提言「APEC活動に対する期待と提言」の中にでてくる用語説明

1998年10月20日
経団連国際本部

早期自主的分野別自由化(EVSL:Early Voluntary Sectoral Liberalization)

「早期の自主的自由化がそれぞれのAPECメンバー内及びこの地域の貿易、投資及び経済成長に建設的な影響をもたらすであろう分野を特定し、これがいかに達成され得るかについて提言を提出する。」とのスービックにおけるAPEC経済首脳宣言に提示された課題に応えて、昨年のAPECバンクーバー会議において以下の15分野を早期に自由化を進める分野として特定した。

優先9分野
環境、エネルギー、玩具、宝石、化学、医療機器、水産物、林産物、テレコミ相互認証
残り6分野
油糧種子、食品、自動車(関税対象外)、ゴム、肥料、民間航空機

当初は、優先9分野を今年6月の貿易大臣会合までに、残りの6分野を今年11月の首脳・閣僚会議までに検討することになっていた。しかし、現在まで優先9分野についてAPECメンバー政府の間で意見の一致がみられないため、11月の首脳・閣僚会議では9分野についてのみとりまとめ、残り6分野については来年以降に検討することとなった。

日本は、APECの自主性の原則のもと、どの分野に参加するかについては自由であるべきであり、林産物、水産物については、関税措置がとれず、円滑化措置、経済技術協力措置で対応すると主張している。それに対して、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、9分野すべてへの参加ならびに3つの措置(自由化、円滑化、経済技術協力)を取るというパッケージ論を主張し、ASEAN諸国や中国、韓国、台湾もそれを支持している。その結果、日本は孤立した状態にある。

マニラ行動計画(MAPA:Manila Action Plan for APEC)

1996年のAPECフィリピン会議で採択された文書であり、「個別行動計画(IAP:Individual Action Plan)」、「共同行動計画(CAP:Collective Action Plan)」、「経済・技術協力分野の活動の成果」からなる。シアトルの「ビジョン(アジア太平洋地域社会の描写)」、ボゴールの「目標(2010/2020年までの自由で開かれた貿易と投資の実現)」、大阪の「行動指針(ボゴールの目標に至る道筋を提示)」に従い、行動を提示したものがMAPAである。IAPは、個々のメンバーの自由化・円滑化の現状及び今後の短中長期計画を記したもの、CAPはメンバーが共同して取組むべき行動計画を記したものである。これら行動計画は、1997年1月1日以降実施に移されており、毎年見直される。

村山基金

1995年に大阪で行われたAPEC非公式首脳会議において村山首相(当時)が、APECの貿易・投資の自由化、円滑化に関する協力事業を拡大する目的で、APECに対し、数年間にわたり100億円を上限として拠出すると表明した。APECに係る予算は毎年約10億円程度であるが、その内の半分にあたる5億円を毎年日本がこの村山基金から拠出している。また、残りの5億円については、APECの各メンバーがそれぞれの経済力に応じて分担している(APEC方式)。日本の負担率は18%であり、村山基金とは別にその分を拠出している。その結果、日本はAPEC活動費用全体の約60%を負担していることになる。

セーフガード

特定産品の輸入急増によって、それと競合する国内生産者に重大な損害が生じている場合、またはその恐れがある場合、緊急措置として、その産品の関税を引き上げたり、輸入数量制限などの措置を講ずることがある。この措置を一般に〈セーフガード〉とよんでいる。〈緊急輸入制限条項〉と訳すこともある。セーフガード発動の具体的措置としては、関税引上げ、関税割当制度(一定の割り当てられた数量以上の輸入に高関税を課す制度)の導入、課徴金の賦課、輸入ライセンス発給停止などがある。GATTでは19条においてセーフガードが規定されている。しかしながら、発動条件が厳しいため発動しにくく、現実には輸出自主規制等のいわゆる「灰色措置」や発展途上国に認められた例外措置の濫用という問題があったため、WTO発足後、新たにセーフガードに関する協定(「セーフガード協定」)が制定された。この下では、明確に「灰色措置」が禁止されるとともに、セーフガードの発動条件が明確化されている。この協定は、無差別適用(対象産品の輸出国すべてに適用)を原則としている。

WTO協定発効後のセーフガード措置については、下図にあるとおり調査が開始されたものが10件、セーフガード措置の発動に至ったものは4件となっている。

WTO協定規律下におけるセーフガード措置
調査開始日調査国対象品目経過
1995. 3.29米 国生鮮冬トマト申出取り下げ
1995. 8.30韓 国大豆油原料となる大豆の譲許税率内での関税の引き下げ
1996. 3. 4米 国箒もろこし製箒正式発動(96.11.28〜)
1996. 5.28韓 国乳製品正式発動(97.3.7〜)
1996. 6.18ブラジル玩具・ビデオゲーム等暫定SG、正式発動(97.1.1〜)
1996. 8.27韓 国自転車及びその部品損害認定、発動せず
1997. 2.21アルゼンチン履き物暫定SG、正式発動(97.9.13〜)
1997. 8.17米 国小麦グルテン調査開始
1997.11.27インドアセチレンブラック調査開始
1998. 2. 9インドカーボンブラック調査開始
(出典:1998年版不公正貿易報告書)
以 上

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