経団連提言
『多様なライフスタイルを可能にする住宅政策を求める』

III.多様なニーズに応じた税制の構築


政府は、98年度税制改正において、地価税の凍結、法人の土地譲渡益重課の撤廃・緩和、特定の事業用資産の買換特例の要件改善など土地税制の抜本改革を断行した。土地税制の改革とともに、以下のように住宅税制を改革することが、現下のデフレ的な状況を解消することにつながり、日本経済を安定成長に導いていく。住宅税制の改革の断行は、魅力ある居住空間づくりに向けた5つの課題を克服する上で最も重要な政策である。

  1. 住宅取得に係るローン減税の充実
  2. 長期にわたるローン負担に対する不安感を緩和するためには、ローンの全返済期間にわたる居住用財産(住宅・敷地)に関するローン利子の所得控除制度(対象:所得税、住民税)を導入することが効果的であり、所得税の制度改革の中で実現されるべきである。住宅ローン利子を課税所得から控除することは、家計の先行きに関する人々の不安感を緩和し、長期的・計画的な住宅の取得、住み替えを促すとともに、住宅投資へのインセンティブを高めることにもなる。耐久性の高い良質な住宅の供給の促進にもつながる。

    なお、借家の家賃に関する所得控除の仕組みについても、借家の家賃の家計における位置付けを踏まえつつ、検討することが求められる。

    また、ローン残高に応じて税額控除を行なう現行の住宅取得促進税制は、持家取得者の大宗を占める中堅所得者層の根強い住宅需要を支える政策税制として、大きな効果をあげている。当面の重要課題である内需振興の観点からは、まずは、潜在需要の大きい中堅所得者層に対して効果的な現行住宅取得促進制度を、期間を限定した上で、思い切って拡充すべきである。具体的には、減税対象期間を現行の「取得時から6年間」から例えば「10年間」に拡大し、住民税にも適用、対象を敷地部分に広げること、さらに所得制限を撤廃し、2軒目の取得にも適用することにより、「もうワン・ランク上」の質の高い住宅の取得を誘導するとともに、住宅の建設需要を高めるべきである。

    さらに、住宅取得資金に係る贈与税の特例措置についても見直し、非課税限度額、特例計算限度額の引き上げや建て替え、住み替えなどへの適用などを認めるべきである。

  3. 流通・保有に係る租税コストの大幅軽減
  4. 消費税に加え不動産取得税、登録免許税、印紙税がかかる不動産流通における「四重課税」は、国民の住宅取得の負担感を大きなものとしている。不動産取得税の撤廃、不動産取得に係る登録免許税の手数料化を行なうとともに、印紙税の低額一本化等の抜本的な見直しを図るべきである。

    新築住宅取得に係わる登録免許税および不動産取得税(現行)
    (単位:万円)
    一般的なマンション
    (販売価格4132万円)
    高級マンション
    (販売価格9882万円)
    本則課税額特例適用税額本則課税額特例適用税額
    登録免許税(土地・移転登記)23236262
    登録免許税(建物・保存登記)72164
    不動産取得税(土地)2306247
    不動産取得税(建物)50110982
    印紙税2288
    合 計10528258203
    出典:三井不動産資料

    またバブル期前に比しても負担が過重となっている固定資産税、都市計画税については評価・税率を抜本的に見直すことにより、負担を軽減すべきである。

  5. 住み替えの促進に資する税制の確立
  6. 個人のライフステージに応じた住み替えを促進するためには、居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度について、住民税への適用、住宅取得促進税制との併用を認めるなどの制度の拡充を行なうべきである。また居住用財産の譲渡所得の特別控除、軽減税率または買換特例の適用を受けた住み替え者についても、住宅取得促進税制の併用(現在は選択適用)を認めるべきである。

    さらに高齢者の住宅の譲渡における特例(高齢者の譲渡所得を一回に限り非課税とする制度)の創設により、高齢者が子育て世代へ広い住宅を譲り渡しやすくするなどの工夫が必要である。

  7. 都市機能更新に資する税制の拡充
  8. 民間主導の再開発である「第一種市街地再開発事業」において、都市計画決定後に、参加組合員・業務代行予定者等一定の者に対して譲渡する場合、ならびに自己都合で地区外に転出する者に対しても、特例(5,000万円特別控除等)を認めることや、中心市街地の活性化などを目的として、虫食い土地の解消などに資する土地交換等を容易にする税制上の特例の創設などを行なうことが必要である。


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