提言「PFIの推進に向けて」
−市場原理を活用した社会資本整備と構造改革の実現−

1.基本的な考え方


  1. PFIを推進することの意義
    1. 社会資本の効率的な整備と公的サービスの向上
    2. 「民間ビジネスが成り立ち得る社会資本整備事業(維持管理・運営・企画等を含む)は極力、民間事業者の経営に委ねていく」という見地から、PFIを推進することは、社会資本の整備に係るコストを低減させ、効率的かつ着実な社会資本整備の推進に大いに資するものである。同時に、PFIは民間事業者の創意工夫を期待できることから、国民はより良質の公的サービスを受けることができる。さらには、新しい事業化手法や技術の考案・普及につながる可能性がある。 イギリスをはじめ財政再建に取り組む先進国のみならず、社会資本整備のための資金が不足している東南アジア等の発展途上国においても、BOT方式[民間事業者が公的部門の許可の下で主体的に施設を建設(Build)し、一定期間運営(Operate)した後、公的部門に施設を譲渡(Transfer)する方式]などが積極的に行われてきており、社会資本整備の一部を民間に委ねていくことは、いまや世界的な潮流となっている。

      加えて、PFIの導入は、既存の公共事業の効率化など公共事業の改革にも繋がることが期待できる。

    3. 民間の事業領域の拡大と経済活性化
    4. これまで官が実施してきた社会資本整備の分野を民間に開放することは、民間の事業領域を拡大し新規産業を創出するとともに、深刻な景気低迷のなか、民間事業者のビジネスマインドの高揚を促し、わが国経済の活性化につながる。

    5. 小さな政府の実現
    6. 現下の経済状況では、景気対策を最優先課題として進めていくべきものの、このままでは少子・高齢化による国民負担率の増大が確実に予想される。このような状況において、長期的には、財政構造改革、ひいては「小さな政府」の実現に向けた取り組みが必要不可欠である。行政改革委員会の提言「行政関与の在り方に関する基準」(1996年12月)は、「民間でできるものは民間に委ねる」という基本原則を示しており、この基本原則を公共事業分野においても遵守すべきである。

      今般、経団連の国土・住宅政策委員会では委員企業を対象に「PFIに関するアンケート調査」(1998年7月実施)を行った。その結果、回答企業の95%が「今後、わが国も、PFI事業の導入を進めていくべき」と回答しており、民間企業のPFIに対する期待の高さが裏付けられた。推進すべき理由としては、「財政支出の削減が可能になり、小さな政府の実現に繋がる」「ビジネス領域の拡張により経済の活性化に繋がる」といった回答が多く寄せられている。また、回答企業の20%の企業がPFI事業として、「現在検討中のプロジェクトがある」と回答しているほか、「将来的には自社で手がける可能性のある事業分野がある」と回答した企業は70%にのぼっている(アンケート調査結果の概要については別紙参照)。

  2. PFI事業を行うにあたっての大前提
  3. わが国では、これまで、純粋な公共投資方式(国・地方自治体による直轄方式)、公社・公団方式、第三セクター方式によって社会資本整備事業が行われてきたが、PFIは、新たな社会資本整備の手法であり、必要な社会資本整備を行う際に、有用な選択肢の一つとして積極的に検討されるべき手法である。もちろん、PFIは社会資本整備の万能薬でも、打ち出の小槌でもない。わが国で行われてきた従来型の民活事業の多くが見直しを余儀なくされている折、PFI推進のためには、新しい社会資本整備の手法であるPFIと従来型の民活事業(第三セクター方式)との違いを明確にすることが不可欠であろう。

    イギリスで導入されたPFIを定義すれば、「必要とされる社会資本整備事業のうち、官民の適切なリスク分担とVFM(※)に反しない範囲内の支援措置ならびに市場原理の下で、民間ビジネスが成り立ち得る社会資本整備事業については、これを民間事業者に対して積極的に門戸を開放していくこと」だと言える。わが国においても、上記のようなイギリス型のPFIの導入・推進に向けて、以下の3点を厳守しつつ、わが国にふさわしい環境整備・制度づくりを行っていくことが必要である。

    VFM(Value for Money)とは、「国民の税金を国民のために最大限有効に活用する」という考え方で、社会資本整備事業に係る手法の効率性を判断する指標。当該社会資本整備事業の全事業期間(建設から運営まで含む)に係るライフサイクル・コストを計算することで測定する。

    1. PFI事業への民間事業者の参入は、市場原理に基づいた民間事業者自らの投資判断によること
    2. 参加要請による民間資金の調達方法、いわゆる奉加帳方式によって民間資金を活用した社会資本整備は、PFI事業として行うべきではない。

    3. PFI事業の運営は、民間主導とすること
    4. 官が自前で公共サービスを提供するという考え方から、官が民間から「公共サービスを購入する」といった考え方に、発想を転換することが必要である。また、PFI事業には、民間事業者の資金と経営ノウハウ、技術力等がセットで活用されることが重要である。民間の創意工夫・効率化努力による効果をより多く引き出すためには、公共施設の建設のみならず、その後の運営等も合わせて民間事業者がPFI事業として行うことが必要と考えられるからである。

    5. 必要な社会資本整備をPFIで行うか否かは、官がVFMにより判断すること
    6. 社会資本整備のプロジェクトがVFMの基準に合致しない場合、これをPFI事業として実施すべきではない。VFMに反しない範囲内で支援措置を加味しても、民間側の採算性が見込まれない社会資本整備事業は、そもそもPFIに馴染まない事業と言えよう。他方、必要とされる社会資本整備のうち、VFMが見込まれる事業については、積極的にPFIで実施していくべきである。


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