけでなく、結果に至るまでのアプローチや中長期的な事業貢献につながる軌跡を残せたかを評価する「プロセス評価」、組織のなかで中長期的な成果をあげていくためにどれだけの役割を果たしたかという「チーム貢献評価」の3つの観点で個人の実績を評価するようにしている。

(2) 管理者の「人材育成責任」を明確化する

「人材育成」と「成果主義」の両立を図ることが必要であるにもかかわらず、若手社員を育てるべき管理者が自身の仕事の成果を求められるあまり、部下の人材育成が疎かになるという問題が生じている。現場の力が低下している原因の一つもそこにあるのではないか。企業はこのことを重く受け止め、人材育成は管理者の本来業務であることを徹底していく必要がある。
例えば、目標管理制度を実施している企業であれば、目標の一つとして人材育成目標を必須とすることも有効である(事例2)。あるいは、管理者が部下の人材育成に注力できるように、場合によっては管理者のプレーヤー部分の負荷を軽減するといったことも考えられよう。
また、人材育成は管理者にとって、自身のマネジメント能力の向上につながり、このことが企業に多大な貢献をもたらしているという認識も持つべきである。その上で管理者は、若手社員に対して自ら範を示すことが必要である。さらに、若手社員の一層の成長を引き出すためには、管理者が部下の行動・成果に対する評価を本人にフィードバックし、ほめるべき点はほめ、次なる行動に向けて適切なアドバイスを行なうことが重要である。あわせて、管理者は目立たぬ仕事を着実に遂行するといった地道な努力にも、言わば「光を当てる」評価を行なうことも忘れてはならない。
なお、昨今、管理者と若手社員の意思疎通自体が上手くいかず、人材育成に支障をきたすような状況もみられることから、必要に応じて、管理者に対する人材マネジメント研修を実施することも考えられる。例えば、管理者研修に、「部下に合わせてコミュニケーションスタイルを使いこなす」といったテーマを盛り込んでいる企業もある(事例3)。また、管理者が、若手社員の問題解決に向けた自律的行動を支援するために、持つべきスキルとして「コーチング・スキル」に注目し、それを習得する研修等を実施する企業も出てきている。

【事例2 目標管理】

B社では、2003年4月に実施した管理職社員(課長クラス以上)の人事・賃金制度の見直しの一環として、成果主義の一層の徹底を目指して、本社や支社など間接部門の管理職社員に目標管理シートを導入した。この目標管理シートにおいては、年度初に設定する4つの個人目標のうち、必ず1つは人材育成目標を設定することとしている。
育成の対象は直属の部下社員のほか、自らの所管する現業部門の社員等としている。また、人材育成目標の具体的な設定の仕方として、「何をどのレベルまでできるようにするか」「そのレベルに達する社員を何人育成するか」「どのような手段で育成するか」について明確にすることとしている。

【事例3 管理職に対する人材マネジメント研修】

C社では、「部下のタイプを的確に見極め、適切なコミュニケーションスタイルを使いこなすには」というテーマのカリキュラムを2004年度の管理職研修に導入した。部下の育成が上司の責任であることは、誰もが認識しているが、「具体的に上司は何をしなければいけないか」、「部下育成というミッションが遂行できているかどうかを図る尺度は何か」等について共通認識がないのが実態である。管理職の人材育成責任を改めて強調するとともに、「部下とのコミュニケーションは図っているつもりだがこれでいいのだろうか」といった管理職の不安に具体的かつ体系的な手法で応える内容とした。参加者の評判もよかったことから、今後も継続実施していく予定である。

具体的提言3:個々に合わせた成長の機会と環境を提供する

(1) チャレンジングな仕事を与え、「職場」主体で育成する

若手社員の育成については「職場」や「仕事」を主体にして考えるべきである。企業は、若手社員にチャレンジする機会を提供し、若手社員は試行錯誤を繰り返しながら経験を積み、成長していく。これこそがOJTのあるべき姿であり、育成の基本といえる。
経営者は、若手社員が日々の仕事を通じて力をつけていけるような環境づくりに向けて、若手社員がチャレンジできるような仕事をつくり出すことが必要である。また、職場の上司には、一人ひとりの能力に合わせて仕事を通した成長のチャンスを与え、きめ細かく支援することが求められる。もちろん、与えられた課題をこなせず失敗する者も出てくるだろう。しかし企業は、人材育成を長期の視点でとらえ、こうしたリスクを負う覚悟も必要となる。若手社員も、現在の本人の能力に比べ、いわゆる「ハードルの高い仕事」を任され遂行していく中で、確実に力がついていく。また、このように成長のチャンスを提供することは、若手社員の仕事に対する意欲の向上につながるものと思われる。
実際、若手社員に職場での試練(=自分を伸ばすチャンス)を多く与えて成長させるという考え方をとり入れている企業もある。

(2) 自主的・選択的キャリア形成を支援する

職場の中で仕事を通したさまざまな経験を積むことでキャリアを形成することに加え、若手社員が自主的にキャリアを考え企業がそれを支援する組織風土を育むことも重要である。若手社員に限ったことではないが、企業としては、職務・役割に応じたきめ細かな人事賃金制度を整備するとともに、社員にさまざまなキャリアプランを提示することが求められる。例えば、主体的能力開発を可能にする「選択型研修プログラム」、業務内容と本人の希望する仕事をマッチングさせるための「社内公募制度」や「自己申告による異動制度」などが挙げられる。実際に、若手社員のキャリア策定支援に力を入れる企業もあり、選択型研修プログラムや社内公募制度を設けている企業も多い(事例4事例5事例6)。
また、企業のさまざまな部署で経験を積み、将来の経営幹部候補を目指すマネジメント社員(ゼネラリスト)と、高度な専門知識を身につけたプロフェッショナル社員(スペシャリスト)など、複数のルートを明示する「複線型人事制度」を導入する企業もある。例えば、真に必要な「プロの人材」の育成に向けて、研究開発分野における高度な専門性を持った社員を「研究職」=研究開発のプロフェッショナル社員として指定する制度を導入している企業や(事例7)、社員の専門性をより一層向上させ、アウトプットを上げた社員のモチベーションを高める取り組みを行なっている企業もある(事例8)。こうした取り組みは、若年者の「専門性志向」などへ対応し、キャリア選択肢の多様化を実現するという意味でも有効である。
将来の経営を担う層に対する育成プログラムを導入している企業もある。例えば、一定の年齢層の管理職社員に対し、公募制による「経営スクール」を実施するなど、次世代リーダー育成に向けた選抜型システムを導入している企業(事例9)、次世代グループ経営者の発掘・育成を目的に、30歳前後の社員から現在の経営層まで世代別に5段階のリーダーシップ育成プログラムを実施している企業(事例10)などである。
こうした制度の実施にあたっては、選抜過程における透明性・納得性が求められる。さらに、研修等の実施とあわせて、職務経験を通じた育成も極めて重要であると言える。例えば、子会社等の経営ポストに就任させて、企業経営を経験させるといったことも有効な方法であろう。
若手社員を含めて、より一層多様な人材を活かしていくには、「ダイバーシティ」 (*5) を重視し、「違い」を大切にしたマネジメントを行なうということが重要となる。個々の価値観やライフスタイルに対応したキャリア形成を支援するという観点から、仕事と仕事以外の生活の両立(ワーク・ライフ・バランス)を支援する環境整備も欠かせない (*6) 。具体的には、働き方に柔軟性を持たせるべく、各企業の実情に応じて、例えば、フレックス勤務制度や短時間勤務制度、在宅勤務やテレワーク、また、育児休業・介護休業制度や看護休暇などの各種休業・休暇制度、さらには再雇用制度など、可能な限り多くの選択肢を用意することが必要である。

*5: 日本経団連(当時:日経連)『原点回帰−ダイバーシティ・マネジメントの方向性−』(2002年5月)では、ダイバーシティを「従来の企業内や社会におけるスタンダードにとらわれず、多様な属性(性別、年齢、国籍など)や価値・発想をとり入れることで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と個人のしあわせにつなげようとする戦略」と整理した。

*6: 日本経団連『子育て環境整備に向けて〜仕事と家庭の両立支援・保育サービスの充実』(2003年7月)は、女性が男性よりも育児を多く担っている現状等も踏まえつつ、子どもを育てながら働き続けられる環境整備のために、企業には両立支援に向けた意識改革や諸制度の整備を、国には保育サービスの充実を提言している。

以上のような自律的キャリア形成の支援や、人事制度等の選択肢多様化に向けた努力は、企業の魅力を高め、優秀な人材の確保を可能とする。また、自ら育っていく人材こそ企業の競争力を高める原動力となると考えられる。

【事例4 若手社員に対するキャリア策定支援】

D社では、社員が自らキャリアを考え、スキルアップしていくことができるよう、webベースでのキャリア支援システムを提供している。若手社員は本システムを利用して自分の目標像と現在のギャップを認識し、上司と相談しながらキャリア開発計画を策定する。社員はこの計画に沿ってカフェテリア方式でe-learningを含む選択型研修の選択や社内外の資格取得に励み、会社はその成果を踏まえ、配置・任用を行なう。
特に入社後の3年間は、育成担当者と職場上長が一体となり、基礎スキルの習得とキャリアビジョンの策定を支援する。3年目には、全員を対象とした2〜3週間の集合研修を実施し、育成担当者や若手先輩社員の指導のもと、スキル経験の振り返り、キャリア面談、幹部講話などにより、本人が自らキャリアビジョンを設定する機会を与えている。

【事例5 選択型研修プログラム】

E社の研修体系はカフェテリア方式のポイント制であり、各自の選択を基本とする。ただし、3等級(20代後半くらい)までの社員については、選択研修とは別に必須研修を取り入れ、ビジネス基本知識を習得させる。
具体的には、1〜2等級の社員(入社4年目まで)は、ビジネスフレーム<ベーシック>として、必須5科目、選択3科目を受講し、ロジカルシンキングやコミュニケーションスキルなど思考力の養成と、アカウンティングやマーケティングなどビジネスの基礎知識を習得する。2〜3等級の社員は、ビジネスフレーム<アドバンスト>として、必須5科目、選択2科目を受講し、<ベーシック>で習得した基礎知識を深めるとともに、リーダーシップやプロジェクトマネジメント、サービスマネジメントの知識を習得する。4等級以上の社員については、専門性深化のためにさまざまなプログラムを自己学習することを基本とする。

【事例6 社内公募制度・異動希望申告制度】
(日本経団連出版「社内公募・FA制度事例集」より抜粋)

F社では、意欲や能力のある人材の活用と成長機会の提供を目的に、社内公募制度・異動希望申告制度を設け、運用している。
社内公募制度(求人型)は、事業の必要に応じて速やかに社内から意欲とスキルを持つ社員を集める仕組みとしての機能を持ち、時期を定めずにフレキシブルに実施している。エントリー資格は案件ごとに設定しているが、一律の基準として社歴3年目以上の社員で、現部門1年以上勤務を応募資格とし、エントリー社員は公募申請部門の面接と書類選考を受け、合否が確定する。なお、エントリーに際しては、元部門への影響度を考慮し、上司との十分なコミュニケーションをとることを奨励しているが、基本的には個人の意思でエントリーできる。合格者に関しては、「部門の引き止めなし」をルールとして、引継ぎの事情など多少の調整を行ったうえで異動を行なう。
一方、異動希望申告制度(求職型)は社員が主体的にキャリア形成をするための機会として位置づけている。これは、社内公募制度が経営・事業サイドのニーズに応じて実施される求人型の制度であるのに対し、社員自らが新たな仕事を求めていく求職型の制度である。具体的には、年1回4月1日付けの異動検討スケジュールに沿って、全社全部門から「次年度の事業計画のサマリー」とその実行に必要な「人材要件」を社内イントラネットに掲載する。エントリー資格は特に制限はなく、社員はこれらを参考に希望部門に申告し、書類審査により選考が行なわれる。エントリーに際しては、社内公募制度と同様、基本的には個人の意思でエントリーできる。異動希望申告制度の活用状況は対象社員の1割弱であり、年度差があるが、そのうちの4〜5割が合格している。

【事例7 プロフェッショナル社員の育成】

G社では、管理職社員(課長クラス以上)の人事・賃金制度の見直しの中で、多様化する人材ニーズへの対応を目的に、「研究開発のプロフェッショナル」としての「研究職」の制度を2003年4月より導入した。
具体的には、研究開発分野における高度な専門性を持った人材を研究職として指定し、同社の「研究開発センター」を中心とした運用を行なっている。また、研究職の人事考課については、「構想力」「分析力」など、業務内容を踏まえた独自の評価項目を設定している。

【事例8 専門性の高い社員のモチベーション施策】

H社では、高い専門性を持ち大きな成果を上げた社員に対するモチベーション施策として、「MVP認定制度」を設けている。これは、高い専門性を発揮することで高い実績を出しているプロ中のプロに対して毎年行なわれており、前年度に顕在化した実績を基準として、新たな価値創造に貢献した社員100名にMVPの称号を付与するとともに、さらに専門性を高めるための報奨金を授与するものである。

【事例9 早期選抜制度】

I社では、次世代リーダー育成に向けた選抜型システムを導入している。このプログラムの目的は、(1)経営幹部の組織的・計画的な育成を図り、グループの次代(次々世代)の経営を担う人材を確保すること、(2)育成システムを通じて得た知識等を活用して能力を高め、経営経験を積む「場」を提供することである。人選は35〜45歳未満の管理職を対象に、公募により行なう。研修期間は11ヶ月で、月1回3泊4日で行なわれ、財務、経営戦略、人材マネジメントなど経営に関する知識・スキル・能力を身につけるだけでなく、自ら徹底的に考え抜き、経営を推進する力を養う。研修終了後は、グループ企業や本社の経営戦略部門へ配属され、研修で培ったリテラシー(知識や経験)を実践の場で試すことになる。

【事例10 基幹人材育成プログラム】

J社では、次世代グループ経営者の発掘・育成を目的に、基幹人材になる人をセレクトして、30歳前後の若手社員から現在の経営層まで、世代別に5段階の人材育成プログラムを実施している。このなかでは、個別育成計画にあわせて外部研修を受講するほか、トップマネジメントと現場で活躍する若手社員とのランチョンミーティングを設け、トップと現場の社員が互いの問題意識・ビジョンを共有できるようにしている。

具体的提言4:新卒者以外の若年者へも採用の門戸を広げる

未だ新卒一括採用を中心としている企業は多いものの、若年労働力の減少で優秀な人材の確保が難しくなること、あるいは採用抑制によって年齢別人員構成のアンバランスが生じている企業があることなどを考えれば、従来以上に門戸を広げ、中途採用の拡大にも前向きに取り組むべきである。特に、ホワイトカラーの中途採用については、現状では「即戦力」を重視する傾向にあるものの、これからは将来性や潜在能力(ポテンシャル)を重視し、中途採用の若年者を中期的観点から育成することも検討されるべきである。とりわけ現在は、能力が高くとも就職に失敗した結果やむなくフリーターとなっている若年者や、フリーターとして就労しながら有意義な経験を積み成長している若年者もいると考えられる。こうした若年者を採用し育成することは、企業にとっても人材戦略として有益であろう。
通年採用やトライアル雇用といった取り組みも有効な手段である。通年採用の実施により、海外大学卒業生やワーキングホリデー経験者などの多様な人材の確保が可能になる。フリーター等を有期雇用の期間従業員として採用し、そのうち能力と意欲のある人材を正社員として積極的に登用している例もある(事例11)。

【事例11 有期雇用従業員の正社員登用】

K社では、生産現場には8000人から9000人くらいの期間従業員がいるが、その大半はフリーターである。これまでの制度では最長1年契約で、特に優秀と職場が推薦した人は正社員への登用試験が受けられることになっており、その結果、2003年度までは年間百数十人が正社員に登用されていた。
2004年1月から有期労働契約の期間の上限が1年から3年に延長されたことから、2004年に期間従業員の人材育成の考え方を見直し、1年毎に評価を行ない、契約期間を延長して2年目・3年目となった従業員には、より高度な仕事に配置し、そのためのOff-JTも実施し、処遇も向上させることになった。これにより登用試験のチャンスも増えることになる。成績優秀者は、要員ニーズをふまえて積極的に正社員に登用する。2004年度の登用は590人となり、2006年度以降も年間500〜600人のペースで登用を予定している。

3 国や教育界への要望

これまで述べてきたとおり、若手社員の育成については、第一義的には企業自らが取り組むべき課題である。しかし、企業が長期ビジョンを持って若手社員の育成に取り組んでいくためには、それが可能となる環境づくりも必要である。こうした環境整備に関して、国や教育界に以下の点を要望したい。

(1)多様な人材を安定して採用、育成するための環境整備を

まず、当たり前のことではあるが、国に対しては、経済政策をきちんと行ない、経済・産業を活性化させることを求めたい。これにより企業は安定した採用や長期ビジョンに立った人材育成を行なうことができ、社員も安心してキャリア形成に取り組むことが可能となる。
また、国に対しては、多様な人材を活かすことができるような法整備を進めるとともに、その阻害となる法令等を改めることも強く求めたい。例えば、多様な働き方への対応と生産性向上の観点から、労働時間管理についてより柔軟な仕組みを可能とするために、労働関係法令等における一層の規制改革が必要である。加えて、現行の在留資格や上陸許可基準に該当しない者でも、専門的、技術的人材と評価され得る者については国籍を問わずに採用できるよう、法令の見直しを行なうべきである。

(2)各関係省庁は密接に連携し、民間活力も活かした取り組みを

現在、「若者自立・挑戦プラン」として、若年者雇用やニート対策に向けたさまざまな政策が打ち出されている。これらを着実に実施し、最大限の効果を発揮するためには、各関係省庁が連携して取り組みを行なうことが不可欠である。
「日本型デュアルシステム」を例にあげると、厚生労働省と文部科学省がそれぞれ政策として打ち出している。厚生労働省はフリーターやニートを主たる対象とし、職業訓練校における訓練と企業実習を組み合わせ、若年者雇用の促進を図ることを目指している一方で、文部科学省は職業系高校の生徒を対象に、授業と企業実習を組み合わせて、技能後継者の育成を意図しており、両者の方向に相違が見受けられる。
このような状況では、実習の受け手となる企業に過大な負担をもたらし、政策の効果も低下しかねないことから、関係省庁間での整合を図り、効率よく政策を実施することを求めたい。
また、こうした政策については、各関係省庁が自ら責任を持って継続して実施すべきことは言うまでもないが、あわせて、民間活力も積極的に活用し、実効性をより高める取り組みを求めたい。さらには、実施した政策に対する効果についても検証するべきである。

(3)わが国の技能・技術を継承できる人材育成の仕組みづくりを

わが国産業の将来を担う人材の養成に向けて、例えば、中学・高校卒業時点から特定分野での専門家を目指すキャリア選択が可能となるような仕組みづくりを国に求めたい。また、このような仕組みを広く受け入れられるよう、社会全体での価値観の変革も必要であろう。
工業高校や理工系大学等における教育体制の充実も重要と考える。「ものづくり」の技能は、実作業の中で培われるものであることから、作業実習等のカリキュラムを充実させるとともに、「ものづくり」の実務経験者が、これまで以上に教育現場で活躍できるような仕組みづくりを進めていくべきである。また、現場に即した職業訓練を充実することも重要である。加えて、若年者が「ものづくり」の技能の向上に誇りを持って取り組めるよう、技能五輪大会等、若年者が目指すべき目標となるイベントなどの拡充を求めたい。
さらに、技術が日々進歩している現代においては、新しい技術をビジネスに結びつけていくセンスが求められる。そうした人材を育成するMOT(技術経営)教育は、企業にとっても重要性を増しており、わが国の国際競争力を向上させる観点からも、さらなる充実を要望したい。

(4)社会人としての素養・基礎能力・職業観を培う教育の強化を

社会人としての素養や意欲に欠ける若年者が増えているということは、企業としては如何ともしがたい問題である。この点については、まず「社会に出て働くことは大切」という意識を持たせるような教育を、家庭・学校に求めたい (*7)
また、あいさつや時間を守るといった、社会人として最低限のマナー・常識を身につけさせるような取り組みを行なうべきである。
昨今、わが国の若年者の学力低下が明らかになっており、企業にとっても競争力の観点から深刻な問題である。教育界に対しては、社会人として必要最低限の基礎学力を、初等・中等教育を通じてしっかりと習得させることに、より比重を置くことを望みたい。
高等教育においては、自ら考える力や交渉する力、チームワーク等を身に付けさせるよう、フィールドワークやケーススタディ、グループ討議といった機会を多く設けるべきである。
あわせて、若年者の職業観を醸成するために、目の前の就職活動への個別具体的な指導に留まることなく、長期にわたる職業生活を前にして「働くことの意義」や「仕事に対する取り組み姿勢」を考えさせるようなプログラムを実施することを求めたい。例えば、学校教育の中で企業人講師を招いて事例研究を行なう機会を設けたりすることが考えられる。

*7: 日本経団連『若年者の職業観・就労意識の形成・向上のために―企業ができる具体的施策の提言―』<PDF>(2003年10月)では、若年者の職業観・就労意識を高めるには、家庭、地域社会、学校、行政、産業界のそれぞれが責任と役割を果たし、社会全体で取り組むことが大切であると提言。中でも社会の一員としての心構えを教える第一義の責任が家庭にあることを指摘している。

(5)社会経験を持つ教師の採用・養成を

多くの学生等が将来、社会に出て企業に就職することを考えると、教師が現在のビジネスや社会の情勢を的確にとらえ、仕事をする上で必要な能力・素養を学生等に伝えていくことが重要である。
しかし、多くの教師は学校卒業後、企業に勤めることなくそのまま教師となることから、企業に関する知識に乏しいのが現状である。こうしたことへの対策として、例えば、教師に、企業で一定期間の就業経験を課すことも有効であろう。また、現在、教員免許を持たない企業人の教育現場での活躍の場は「非常勤講師」などに限定されているが、今後は、企業での就労経験など多様な社会経験を持った人材を、教員免許がなくとも各学校の裁量で正式な教師として採用することができるような仕組みが求められる。

おわりに

本提言の内容については、目新しいものはないと受けとめられるかもしれない。なぜならば、企業の将来を担う人材―若手社員を、長期的な視点に立って、仕事や職場を通じてじっくり育てていくという、これまでわが国で行なってきた人材育成のあり方そのものだからである。しかしながら、成果主義人事制度が浸透しつつある中で、こうしたことがむしろ新鮮に聞こえる状況になっているのではないか。このような現状について経営トップ層等に対し警鐘を鳴らすことが、この提言の大きな狙いである。
企業の経営者、人事部門、あるいは上司(管理職)は、人材育成において大きな責任を担っていることを再認識し、それぞれの立場で必要な行動を起こすことが求められている。今こそ「人材育成の原点に立ち返るべき」ということを強く主張したい。

以上

日本語のトップページへ