経団連提言
『多様なライフスタイルを可能にする住宅政策を求める』

IV.新たなライフスタイルに対応した建築・都市関連規制の緩和・合理化


  1. 都市機能の更新に資する規制の緩和・合理化
  2. 職住近接の都市づくり、都心居住を実現するためには、容積率規制等を抜本的に見直す必要があるが、まずは、地方自治体が「高層住居誘導地区」を積極的に指定するなど、国が土地政策の目標を「地価抑制から土地の有効利用促進へ」と転換した趣旨を速やかに反映し、都市の再生を進める制度を実際に活かしていくことが急務である。また都市部に大学や新産業・新事業の展開を制限している工業(場)等制限法を抜本的に見直し、バランスのとれた都市計画の立案を可能にすべきである。

    さらに、昨年創設された「機能更新型高度利用地区」制度の活用、『金融再生トータルプラン』の実行による都市再開発の推進、タウンマネージャーの育成など中心市街地活性化法の活用等により、低未利用地を都市として本来あるべき土地利用に転換させていくことは、地域住民の居住環境の改善や将来世代に災害に強い都市を残すことにつながるばかりか、目下の緊急課題である金融機関等の不良債権問題の解決にも役立つ。これらの施策を最大限に活用するために、借地借家法の正当事由の見直しなど、都市再開発を妨げる規制の早急な合理化も望まれる。

    また、地方自治体が、開発指導要綱に基づき民間事業者に対し過大な開発負担を求めるケースが多数みられるが、それが結果的に住宅の供給を妨げるばかりか、事業コストを高め、住宅分譲価格の上昇を招いている。

    土地に係る行政の権限は、そもそも地方自治体に委ねられている分野が多いが、地方分権の進展に伴い、地方の行政責任もますます重いものになっている。魅力ある都市のビジョンを描き、国民のニーズに応えつつ、国の方針に機敏に対応できるかどうかが、都市間競争において地域が「選ばれる」条件である。一部の地方自治体では指導内容の見直しを進めているが、依然として指導要綱を改善する余地は大きい。各自治体は、国が土地政策の目標を土地の有効利用に据えた趣旨を踏まえ、行き過ぎた開発指導要綱(負担金の拠出、公園・教育機関用地の提供、住宅付置義務、人口規制等)の是正を徹底すべきである。

  3. 借家供給等の促進─定期借家権の創設
  4. 東京都区部における借家率は51.8%にも達する。労働力の流動化に伴い、借家に対する期待はますます高まっている。しかしながら東京圏1都3県の借家の1戸当たりの延べ床面積は40m2台と、極めて低い居住水準にある。定期借家権制度の導入は、ファミリー向け借家の供給など、質の高い、多様なライフスタイルに対応する借家の供給促進をもたらす。定期借家権制度を導入すべく、現在、借地借家法改正案が国会へ上程されているが、一刻も早い成立、施行が望まれる。

    また、定期借地権については既に活用が進みつつあるが、本制度の一層の活用を促す方策を講じることにより、比較的低価格で、職住近接の住宅が取得できるようにすべきである。

    さらに、いわゆるセカンドハウスの供給促進などにより、個人の生活の内容に応じて、都市と郊外との居住を使い分ける新しい生活スタイルに対応することが必要である。

  5. 住宅の質の向上に資する性能規定化の早期実施
  6. 良質なストックの形成を促進する上で、建築基準法の性能規定化は大きな効果を持つ。性能規定の具体的な内容を早期に決定し、住宅建設における新技術の導入を容易にすべきである。さらには住宅性能に対する適正な評価、情報開示の進展は、建設業の許可区分の見直しによる建築工程の改善などとあわせ、住宅市場における性能・機能面での競争を促し、住宅の質を向上させる。官民の協力により住宅性能評価制度を早期に確立し、高い性能を持つ住宅を取得することに対するインセンティブを持たせることが必要である。

    また、昨年、規制緩和によりマンションの共用廊下や階段が容積率算定面積から除外され、ゆとりある住まいづくりに大きな効果をあげているが、さらにマンション等における機械室等の容積率算定面積からの除外など、規制の一層の緩和・合理化を行なうことも重要である。


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