経団連環境自主行動計画の発表にあたって

(社)経済団体連合会
会長 豊田 章一郎


地球サミット以降、地球環境問題への取り組みは具体的な成果を多数生んできたにも関わらず、事態はますます深刻化している。温暖化問題など近年の地球環境問題の特徴は、経済活動や国民生活に伴って不可避的に生じるということである。環境基本法にある通り、「持続可能な発展」の実現に向けて、企業・消費者・市民など各主体がこの問題の重要性を認識し、公平な役割分担の下に、自主的にかつ積極的に対策を講じていかなくてはならない。

経団連は、1991年に経団連地球環境憲章を発表し、「環境問題への取り組みが企業の存在と活動に必須の要件である」ことを明確にし、環境保全にむけて自主的かつ積極的な取り組みを進めていくことを宣言した。また、昨年7月には経団連環境アピールをとりまとめ、地球温暖化対策や循環型経済社会の構築などに向けて、より具体的な取り組みを宣言した。

さらに今般、わが国経済界として積極的な取り組みを行うため、環境アピールにそって経団連環境自主行動計画を取りまとめた。経団連の呼びかけに応えて製造業・エネルギー産業だけでなく、流通・運輸・金融・建設・貿易など幅広い36業種が行動計画を策定した(産業団体ベースで137団体をカバー)。

わが国の産業は、地球温暖化対策としての省エネルギーや循環型社会につながるリサイクル・廃棄物排出抑制の分野でも、これまで懸命の努力を重ねてきた。例えば、世界のGDP当たりの二酸化炭素排出量を見ると、1994年度(炭素換算t/百万ドル)において、カナダの321、アメリカの306、イギリスの221、ドイツの179に対して、日本は123と、121のフランスに並んで極めて低い水準となっている。日本における二酸化炭素排出量を見ても、この20年間で、家庭、運輸からの排出が倍増した一方、産業部門は経済規模の拡大にもかかわらずほぼ横ばいで推移している。また、循環型経済社会の一つの指標となるリサイクル率も、限られたデータからではあるが、わが国は最高水準にあるといえよう。多くの業界にとってこれ以上の取り組みは極めて難しい状況にあるが、それにもかかわらず一層の自主的取り組みを取りまとめた各産業の努力に感謝したい。

なお、われわれは今回の計画策定をもって終わりとするものではない。今後は定期的にレビューを行い、計画の達成に全力を傾ける所存である。

皆が手をたずさえて真摯に取り組まなければ、地球環境問題という人類の歴史にとってきわめて重要かつ緊急な課題に対処することはできない。消費者、市民、自治体等でも、自主的対策をとることを期待したい。さらには、こうした産業による自主的取り組みを世界の産業界に広げていきたい。


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