経済危機からの脱却に向けた緊急提言
〜平成21年度補正予算の早期実行を求める〜
2009年3月9日
(社)日本経済団体連合会
わが国経済は、これまで経験したことのない危機的な状況に直面している。国際金融危機の影響が実体経済に波及し、世界経済は同時不況に突入した。輸出主導の成長を続けてきた日本経済は、ひときわ甚大な打撃を被っている。2008年第4四半期の経済成長率は、米国がマイナス6.2%(前期比年率)、ユーロ圏がマイナス5.7%であるのに対し、日本はマイナス12.7%と、主要3極のなかで最も厳しい状況に陥っている。さらに2009年第1四半期も連続で二桁のマイナス成長となる見込みである。
足もとの需要の急速な落ち込みにより、各業界では急激な減産が続き、雇用も大幅に悪化している。いまや国民の間には、先行きが全く見通せない不安感が広がりつつある。目下最大の課題は、実体経済の悪化と金融面の信用収縮による負のスパイラルの発生・拡大を何としても回避することである。
こうした状況下において、国民の不安心理を断ち切り、景気の底割れを防ぐためには、政府が前面に出て抜本的な対策を発動するほかない。景気刺激策の実行は、世界同時不況を打開するための国際的な政策協調の一環でもある。
経団連は先般、雇用の安定・創出と成長力強化に資する国家的プロジェクトを「日本版ニューディール」として推進するよう求めた。ここで提案した政策のうち、即効性のある需要創出策と雇用のセーフティネットの拡充は前倒しして実施すべきである。また、企業の資金調達・資金繰りの円滑化も急務である。
このため、平成21年度予算ならびに関連法案、税制改正法案を年度末までに確実に成立させるとともに、直ちに平成21年度補正予算(税制改正を含む)を編成し、以下を柱とする大規模な経済対策をスピード感をもって実行すべきである。足もとでは、対GDP比5%(25兆円程度)を超える需給ギャップが生じている。このような状況を踏まえ、雇用の安定・創出と成長力強化に確実につながる財政支出を行うべきである。
1.即効性のある需要創出策
(1) 低炭素・循環型社会の実現
- 環境対応自動車(電気自動車、ハイブリッド車等)の購入、買換え促進のための支援措置(例:車齢13年超の車の買換え)
- 省エネ型家電製品、高効率給湯機器、家庭用燃料電池、太陽光パネル等の開発、普及促進のための支援措置
- 省エネなど良質な住宅の建設・建替え促進のための支援措置
(2) 重要インフラの整備推進・前倒し
- 大都市圏環状道路の前倒し完成ならびに地方の産業活性化、観光に資する道路整備・美しい景観づくり(無電柱化等)
- 羽田空港のさらなる国際化、首都圏空港のさらなる容量拡大、成田空港など拠点空港と都市部とのアクセス改善
- 京浜港、伊勢湾、阪神港等における広域連携強化と外貿コンテナの整備
- 地域活性化に資する整備新幹線の建設前倒し
- 公立小中学校をはじめとする公共施設の耐震化・グリーン化
- 老朽化した道路・橋梁の修繕・整備
- 地上波デジタル対応機器の普及促進のための支援措置
- ICTを利活用した地域活性化のためのブロードバンド基盤の整備促進
- 再開発・改築等による住宅の耐震化・不燃化の促進
- 保育施設、高齢者向けの多様な居宅・介護施設の整備
(3) 個人金融資産の活用促進のための税制措置
贈与税の基礎控除額(現行110万円)の時限的大幅拡充
2.雇用のセーフティネットの拡充と労働移動の円滑化
(1) 官民一体となってのセーフティネットの拡充
- 雇用調整助成金制度の一層の拡充
- 「ふるさと雇用再生特別交付金」により創設される地域の雇用創出に向けた基金の積極的活用と企業等の協力
- 雇用保険等の給付を受給できない者が職業訓練を受講する際の生活安定を確保するための「就労支援給付制度(仮称)」の創設(一般会計により拠出)
(2) 労働移動の円滑化(定住外国人を含む)
- 幅広い業種の求人・求職に対応可能なワンストップの総合就業支援拠点の整備
- 公的職業訓練プログラムの拡充
- ジョブカード制度の活用促進・ICカード化
(3) 雇用の創出・拡大が期待できる分野の振興
- 介護・保育分野等における人材の大幅増員・待遇改善
- 耕作放棄地の再生、新規就農の促進、農商工連携の推進
- 行政文書のデジタル化推進、高度ICT人材の育成
3.企業の資金調達・資金繰りの円滑化
- 政府系金融機関(日本政策投資銀行等を含む)による緊急投融資・信用保証の拡大
- 日本銀行・政府系金融機関によるCP・社債・株式・資産担保証券の買取拡大
- 銀行等保有株式取得機構等による資産の買取拡大
- 株式市場低迷への対応策(TOPIX転換政府保証債の発行など)
- 為替相場の安定・適正化に向けた対応
- 大企業の欠損金の繰戻しによる法人税還付制度の復活
なお、世界経済の回復・成長に向けて、自由貿易体制の堅持が死活的に重要である。保護主義につながる措置を断固排除するとともに、WTOドーハラウンドの妥結、東アジアを中心とする経済連携ネットワークの構築、インフラ整備への支援を急ぐべきである。
以上
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