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日本経団連総会における奥田会長挨拶

−日本経済団体連合会第3回定時総会−

2004年5月27日(木)午後2時〜4時
於 経団連会館 14階 経団連ホール

会員の皆様には、大変ご多忙のなか、日本経済団体連合会第3回定時総会にご出席いただき、誠にありがとうございます。
また平素より、当会の活動に対し、ひとかたならぬご支援、ご協力を賜り、改めて厚く御礼申し上げます。

旧経団連と旧日経連が統合し日本経団連が誕生して、2年が経過いたしました。統合の目的は、両団体がこれまでに築いてきたネットワークや様々な経験を効果的に結びつけることで、経済、産業、社会労働分野など企業活動に係わるあらゆる問題を、迅速、かつ着実に解決することであります。
私は会長就任以来、日本経団連が政策提言能力と実行力を兼ね備えた、行動する経済団体として活発に活動するよう努めてまいりました。
特に昨年1月には、『活力と魅力溢れる日本をめざして』と題する新ビジョンをとりまとめ公表いたしました。
新ビジョンは、「多様な価値観が生むダイナミズムと創造」、並びにそれを支える「共感と信頼」を基本理念に、経済社会の抜本改革の必要性を訴え、幅広い賛同を頂きましたことは、皆様のご記憶にも残っておられるものと存じます。
こうしたなか、会員の皆様方のご協力により、様々な活動を展開し、一定の成果をあげることができたものと存じます。
具体的には、企業の活力を高めるための研究開発・IT投資減税や住宅関連税制の拡充などの税制改正、社会的な規制を含む規制改革や構造改革特区制度の推進、労働関係法制の改革、さらには科学技術創造立国に向けた産学官連携の推進や知的財産政策の強化を図ることができました。
また、経営労働政策委員会の活動を通じ、これまでの賃上げを中心としていた春季労使交渉を、人事処遇制度をはじめとする経営諸課題について、広範な議論を行う場とするなど、そのあり方を見直すことができたものと存じます。

この1年を振り返ってみますと、昨年の後半あたりから日本経済の先行きに明るさが見え始め、安定成長への軌道に戻りつつあるものと思われます。
今回の景気回復は、金融の不良債権処理など、小泉構造改革が成果を上げ始めたことに加え、高成長を続ける中国など海外の需要拡大が続いていることが大きな要因となっているものと存じます。
しかし私は、企業が“守りのリストラ”を終えて、それぞれ“攻めの経営再構築”に全力を傾けたことが、もう一方の要因になっているのではないかと考えております。
明るさが増しつつあるとはいえ、地域、あるいは企業の規模によって回復に格差が見られるうえに、為替や金利、原油価格、さらにはイラク問題のリスクなど、依然として不透明な要素があり、日本経済の基盤は磐石とは言えない状況にございます。
今後、自律的な景気回復をより確実なものとするため、さらなる企業の努力が求められると存じます。

一方、政府には、スピード感のある政策展開が求められます。
わが国経済が、10年以上の長きにわたり低迷いたしましたのは、国際的な制度間競争、すなわち経済社会の発展に向けた法律・制度づくりの面での競争に、わが国が遅れをとってしまったからにほかなりません。
したがいまして、まずは商法などの企業法制の見直しや法人実効税率の引下げ、規制改革の徹底、科学技術投資の重点化、環境立国戦略の推進などを積極的かつ戦略的に推し進めていくことが必要であると存じます。
また、企業のグローバルな事業環境を整備する観点から、通商体制の強化も急がれます。WTOによる多角的な自由貿易体制の強化に加え、東アジア諸国との間で、自由貿易協定や経済連携協定の締結を急ぎ、ヒト、モノ、サービス、カネ、情報といった生産要素の移動を円滑にすることが重要であります。
外国人の受け入れ問題につきましては、多様性の持つダイナミズムを活かす観点から、秩序ある受け入れのための制度の整備を急ぐ必要があります。とりわけ、フィリピンやタイから要請を受けている、看護、介護などの人材受け入れにつきましては、アジアとの共生を進めるうえでも必要になるものと考えられます。

さらに、急速に進む少子化・高齢化が、国民の将来不安を増幅させている現状を踏まえ、年金、医療、介護などの社会保障制度を財政、税制と一体として抜本的に改革し、将来の世代に“新たな安心”を約束することが不可欠であります。
国民の将来不安が払拭されれば、国民一人ひとりに“新たな活力”が生まれ、日本経済再生に向けた、大きな原動力になるものと考えられます。

加えて地域も、国民や企業の意欲、活力を引き出す観点から、“新たな豊かさ”を具体的に提示していくことが求められます。観光の振興や次世代の人材育成、競争力のある農業の再構築、福祉サービスの多様化、インフラの整備、住環境の整備などの面で、地域がそれぞれの特色を強く打ち出し、その魅力を高めていくことが重要であります
とりわけ観光の振興は、今後の地域再生を担うばかりか、日本経済全体の活性化や雇用の拡大にも資するものとして期待されております。
東京、大阪などの大都市からリゾート地、さらには農村、漁村、山村まで、それぞれが持つ資源に一層磨きをかけ、それを有効に活用するとともに、各地が広域的に連携し、内外の観光客を誘致することが重要であります。
日本経団連といたしましても、そのための戦略を検討し、具体的に提案してまいりたいと存じます。

日本経団連では、昨年度、10項目にわたる経済界としての「優先政策事項」を決定し、それに基づいて自民党と民主党の政策評価をとりまとめ公表いたしました。
今後も、政治に対しまして、政策本位の政党政治の実現を働きかけるとともに、政策評価に基づいた政治寄付を促進することで、政治とより透明で緊張感のある関係が築かれるよう努めてまいりたいと存じます。
会員の皆様におかれましては、こうした私どもの活動をご理解いただき、ともに行動していただきますよう、心よりお願い申し上げます。

併せて、会員の皆様には、企業倫理の確立に取り組んでいただくことを改めてお願いしたいと存じます。
日本経団連では、この2年間で2度にわたり、「企業行動憲章」を改定するとともに、毎年10月を「企業倫理月間」としてトップセミナーを開催するなど、活動の強化を図ってまいりました。
しかし誠に残念なことに、この1年を振り返りましても、決して少なくない数の企業不祥事が発生し、社会の企業に対する不信が強まる事態を招いております。企業不祥事は、一企業の問題にとどまらず、経済界全体に対する信頼を損ねかねない問題でもあります。
まずは、ここにおられる経営者の皆様方が強いリーダーシップを発揮され、社内の行動を改めて総点検するとともに、風通しのよい組織づくりを進め、企業倫理の確立に努めていただくようお願い致したく存じます。

いずれにいたしましても、世界はますます大きく、かつスピードを速めて変化しております。そうしたなかで日本経団連が、21世紀の経済社会の新たな発展に向けた基礎固めに努め、会員の皆様の期待にお応えできるよう、日々、気持ちを新たにして積極的に活動を展開してまいることをお約束し、私からのご挨拶とさせていただきます。
ご清聴、ありがとうございました。

以上

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